健康経営度調査とは?令和3年からの変更点や申請手順・活用方法などを分かりやすく解説

日付2022.03.30
更新日:2022.03.30
健康経営度調査とは?令和3年からの変更点や申請手順・活用方法などを分かりやすく解説

健康経営度調査は、自社の健康経営の取り組みを振り返る上で有効です。自社で健康経営度調査の実施を検討しているものの、用語の意味や申請方法などが分からない人もいるのではないでしょうか。

本記事では健康経営度調査とは何を意味するのか、申請手順や活用方法などを解説します。また令和3年から適用される変更点なども合わせて解説しているため、健康経営度調査の最新情報まで把握できます。ぜひ参考にしてください。

健康経営度調査とは

健康経営度調査とは

健康経営度調査は、経済産業省が企業の健康経営の取り組み状況を把握し、経年変化を分析する目的で毎年実施している調査です。調査結果を基に健康経営に取り組んでいる企業に各種認定を行っています。本章では、健康経営度調査の概要や、どのような目的で実施される調査なのか、各種認定の特徴などを解説します。

健康経営調査の概要・目的

健康経営度調査は、法人が健康経営に関する取り組みをどのように実施しているのか、経年での変化はあったのかなどを分析するために実施されている調査です。調査結果は健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を行う際に活用されています。

健康経営度調査を実施する目的は、企業が健康経営を行うために必要な取り組みは何か、要件を満たしている点や不足している点は何かを客観的に判断することです。

健康経営度調査は調査票に回答すると、専門家で構成されている委員会がフィードバックシートを作成して企業に送付してくれます。企業はフィードバックシートの評価やアドバイスを基に、自社の取り組みに活かせます。

健康経営優良法人とは?

健康経営優良法人とは経済産業省の健康長寿社会の実現に関する推進事業の一つで、健康経営に取り組む企業の中で社会的な評価に値する環境の整備を行った企業に与えられる認定制度のことです。認定制度を運営する組織は日本健康会議で、経済団体や医療団体、自治体などで構成されています。

健康経営優良法人は大きく分けて大規模法人部門と中小規模法人部門の2つがあり、法人の規模ごとに部門が設けられています。大規模法人部門の認定を受けるためには、健康経営度調査への回答が必須です。一方で中小規模法人部門では健康経営度調査の回答は不要ですが、任意で受けられます。

健康経営銘柄とは?

健康経営銘柄は東京証券取引所の上場企業を対象に、健康経営で優れた実績や取り組みを行っている企業の銘柄を認定する制度です。健康経営銘柄の認定は経済産業省と東京証券取引所が共同で行っており、上場企業の33業種ごとに1社ずつ選ばれます。

健康経営銘柄の選定を行う目的は、上場企業の健康経営に関する取り組みを促進するためです。健康経営銘柄に認定されれば、投資家に投資先として魅力的な企業として紹介してもらえるメリットがあります。健康経営銘柄の認定を受けるためには、健康経営度調査に回答しなければなりません。

健康経営度調査の申請手順

健康経営度調査票の入手から提出するまでの手順を解説します。申請手順は東京証券取引所の上場企業と、その他の企業・法人で異なるため注意が必要です。

上場企業の申請手順は、東京証券取引所の案内に従って調査票を入手します。過去に一度も回答したことがない場合は郵送される案内の指示に従いましょう。調査票のExcelファイルは、自ら調査票ダウンロードサイトでダウンロードしなければなりません。回答後は、専用のサイトに回答済みのExcelファイルをアップロードすれば提出できます。

その他の企業・法人の場合は新規申請用ID発行サイトで発行登録を行い、調査票ダウンロードサイトや発行ID、パスワードが記載されたメールを受け取ります。調査票の入手と回答後の提出の手順は、上場企業の手順と同様です。

健康経営度調査5つの設計・評価モデル

健康経営度調査5つの設計・評価モデル

画像出典:経済産業省「令和3年度 健康経営度調査今年度の概要と主な変更点」

健康経営度調査の調査設計や評価モデルには5つの項目があります。5つの項目とは、経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントです。本章ではそれぞれの項目を詳しく解説します。5つの項目は健康経営への理解を深める上で重要なポイントになるため、しっかりと確認しておきましょう。

1.経営理念・方針

上記の画像から分かるとおり、ピラミッド型の最上部に位置付けられているのが経営理念・方針です。5つの項目の重要度は振り分けられているウエイトの割合から判断できます。経営理念・方針は3が割り当てられており、健康経営度調査の中でも重要な項目であることが分かります。

経営理念・方針では、従業員への浸透だけでなく対内的・対外的な発信を行っているかが重要なポイントです。例えば健康経営に取り組む方針を社内に周知させているか、社内だけでなく社外にも積極的に発信しているかなどが挙げられます。

2.組織体制

組織体制は、ピラミッド型の上から2番目に位置付けられている項目です。上述の経営理念・方針と組織体制は、経営基盤のハード面を評価する際に重視されているフレームワークです。組織体制のウエイトは2が割り当てられており、経営理念・方針よりも重要度は低く設定されています。

