産業医の意見書とは?診断書との違いや役割を解説【フォーマット例あり】

日付2022.05.30
更新日:2022.07.29
産業医の意見書

産業医の意見書は従業員の健康を守る上で有用となる書類です。産業医による就業上の措置への意見を基に企業は適切で安全な判断ができます。

本記事では産業医の意見書についてどのような書類なのか、主治医の診断書との違い、状況別の役割を解説します。産業医の意見書の作成方法や、便利なテンプレートも紹介しているのでぜひ参考にしてください。

また、産業医について詳しくは『主治医と産業医の違いとは?それぞれの役割や仕事内容・意見に違いがある場合に企業がするべき対応』も参考にしてください。

産業医の意見書とは?

まずは産業医の意見書の概要についてその役割や診断書との違い、法的効力があるのかを解説します。

産業医の意見書の役割

産業医の意見書とは、産業医による所見を記載した報告書をいいます。産業医の意見書には事業者が就業上の措置を適切に行うための助言などがまとめられています。

産業医の意見書が作成される場面はさまざまです。例えば従業員が通院している場合は主治医の診断結果に基づいてどうするべきか産業医からも意見を出し、意見書を発行することになります。健康診断後には診断結果によって就業における措置についての意見を述べることもあります。

休職中である従業員の復職の可否判断においても産業医の意見書は重要です。企業はこれらの意見書の内容を参考に意思決定を行います。産業医の意見書は企業が健全に運営していくにあたって医学的な見地から意見を提供するための役割を担っています。

主治医の診断書との違い

産業医の意見書に似たものとして主治医の診断書が挙げられますが、これらの書類はそれぞれ役割が異なります。主治医の診断書とは、患者の疾病や日常生活に重点を置き、医師による所見を書き記したものです。業務遂行の安定性については考慮されていないため、主治医の診断書により復職可能とされてもすぐに復職が決定するわけではありません。

一方産業医の意見書とは、従業員の業務遂行の安定性に着目し、復職が可能かどうかの意見を企業に提示するものです。従業員の就業意欲や体力、生活リズムや適応力などを検討して復職可否の判断が行われます。主治医の診断書と産業医の意見書、双方を基に判断した上で復職にかかる決定が下されます。

産業医の意見書に法的効力はある?

産業医の意見書に法的な効力はありません。あくまで産業医の意見書は企業に対して意見や助言を提示するという位置付けになっているからです。ただし、産業医の所見を無視し結果として健康問題が生じた場合、企業の責任が問われる恐れがあります。

産業医は労働衛生の専門家であり、企業が合理的な理由もなくその意見を無視した場合は、企業が安全配慮義務を怠ったとみなされる可能性があるのです。可能な限り産業医の意見書は尊重し、企業の判断に取り入れましょう。

【状況別】産業医の意見書の役割

【状況別】産業医の意見書の役割
産業医の意見書は状況によってその役割が異なります。ここではストレスチェック、健康診断、長時間労働の発生、休職・復職について、それぞれの場面で産業医の意見書にどのような役目があるのか、具体的に解説します。

ストレスチェックで高ストレスと判断した場合

従業員が50人以上いる事業所では労働安全衛生法によって、年に一度のストレスチェック実施が義務付けられています。ストレスチェックで高ストレスと判断された従業員には、産業医面談を行うことになります。

この面談は企業や産業医が従業員に対して強制できるものではありません。しかし高ストレス者を放置し、健康上のトラブルが生じた場合には、企業の責任が問われる恐れがあります。高ストレス者には可能な限り、産業医面談を受けてもらいましょう。

面談実施後、産業医は企業に向けて従業員の健康やストレス状態についての所見を意見書にまとめます。企業は産業医の意見書に基づき、従業員の実情を踏まえた上で適切な措置を講じる必要があります。

健康診断で異常所見と判断した場合

労働安全衛生法によって企業は規模を問わず、年に一度は健康診断を実施する義務があります。そして健康診断の結果で異常が見つかれば、基本的に3カ月以内に医師の意見を聞くことが必要です。

健康診断で異常所見がある場合は、健康診断個人票の「医師の意見」という項目に就業判定が記載されます。就業判定とは該当従業員が従来どおり働き続けられるのか、それとも就業上の措置が必要なのかを示したもので、通常勤務・就業制限・要休業の3区分のいずれかです。

就業制限が必要とされた場合には、労働時間の短縮や業務内容の転換などが推奨されます。要休業と判定された場合は、療養のために一定期間、休暇や休職などによって従業員を勤務させないことが推奨されます。

長時間労働があると判断した場合

従業員の労働時間が1カ月あたり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる場合、企業は産業医による面接指導を実施することが労働安全衛生法によって定められています。長時間労働は脳・心臓・メンタル疾患の発症との関連性が強いとされているため、これらの疾病を防ぐために産業医面談が義務付けられているのです。

長時間労働にかかる面談実施もストレスチェックにおける面談と同様、企業が従業員に対して強制できるものではありませんが、可能な限り実施し健康トラブルの防止に努めましょう。面談後には産業医の意見書が作成され、就業判定の他、労働時間や業務内容についてのより詳細な意見や医療機関への受診配慮などについて記載されます。

休職や復職を判断する場合

従業員の休職や復職を決める際は慎重な判断が必要です。労働契約法によって企業には従業員の安全配慮義務が課せられているため、特に復職についての安易な判断は許されません。復職判断については、労働衛生の専門家である産業医の意見を仰ぎましょう。

従業員の休職・復職時には主治医の診断書が必要となり、一方産業医の意見書は必須ではありません。しかし、業務遂行が可能か、復職後に疾病等が再発する可能性がないか、そして企業側が配慮すべき点はないかなど、業務に焦点を当てた判断については産業医の意見を参考にする必要があります。企業としての安全配慮義務を果たすためにも復職判断の際は産業医の意見書を発行してもらいましょう。

【フォーマット例】産業医の意見書の作成方法

基本的な流れとしてはまず従業員への面談指導を行い、その結果に基づいて産業医の意見書が作成されます。

面談前にはあらかじめ企業から労働時間や業務内容、そしてその他に特別な要因がないかの情報収集をしておきましょう。特別な要因とは、業務で精神的緊張を強いられていないか、突発的な案件が多いのかなどの事柄です。面談では従業員から労働時間や疲労蓄積、心理的な負担の状況など、業務上の項目、そして睡眠時間や食習慣、運動量や喫煙の有無など、生活状況についても確認します。

従業員の情報や面談内容を基に、産業医は総合的な評価を下し、労働者の就業区分の判定、指導を行います。意見書を作成する際は意見書のテンプレートを利用すれば、必要事項の記載漏れも起きず便利です。意見書が完成したら企業側への報告を行います。

出典:厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」(参照:2022-05-18)

 

就業に関する産業医意見書

こちらのテンプレートは以下よりダウンロードいただけます。
お役立ち資料DLページ

まとめ

一人ひとりが活き活き働ける環境
産業医の意見書とは、労働衛生の専門家による就業上の適切な措置について記載した書類です。高ストレス、健康診断での異常所見、長時間労働、休職・復職などについて判断する際、産業医の意見書による所見を参考にすることは非常に有用です。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。