産業医の役割・選任

産業医面談はオンラインでできる?求められる条件やオンライン面談の注意点を解説

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更新日:2023.02.24

テレワークの普及、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、産業医のオンライン面談が注目されています。オンライン面談を滞りなく実行するためには、企業はどのような点に気を付けるとよいでしょうか。

本記事では、産業医のオンライン面談に関わる企業の担当者に向け、産業医や情報通信機器の条件、留意したいポイントなどを解説します。オンライン面談が可能な産業医の探し方も紹介するので、自社の対策にお役立てください。

新型コロナウイルスの流行によりオンライン化が本格化

新型コロナウイルスの流行によりオンライン化が本格化

新型コロナウイルス感染症の流行を防ぐため、企業は就業状態の見直しを余儀なくされました。多くの企業はテレワークを採用し、従業員がオフィスに集合しないように配慮しています。

くしくもコロナ禍は慣習による無駄を排除するきっかけとなりました。不要不急の会議は省略・廃止され、会議のための資料を印刷したり、会議室を予約したりする手間は大幅に削減されています。オンラインでは遠方の人とのやり取りも可能です。そのため、コロナ禍には出張の頻度も減少傾向にあります。

業務と同様に、産業保健活動・産業医面談もオンラインで実施するよう風向きが変わってきています。直接対面して従業員の様子を見ることでより丁寧な面談が可能です。しかし、多くの従業員が在宅で働いているときに、産業医面談のために従業員を出社させることは困難なケースもあります。

【2020年11月】オンライン面談が可能に

2020年11月に、厚生労働省は、産業医によるオンライン面談に関する通達を公表しました。

本章では、オンライン面談の際に産業医に提供すべき従業員情報や、オンライン面談が可能な産業医の条件を解説します。オンラインでも対面と変わらない面談ができるように、企業はしっかり事前準備をしましょう。

産業医に提供すべき従業員情報の追加

オンライン面談の通達以前は、人事から事前に産業医に渡す従業員の情報は、労働時間などの勤怠情報や作業環境のみでした。

一方、通達後は、より詳細な従業員の情報を提供する必要があります。2022年現在、オンライン面談で提供すべき情報は、従業員が所属する事業場の事業概要・業務内容・作業環境や、従業員個人の業務内容・勤怠情報・作業環境です。

オンラインでは、お互いの表情や感情・声の調子・しぐさ・微妙なニュアンスなどを読み取りにくくなります。面談を円滑に進め、従業員のストレスの溜まり具合や健康状態などを把握するために、産業医はあらかじめ詳細な情報を仕入れておかなければなりません。

オンライン面接の実施条件の緩和

オンライン面談が可能な産業医の条件に関しても、法改正に伴い条件が緩和されました。かつては、厚生労働省の通達に「産業医による面談は、直接対面して行う」と記されていました。

しかし、法改正後には、必ずしも、従業員と産業医が対面して面談せずともよい、ただし、産業医の希望があれば、直接対面して面談するというように内容が緩和されています。

つまり、従業員の様子が分かりコミュニケーションに問題がなければ、オンライン面談が実施可能といえます。企業は産業医にオンライン面談が可能か打診をし、従業員と産業医が順調に面談できるようルールや設備を整えましょう。

産業医のオンライン面談で求められる条件

産業医のオンライン面談で求められる条件

産業医のオンライン面談に求められる条件が緩和したとはいえ、多くの企業ではオンライン面談が普及していません。オンラインで産業医面談を行うには、産業医に求められる4つの条件と、使用する情報通信機器に関わる3つの要件を守る必要があります。

従業員と企業の両方にメリットのある産業医のオンライン面談に向け、産業医と情報通信機器に関わるルールを確認しましょう。

産業医に求められる4つの条件

オンライン面談が実施可能な産業医は、4つの条件を満たす必要があります。

1.対象従業員が所属する事業場の産業医であること
2.過去1年以上、従業員の健康管理を実施する産業医であること
3.過去1年以内に、従業員が働く事業場の巡視実績のある産業医であること
4.過去1年以内に、従業員に指導等を実施した経験のある産業医であること

オンライン面談の実施条件が緩和される前は、上記4つの条件をすべて守らなければなりませんでした。一方、法改正後には、これら4つの条件は努力義務に変更されています。

2022年現在、条件が緩和したにもかかわらず、オンライン面談に対応する産業医はわずかです。オンライン面談が普及するためには、法律によるルールの明文化が求められます。