組織体制の項目では健康増進の実施・運用を行う体制や施策の立案、企画のレベル、人員体制などが評価されます。設問の一例は、経営者が健康経営を推進する最高責任者になっているか、施策を実施・運用する組織に産業医などの専門家を含むメンバーが含まれているかなどです。

3.制度・施策

ピラミッド型の中央に位置付けられているのが制度・施策の項目です。制度・施策は後述する評価・改善と同様に施策運用のソフト面の評価に用いられるフレームワークです。制度・施策に割り当てられているウエイトは2ですが、5つの項目の中で設問数が多く設定されています。

制度・施策では、実施施策の質と量のバランスが評価されます。設問内容の一例は以下の通りです。
・従業員の健康診断結果を踏まえて健康経営の計画を立案しているか
・従業員に対して健康保持・増進のためにどのような教育を実施しているのか
・食生活の改善や運動習慣を定着させるためにどのような支援を行っているのか

4.評価・改善

評価・改善は上述した制度・施策と並列して位置付けられている項目です。評価・改善のウエイトは3が割り当てられており、健康経営の取り組みでPDCAサイクルを回していく重要性を示していることが分かります。評価・改善は、健康経営に関する施策や取り組みを含めた全体の評価と改善が求められるフレームワークです。

設問の一例として、前年度の健康経営の施策実施をどのように効果検証を行い、今年度の方針に活かすことができているかなどが挙げられます。健康経営度調査は毎年実施されていることから、企業は調査への回答だけでなく、どのように評価・改善を行っているのかを意識した取り組みを実践していくことが求められています。

5.法令遵守・リスクマネジメント

法令遵守・リスクマネジメントはピラミッド型の土台部分に位置付けられている項目で、法令基盤のハード面を評価する際の重要な要素です。上述した4つの項目には3もしくは2のウエイトが割り当てられていましたが、法令遵守・リスクマネジメントは定量化が可能な数値ではなく適否判定されるため、ウエイトの割り当てはありません。

法令遵守・リスクマネジメントで重視されるポイントは、定期健康診断を実施しているか、50人以上の従業員が働く事業場の場合はストレスチェックを行っているか、労働基準法などに違反していないかなどが挙げられます。

【令和3年度~】健康経営度調査の変更点

【令和3年度~】健康経営度調査の変更点

健康経営度調査は、令和3年度から新たに内容が変更されました。本章では、どのような点が変更されているのか詳しく解説します。健康経営度調査の申請を行う前に変更点の概要を確認しておきましょう。

回答必須になった設問

令和3年度の健康経営度調査の変更点は、4つの項目への回答が必須になったことです。回答が必須になった4つの項目は以下のとおりです。

・1.経営理念・方針(Q18、Q19、Q23、Q24)
・2.組織体制(Q31)
・3.制度・施策(Q36、Q42、Q60、Q62)
・4.評価・改善(Q47、Q53、Q64、Q65、Q69)

回答が必須になった4つの項目の設問をクリアするためには緻密な戦略マップを作成して実行し、PDCAサイクルを回していくことが求められます。ただし健康経営度調査で回答しなければならない設問数は増えましたが、調査票全体の設問数は198問から176問に減少しており、より内容が絞り込まれていることが分かります。

申請に必要なフローの効率化

健康経営度調査の申請フローは簡略化され、スムーズに申請できるようになりました。従来は調査票と認定制度の申請に必要な誓約書は別々に提出する必要がありましたが、令和3年度からは調査票と申請書が統合されるため誓約書の内容は調査票に盛り込まれています。調査票にある設問に回答するだけで、優良法人の申請を完了できます。

誓約書への押印は廃止されたため、押印なしで申請できるようになりました。申請フローが効率化されたことで、法人と保険者の間で必要な書類のやり取りが不要になり両者の業務負担を減らせます。さらに申請が電子化されたことで、紙の関連書類の保管管理などの手間も省けます。

フィードバックシートの公開承諾がホワイト500認定の必須条件に

経済産業省のホームページに、フィードバックシートと調査票で回答した内容の一部が公開されることになりました。調査票には公開承諾の可否を問う設問があり、開示可もしくはホワイト500・優良法人に認定された場合のみ開示可や開示不可などの選択肢から回答を選べます。

同時に公開承諾がホワイト500の認定要件に指定されています。ホワイト500の認定条件を満たすためには、フィードバックシートと調査票の回答の一部を公開承諾しなければなりません。ただし優良法人の認定を受ける場合は開示不可を回答しても、認定要件を満たせば認定を受けられます。

ホワイト500について詳しくは『ホワイト500とは?認定を受けるメリットや必要な認定・申請方法を解説』も参考にしてください。

40歳以上の健康診断データの取り扱い

令和3年度の健康経営度調査では、健康組合などの保険者との連携を問う項目が追加されました。具体的には、40歳以上の従業員の健康診断結果を健康保険組合へ提供することが必須項目に加えられています。

