適応障害の従業員への対応方法は?企業ができるメンタルヘルスケアを解説

日付2022.05.30
更新日:2022.06.30
適応障害とは?

適応障害による休職は増加しており、仕事における生産性を下げてしまうため、企業としても対策を打たなくてはなりません。適応障害とはストレスから発症するメンタル疾患で、メンタルや身体、行動にさまざまな症状が現れます。

本記事では適応障害について、原因・症状・治療方法などを解説します。うつ病との違いや原因別の対処方法、企業ができる防止策なども紹介しています。適応障害を予防・早期治療するための参考にしてください。

適応障害とは?

まずは適応障害とはどのような疾病なのか、原因や症状、治療法を解説します。

適応障害になる原因

適応障害では、職場環境や人間関係などにうまく適応できずに耐えがたい気分を感じ、憂鬱な気分や不安感が強くなる症状が現れます。適応障害の具体的な症状については詳しく後述しますが、例えば、涙もろくなったり通常では気にならないことでも過剰に心配したりなど神経が過敏になってしまうケースも少なくありません。

不安や心配などの症状が一時的なものではなく、長く続く場合には適応障害と診断される可能性があります。状況にもよりますが、適応障害はストレスの原因となる出来事から3カ月以内に発症し、そのストレス要因が取り除かれてから6カ月以内に回復するケースが多いとされています。

また、適応障害は環境の変化によって起こりやすいため、新型コロナウィルスによる環境変化が原因で発症する人も少なくありません。テレワークに馴染めないなど環境の変化に強いストレスを感じ、適応障害を引き起こすことが考えられます。

適応障害の主な症状

適応障害ではメンタル、身体、行動の三つの面において症状が現れ、これまでは普通にできていたことでも、うまくできなくなることがあります、メンタル面での症状は抑うつ気分や不安、怒り、焦りといった情緒的にネガティブな状態です。意欲や集中力の低下といった症状も見られます。

身体面での症状は睡眠障害や頭痛、めまい、動機、腹痛、吐き気などです。適応障害の特徴の一つは、こういった身体的な不調があるにもかかわらず、内科といった身体科を受診してもはっきりした原因が分からないことです。

行動面での症状は遅刻、欠勤、早退の増加です。メンタルの状態が悪いことから、対人関係の悪化を引き起こしたり、アルコールの摂取量が増えたりすることもあります。こういった症状が出ている場合は、適応障害の本人のみならず、職場全体の生産性を下げてしまう恐れがあります。

適応障害を治すには?

適応障害を治すには発症の原因となったストレス要因を軽減すること、または発症者本人のストレス対処力を上げることの2つの方法があります。例えば仕事量の多さや、職場での人間関係の軋轢がストレスの原因ならば、業務軽減や配属変更などによって解決するケースもあるでしょう。

しかし、仕事におけるストレスを減らすことは難しい場合も少なくありません。ストレス要因を取り除けないような場合では、精神薬の内服や心理療法などで対処することになります。また、認知行動療法などによってストレスコーピングのスキルを身につければ、環境の変化などにも適応しやすくなるでしょう。

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病の違い
適応障害とうつ病はどちらもメンタル疾患で、似た症状を引き起こすこともありますが、全く違う病気です。適応障害では明確なストレス要因によって3カ月以内に発症しますが、うつ病は必ずしもストレス要因が明確でないこともあります。

また、適応障害ではストレスの原因から離れれば症状が軽減しますが、うつ病では何においても興味がわかず、慢性的な抑うつ状態が続くという違いがあります。治療においては、適応障害では労働環境などのストレス要因の調整によって解決を目指すのに対し、うつ病では抗うつ剤などの内服が主です。

適応障害 うつ病
原因 明確なストレス要因
ストレス要因と接触して3カ月以内に発症する
ストレス要因が明確でないこともある
内因性
症状 抑うつ状態
ストレス要因から離れていれば、趣味などを楽しむことができる
慢性的な抑うつ状態(二週間以上)
興味や喜びの感情の喪失
治療方法 ストレス要因の調整
抗うつ薬ではあまり効果がない
抗うつ剤の内服

 

適応障害の従業員への対応方法

企業から従業員への対応方法は、適応障害の原因によって異なります。ここでは適応障害の理由が不明な場合、人間関係の場合、職場環境の場合、テレワークの場合について、それぞれの対応方法を解説します。

根本的な理由が分からない場合

適応障害への対応ではストレス要因を調整することが大切です。しかし、すぐにはストレスの原因が分からないケースもあります。そのような場合は産業医に相談するのも一つの手です。産業医は医療、そして労働衛生の専門家なので、役立つアドバイスをもらえるでしょう。

また、産業医が必要とみなし、従業員からも希望がある場合には主治医の受診への橋渡しをすることができます。注意すべき点は、産業医と主治医ではそれぞれ役割が異なることです。主治医は患者の治療に注目し、診断などを行うのに対して、産業医は中立的な立場から、従業員が健康的に働けるよう指導を行う役目を担っています。

企業・従業員の双方が主治医と産業医の違いを知っておくことで、診断や指導の効果が最大限発揮されます。主治医と産業医の違いについて詳しくは『主治医と産業医の違いとは?それぞれの役割や仕事内容・意見に違いがある場合に企業がするべき対応』も参考にしてください。

職場の人間関係が原因の場合

職場の人間関係や仕事でのハラスメントが原因となって適応障害を発症することも少なくありません。新入社員や人事異動したばかりの社員は、新しい人間関係に馴染めず強いストレスを受けることがあります。職場の上司や先輩が協力して業務以外のサポートを行い、新しい環境に溶け込めるよう配慮することが大切です。