出典:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について|厚生労働省

情報通信機器に関する3つの要件

産業医がオンライン面談を行う際には、3つの要件に従った情報通信機器を用意する必要があります。情報通信機器の要件は以下のとおりです。

1.オンライン面談を行う産業医と従業員が、お互いに声・しぐさ・表情・顔色などを確認でき、通信に映像・音声ともに乱れがないこと
2.情報セキュリティに問題のない通信手段であって、外部への情報漏洩やサイバー攻撃の防止対策が可能であること
3.従業員がオンライン面談を受ける際に、情報通信機器の操作がスムーズにできること

オンライン面談がスムーズに行われるように、セキュリティ面に不安のない情報通信機器を選びましょう。

出典:情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について|厚生労働省

オンライン面談を実施する際に留意したいポイント

円滑にオンライン面談を浸透させるために、必要な留意点を確認しておきましょう。本章では、オンライン面談を実施する際に留意すべき内容を解説します。

産業医のオンライン面談は、しかるべき手順を踏んで実行し、周知を徹底してください。また、面談方法にかかわらず、産業医の職場巡視は義務付けられているため注意しましょう。面談当日に不備が起きた際の手続きも、決めておく必要があります。

オンライン面接の実施方法は衛生委員会で審議する

産業医のオンライン面談を実施する際には、あらかじめ衛生委員会などで審議して、決定事項を従業員へ周知する必要があります。なお、衛生委員会は、労働安全衛生法に基づき各企業に設置されています。衛生委員会の目的は、従業員の健康や安全を守ることです。

オンライン面談を実施したいと考えても、担当者の独断で面談方法を変更できない点に注意しましょう。また、衛生委員会自体もオンラインでの開催が認められています。メンバーの集合が難しければ、各自ネットワークをつないで会議をしましょう。

出典:報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について|厚生労働省

オンライン面談ができることを従業員に周知する

衛生委員会でオンライン面談の実施が認められたら、オンライン面談が可能である旨を従業員に周知しましょう。健康診断の結果が思わしくない人、ストレスや体調不良などを訴えている人に限らず、全従業員を対象にオンライン面談を周知する必要があります。

周知の方法としては、社内メール・オンライン会議・チャット機能・電話・朝礼や集会での伝達などが挙げられます。

すでにテレワークが進行している企業の場合は、積極的に周知を進めましょう。連絡が伝わらなければ、従業員がオンライン面談を受けられない恐れがあります。

職場巡視が必要な企業は実施する

労働安全衛生法では産業医の職場巡視について定めています。まず、事業場の従業員が50名以上の企業は、産業医を選任する義務があります。また、特定業務の場合は500名以上で、それ以外の企業であれば1,000名以上で専属の産業医の選任が必要です。

なお、産業医は1カ月に1回以上のペースで、職場巡視をしなければなりません。事業場で働く従業員の大部分がテレワークに従事していても、職場巡視は必要です。

ただし、メンタルヘルスや適切な労働時間、安全な労働環境などに対して十分な対策ができていれば、職場巡視の頻度は2カ月に1回のペースでも許可されます。

緊急時に対応できる体制を整備しておく

当日に急患などがあれば、産業医がオンライン面談に対応できないかもしれません。不測の事態に備え、面談のスケジュールをずらす可能性があると従業員に周知しておく、代理で面談可能な人材を手配しておくなどの方法があります。

オンライン面談ができる産業医を探すには?

産業医を探す方法として、地域の医師会から紹介を受ける、健康診断やストレスチェックを実施してくれる機関に相談する、などの方法があります。しかし、すべての産業医がオンラインに対応してくれる訳ではありません。

オンライン面談ができる産業医を探すなら、産業医紹介サービスがおすすめです。産業医紹介サービスには、さまざまな条件の医師が登録しており、企業にマッチする産業医を見つけられます。

産業医紹介サービスの「産業医コンシェルジュ」では、オンライン面談が可能な医師を紹介します。事業場を多数展開する場合でも、企業全体の健康管理が可能です。オンライン面談可能な産業医をお探しの際は、ぜひ、産業医コンシェルジュにご相談ください。

まとめ

世の中の変化に合わせて産業医面談のオンライン化が求められています。産業医や情報通信機器に求められる条件を把握し、オンライン化に向け準備を進めましょう。

オンライン面談に向け、衛生委員会で決議を採ったのちに、すべての従業員にオンライン化を周知する必要があります。なお、オンライン面談に切り替えた後も、職場巡視は必要です。

産業医コンシェルジュには、経験豊かな産業医が多数登録しています。オンライン面談を始めとし、休職・復帰の判定や、感染症対策まで幅広く対応可能です。オンライン面談が可能な産業医をお探しの際は、ぜひ、産業医コンシェルジュをご利用ください。

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Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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