回答する際はデータ提供済み、データは未提供だが保険者に同意している、保険者に意思表示していないなどから選ぶ必要があります。ただし保険者へ健康診断結果のデータを提供する意思を持っていても、保険者に提供する旨の意思表示をしていなければ不適合になるため注意が必要です。

喫煙対策

従来はホワイト500の認定要件に喫煙率の低下に関する項目はありませんでしたが、令和3年度から喫煙率を減らすための取り組みに関する設問が健康経営度調査に加えられました。

例えば喫煙率を下げるために保健指導を継続的に実施しているか、禁煙外来の治療費を補助しているか、非喫煙者や禁煙達成者へのインセンティブを付与しているかなどの選択肢が設けられています。

喫煙率の低下を目的にした取り組みを一切実施していない場合は不適合になるため、喫煙対策に向けた取り組みを検討しておきましょう。また喫煙者がゼロの場合でも、適合条件を満たすために現状維持に必要な取り組みを実施する必要があります。

新型コロナ対策

令和2年度の健康経営度調査では新型コロナウイルス感染症対策に関する設問がありましたが、令和3年度では臨時・緊急措置の設問は撤廃されています。令和3年度で問われている項目は以下の4つです。

・感染者が発生しても従業員の健康と事業継続を両立させるために定めた事業計測計画の内容(従業員や同居家族が感染者・濃厚接触者になった場合の対策やルールが整備されているかなど)
・人との接触を避けるための多様で柔軟な勤務ルールの整備(テレワークなどの柔軟な勤務制度を導入しているかなど)
・職場の環境整備・出社を余儀なくされる従業員への配慮(検温やアプリなどで従業員の健康状態を確認しているかなど)
・従業員等のワクチン接種に対する支援(従業員や同居家族がワクチン接種を受けやすい環境を整備しているかなど)

健康経営度調査の活用で得られるメリットと活用方法

健康経営度調査をクリアできれば、健康経営の取り組みを推進している企業として社会的な証明ができます。調査結果をうまく活かすことができれば、さまざまなメリットを得られます。本章では、健康経営度調査の活用によって得られるメリットと具体的な活用方法を確認しておきましょう。

健康経営の取り組み方が理解できる

健康経営度調査の設問に回答することで、健康経営の取り組みにおいて何を重視すべきなのか、どのような取り組みを実践すればよいのかを理解できるようになるでしょう。

また健康経営度調査は大企業を対象にした調査ではあるものの、中小企業にとっても健康経営を実施する上で重視すべきポイントが分かりやすくまとめられています。以前に実施された統計データを分析すれば、健康経営に取り組んでいる他の企業の取り組み状況を把握できる上に、自社の分析にも役立てられます。

生産性や企業経営による効果を分析できる

健康経営度調査に毎年回答すれば、自社の業務パフォーマンスを評価するための指標に活用できます。健康経営に取り組むだけでは実際にどのような効果が得られたのか、客観的な評価ができません。

健康経営度調査を継続的に行うことで、調査票の回答内容やフィードバックシートを通じて経年変化の分析・評価が可能です。分析結果や評価を基に、実践している取り組み内容をブラッシュアップしていきます。

また経済産業省のホームページへの公開承諾をすれば、自社の業務パフォーマンスや取り組み内容を手本として提示できるため、間接的に国が推進する健康経営の取り組みの促進に貢献できます。

他社の取り組み内容や評価についての情報を得られる

健康経営優良法人の中のホワイト500に認定されるためには、健康経営度調査のフィードバックシートと調査票の一部の公開承諾が必須条件になっています。公開承諾した他の企業のフィードバックシートなどは経済産業省のホームページで公開されているため、自社の取り組み状況などと比較分析する際に活用できます。

フィードバックシートから分かることは、回答企業の中の総合順位や業種平均などです。比較分析だけでなく良い点を自社の健康経営の施策などに取り入れることで、健康経営に近づけられます。

社会全体に意識を向けられる

健康経営度調査の項目の中には、「社会全体の健康に関する取り組み」を問う設問もあります。健康経営度調査の実施によって、自社での取り組み状況はもちろん社会全体の取り組みに目を向けるきっかけになるのです。

特に健康経営銘柄や優良法人などの認定を目指している企業は、SDGsやESG投資などの企業が負うべき社会的な責任が求められています。実際に調査票では、取引先のサプライチェーンと連携した健康経営の取り組みを実施しているか、今後どのように対応していくのかを問う設問が設けられています。回答は自由形式で評価の対象ではありませんが、企業の真価が問われている設問といえるでしょう。

まとめ

健康経営度調査は自社の健康経営の取り組み状況を客観的に把握できるだけでなく、社会全体の健康に意識を向けた取り組みの重要性を知ることができます。

また健康経営度調査は健康経営優良法人や健康経営銘柄の認定要件になっているため、認定制度への申請を検討している法人は調査に回答する必要があります。さらに社内だけでなく社外への発信や産業医などの専門家との連携も必須なため、調査を受ける前に必要な環境を整備しておきましょう。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。