職場でのハラスメントは社会問題としても注目されており、厚生労働省はパワハラやセクハラの防止を目的として「職場におけるハラスメント関係指針」を公表しています。企業としても研修の実施や相談窓口の設置などを通して、ハラスメントの防止に務めましょう。

出典:厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」(参照:2022-05-18)

職場環境が原因の場合

業務時間や内容といった職場環境に適応できず、適応障害を発症することもあります。業務内容が合っていない場合は、配置転換するのも一つの方法です。業務時間が長すぎる場合には、人員補充するなどの措置によって業務量を減らすことも検討しましょう。

また従業員が早期のうちに相談できるよう、相談窓口を設けておくのも大切です。従業員が窓口に不信感を抱いていると相談が後回しになってしまうことも考えられるため、安心して相談できるような環境整備も必要です。企業側から従業員に対して、窓口では相談内容を含む個人のプライバシーが守られ、気軽に相談できることを日頃から周知しましょう。

テレワークが原因の場合

新型コロナウィルスの影響からテレワークを導入する企業は増加傾向です。しかし従来の働き方に慣れていると、テレワークに馴染めず強いストレスを感じてしまう人も少なくありません。

今までの働き方ならコミュニケーションが容易で雑談なども気軽にできました。しかし、テレワークでは業務上のやりとりが難しく、会話内容も事務的なものに終始してしまうため孤独を感じやすくなります。また、テレワークではオンオフの切り替えが難しくプライベートの時間がとりにくいといった点もあるでしょう。

テレワークではお互いの細やかな様子が分からないため、メンタル不調をきたしている従業員がいても周囲がなかなか気づけません。厚生労働省によると企業の73%が、テレワークでは従業員のメンタルケアが困難だと感じているといいます。

出典:厚生労働省「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」(参照:2022-05-18)

企業ができる従業員のメンタルヘルスケアとは

企業ができる従業員のメンタルヘルスケアとは
適応障害をはじめとしたメンタルヘルス不調は、一度発症すると治るまでに時間がかかるため、できれば早期発見・予防したいところです。ここでは企業ができるメンタルヘルスケアについて紹介します。

産業医を活用する

メンタルヘルスケアは一度実施すれば効果があるというものではなく、継続的、そして計画的に行う必要があります。産業医面談の実施は従業員の健康維持に役立ち、メンタルヘルスケアの一環にもなります。

しかし、せっかく産業医面談を受けられる環境を整えても、従業員が面談を希望しなければ、メンタルヘルスケアの効果は望めません。企業としては従業員が気軽に面談を受けられるよう、体制を整えることも大切です。社内報などで産業医面談を受けることのメリットや、プライバシーが守られることなどを周知しましょう。

ストレスチェックを行う

ストレスチェックとは従業員の回答から、ストレスの状況を測るためのテストです。ストレスは気づかないうちに溜め込んでいる場合もあり、放置していると重大な疾患につながります。

定期的なストレスチェックを行うことで、企業は従業員のストレス状態を把握でき、また従業員も自身の状況を自覚できます。高ストレス状態が自覚できれば、ストレス解消のための行動をしたり、ストレスコーピングの意識を高めたり、周囲に助けを求めることなどが可能です。

ストレスチェックに関して詳しくは『ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説』も参考にしてください。

新入社員研修の実施

新入社員は大きな環境の変化にさらされるため、特に適応障害になりやすい状態です。入社後の新しい環境に馴染めず、適応障害を発症することは珍しくありません。新入社員に対しては、研修を通して適応障害防止策を伝えることが大切です。

労働衛生や医療の専門家である産業医なら、メンタルヘルスに関する研修の講師として最適です。研修では自身のストレスに気づく方法や、自分でできるメンタルヘルスケア、悩みがある場合に早期相談することの大切さなどを取り扱いましょう。

管理職向け研修の実施

従業員の適応障害防止のためには、新入社員研修とあわせてラインケア研修も実施することが大切です。ラインケア研修とは社内において、部下を持つ立場の従業員に向けた研修で、職場でのメンタルヘルストラブルの予防・対策法を学びます。

管理職やマネージャーといった職場で大きな影響力がある立場の人がメンタルヘルスについての正しい知識を持つことは適応障害の防止に不可欠です。また、部下を持つ立場は責任も重く、知らず知らずのうちにストレスを抱えこんでしまう恐れもあります。ラインケア研修の実施が年次の若い従業員、そして管理職の双方の適応障害防止につながります。

メンター制度の導入

適応障害やメンタルヘルスケアにはメンター制度の導入も有効です。メンターとは仕事において指導・助言する人物を指します。メンター制度とは新入社員や比較的年次の若い従業員に対して、経験年数の近い先輩社員がメンターとなり、サポートやアドバイスをする仕組みです。

メンターは新入社員が相談しやすいように、異なる部署の先輩従業員が選ばれるケースもあります。直属の上司や先輩ではなく年齢も近いため、仕事での悩みなども打ち明けやすいでしょう。困ったときに相談できる存在がいれば新入社員の心の支えとなり、問題解決につながることが期待できます。

まとめ

適応障害は抑うつ状態や不眠、気力の低下などを引き起こし、仕事におけるパフォーマンスを下げます。適応障害は人間関係、職場環境、働き方の変化が原因となる場合も多く、症状が進行すれば休職や離職にもつながる可能性があるため注意が必要です。

適応障害防止に有効な手段の一つは産業医の活用です。産業医面談や、産業医による研修の実施、ストレスチェックなどは適応障害の予防や早期治療を可能にします。

産業医サービスをお探しの場合は、Dr.健康経営の「産業医コンシェルジュ」をお試しください。Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスです。適応障害をはじめとしたメンタル疾患の防止にも役立ち、企業の生産性アップに貢献します。まずはお気軽にお問合せください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。