過労死ラインとは?基準や罰則を解説|過労による疾患を防止するために企業にできること

日付2022.03.30
更新日:2022.03.30
過労死ラインとは?基準や罰則を解説|過労による疾患を防止するために企業にできること

働き過ぎによる過労死が社会問題となっています。過労死は死亡した本人や近しい人に加え、企業にも大きな損害を与えます。人材の損失や企業イメージの低下を避けるべく、対策を講じましょう。

本記事では、過労死や過労死ライン、過労死を防ぐための法律や罰則を解説します。過労死を防ぐために企業ができる取り組みも紹介するので、健全な職場環境の構築にお役立てください。

そもそも過労死とは?

過労死から従業員を救うために、まずは過労死の定義を確認しましょう。過労死に関する法律や、過労死ラインの基準、基準が定められた具体的な根拠などを解説します。

過労死等の定義

過労死等防止対策推進法第2条に記載された過労死等の定義は、以下のとおりです。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

十分な休息を取れないまま仕事を続けると、心身の疲労に伴い免疫機能が低下します。免疫機能が低下すると、脳血管疾患や心臓疾患など重い病気を引き起こしかねません。また、精神障害を原因とする自殺も過労死とみなされます。

過労死等には、重い疾患が含まれます。脳血管疾患・心臓疾患、精神障害などを患った状態では、働けなくなったり、日常生活が難しくなったりすることも考えられます。

このような過労死等の状態を避けるために、従業員の働き方を見直しましょう。

出典:過労死等防止対策|厚生労働省(参照:2022-02-21)

過労死ラインの基準

過労死ラインとは、病気や死亡、自殺に至るリスクが長時間労働に起因するものだと認定する基準です。過労死ラインの目的は、従業員を過労死等の状態から守ることです。

以下の場合には、過労死ラインを超えます。

・過労死等の状態となる1カ月前の時間外労働が、100時間を上回る
・過労死等の状態となる2~6カ月分の平均時間外労働が、80時間を上回る

過労死ラインは医学的観点から定められました。労働時間が増えるほど、健康へのリスクは上昇します。特に、睡眠時間が著しく減ると、精神疾患のリスクが高まります。

過労死は、企業にとって大きな痛手となります。企業は過労死ラインを意識して、従業員に適切な労働時間を守らせなければなりません。

出典:STOP!過労死|厚生労働省(参照:2022-02-21)

過労死ラインを守らないと過労死につながる理由

過労死ラインを守らないと過労死につながる理由

過労死ラインを守り、従業員を過労死から守りましょう。本章では、過労死ラインを超えると過労死等を引き起こす理由や、たとえ死亡を免れたとしても起こり得る疾患について解説します。

長時間労働は脳や心臓・精神疾患につながる

長時間労働は、病気や過労死につながります。睡眠時間が極端に削られると、思考力が低下し、日常的な判断さえも困難に感じることもあるでしょう。

プライベートの時間が減ると仕事のストレスを解消できず、肉体的・精神的な負担が溜まりがちです。疲労困憊しているにも関わらず、職場で通常どおりの働きを求められると、さらに心身が疲弊します。

さらに、精神的負担により、うつ病を発症する人も少なくありません。うつ状態が進行すると、発作的に自殺する恐れもあるため大変危険です。

長時間労働で起こり得る病気

長時間労働が原因で起こり得る病気には、脳血管疾患・心疾患・うつ病・過労自殺・睡眠不足による事故などが挙げられます。

脳血管疾患とは、脳梗塞やくも膜下出血、脳卒中などです。心疾患は心臓の筋肉や血管の衰えが原因で発症する疾患で、心筋梗塞や、虚血性心疾患が挙げられます。

精神的負担が蓄積するとうつ病を発症し、希死念慮に悩まされ、自殺をする恐れがあります。また、睡眠不足による事故にも注意しましょう。通勤途中に居眠り運転で事故を起こしたり、判断力が低下し職場で事故を引き起こしたりする事例もあります。

【2021年9月改正】労災認定の基準

2021年9月に、労災認定の基準が改正されました。脳・心臓疾患の労災認定基準については、実に20年ぶりの改正です。改正の要点は以下のとおりです。

・長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
・長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し
・短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
・対象疾病に「重篤な心不全」を追加

改正後の労災認定では、労働時間に加え、負荷要因が重視されています。短期間であっても、十分な休息時間が確保されなかった、休日を与えなかったとなれば、労災認定される可能性があるため注意しましょう。

また、重篤な心不全には、日常生活に問題がないレベルから、深刻なレベルまで、幅広い状態が該当します。

※出典:脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました|厚生労働省(参照:2022-02-21)

過労死ラインを守らなかったら企業に罰則も

過労死ラインを守らない企業は罰則を受ける可能性があります。過労死ラインを守るために理解しておきたい36協定や、割増賃金について解説します。

残業させる場合には36協定が必要

法定労働時間を超えて残業をさせる場合は、経営者と従業員との間で36協定を結ぶ必要があります。

36協定とは、従業員に時間外労働をさせるときに提出する協定届です。36協定を結ぶと、法定労働時間に加え、月45時間・年360時間の時間外労働が可能になります。

また、特別な理由があれば、一時的に36協定の上限を超えて残業をさせることは可能です。ただし、過労死を引き起こすリスクがあると理解しておきましょう。

36協定を結ばずに残業をさせたり、36協定で決められた以上の残業を強いたりした場合は、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金を課されるため注意しましょう。

36協定について、詳しくは『36協定の届け出は必要?特別条項や新様式の変更点についてもわかりやすく解説』を参考にしてください。

出典:時間外労働の上限規制わかりやすい解説│厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 (参照:2022-02-21)

正規の残業代を支払う必要がある

前述したように、正規の残業代を支払わずに従業員に残業させる行為は違法です。

2010年の法改正により、60時間までの時間外労働は25%、60時間を超えた時間外労働に対しては50%の割増賃金が認められました。

例えば、1カ月の時間外労働が65時間だった場合、1時間あたりの賃金が1,500円だったとすると、60時間分は25%アップの1,875円、残りの5時間の時間外労働分は50%アップの2,250円となります。

出典:労働基準法の一部改正法が成立|厚生労働省(参照:2022-02-21)

出典:昭和二十二年法律第四十九号労働基準法│法令検索(参照2022-02-21)

過労死や過労による疾患を防止するには

過労死や過労による疾患を防止するには

過労死ラインや36協定の内容、残業代の支払いなどを理解したら、過労死等を防ぐ環境の整備やルール作りを始めましょう。従業員に適切な休息時間を確保してもらうためには、勤務間インターバル制度の導入がおすすめです。

睡眠時間の確保など健康に関する啓発活動も実施しましょう。また、企業の規模に応じて産業医を選任することも大切です。

勤務間インターバル制度の導入

勤務間インターバル制度とは、勤務が終了してから、ふたたび働き始めるまでの休息期間を決める取り組みです。勤務間インターバル制度は努力義務に過ぎません。しかし、従業員に適切な休息を取ってもらうためには制度の導入が推奨されます。

例えば、勤務間インターバルを10時間に設定した企業で、従業員が午前1時に仕事を終えたとしましょう。次の出社時刻は、終業から10時間経過した午前11時となります。

なお、厚生労働省は勤務間インターバル制度を導入する企業に対し、助成金の支給を決定しました。助成金を申請するために、事業主は、休息時間数が9時間以上11時間未満、または11時間以上となるように、勤務インターバルを設定する必要があります。

出典:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省

従業員に睡眠時間の確保を呼びかける

過労死ラインを超えて残業すると、十分な睡眠時間の確保が困難になります。1カ月間の時間外労働が100時間を上回る場合、1日約5時間の残業が発生する計算です。夕方6時が就業時間の場合、残業が終わる時間は夜の11時です。そのため、十分な睡眠が確保できなくなってしまいます。

睡眠不足は万病の元といっても過言ではありません。睡眠時間が不足すると、疲労が回復しにくくなる、自律神経が乱れる、免疫機能が低下するなどして体調に異常が発生します。

従業員に睡眠不足の確保を呼びかけると同時に、睡眠不足の危険性や、睡眠不足のサインも伝えましょう。

ストレスチェックを実施する

ストレスチェックとは、数々の質問に回答することにより、従業員自身がストレスの蓄積度をチェックする方法です。ストレスチェックを実施すると、従業員と企業の双方が結果を把握できます。

重いストレスを抱える従業員がいれば、仕事の負担を見直し、異動など職場環境の変更を検討しましょう。また、ストレスチェックの結果によっては、医師の面接が必要になる場合があります。

なお、50人以上の従業員を抱える事業場は、毎年ストレスチェックを行う義務があります。

産業医を設置する

産業医とは、従業員の健康管理を目的として企業に専任される医師です。産業医は、労働安全衛生法にしたがって、面談・ストレスチェック・健康診断・職場巡視・休職や復職の判断などに取り組みます。

産業医を選任すると、従業員の心身の健康を保てるため働き手を失わずに済みます。また、離職者が出れば、企業は人材を補充する必要があります。一人ひとりの従業員に長く働いてもらえれば、育成コストや採用コストが無駄になりません。

生き生きと働く従業員が増えると企業の生産性が向上し、イメージアップも見込めます。働き過ぎによる過労死や疾患への対策として、速やかに産業医を迎えましょう。

産業医導入のメリットについて、詳しくは『産業医とは?医療機関で働く医師との違いや企業にもたらす導入メリットを解説』を参考にしてください。

まとめ

過労死や疾患を防止するために、企業は過労死ラインを守ることが大切です。勤務間インターバルなどで従業員の休息時間を確保しましょう。また、従業員の健康管理に向けて産業医の選任にも取り組んでください。

株式会社Dr.健康経営の「産業医コンシェルジュ」は、さまざまな経験やスキルを持つ産業医が多数登録しています。メンタルヘルスや長時間労働の状況チェック、ストレスチェックなどに幅広く対応し、従業員の健康を守ります。産業医をお探しの際は、ぜひご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。