ストレスマネジメントとは?企業にもたらすメリットや注目されている背景・導入手段を解説

日付2022.07.29
更新日:2022.07.29
ストレスマネジメント

現代社会においてメンタルヘルス不調による休職や離職が増える中、解決策としてストレスマネジメントが注目されています。ストレスマネジメントを効果的に実施できれば従業員のパフォーマンスを向上させ、企業の業績を上げられるでしょう。

本記事では企業としてできるストレスマネジメントの導入方法を解説します。ストレスマネジメントの概要やストレスコーピングについても取り上げているので参考にしてください。

ストレスマネジメントとは?

ストレスマネジメントとはどのようなものなのでしょうか。まずは、ストレスマネジメントの意味、関連語句であるストレッサーやストレス反応について解説します。

ストレスマネジメントの意味

企業においてのストレスマネジメントとは、従業員一人ひとりがストレスをうまくコントロールできるよう、対処や管理を適切に実施することです。ストレスと聞くと悪いイメージがあるかもしれませんが、実は適度なストレスの存在は仕事のパフォーマンスを向上させることが分かっています。

ストレスは同じような出来事が起きても、人によって受け方は異なります。それぞれに合ったストレスとの付き合い方を見つけることが大切です。従業員がストレスマネジメントの知識やスキルを身につけることで仕事のストレスをプラスに働かせられるようになります。一人ひとりの生産性が上がることで結果として企業の業績が向上するでしょう。

ストレッサーとストレス反応

ストレスとは人が外からの刺激を受けた際、身体や精神に生じる緊張状態を指します。ストレスのきっかけとなる刺激をストレッサー、ストレッサーに対する反応をストレス反応と呼びます。

仕事においてストレッサーとなり得るものは、業務での失敗や人間関係の悩み、過度の長時間労働などです。ストレッサーは社会的ストレッサー、心理的ストレッサー、身体的ストレッサー、物理(生物・化学)的ストレッサーの4つに分けられます。

ストレッサーに対するストレス反応としては、身体的反応、心理的反応、行動的反応の3つが挙げられます。具体的には不眠や食欲低下、抑うつ気分、遅刻や欠勤の増加などとして表れます。

ストレスマネジメントが注目されている背景

ストレスマネジメントが注目されている背景
近年、ストレスマネジメントが注目されている背景について、仕事における現状やストレスチェック制度の義務化といった観点から解説します。

仕事に関するストレスを抱える割合が高い

厚生労働省の調査によると現代では仕事に関する強い不安や悩みからストレスを感じている人の割合が高いことが分かっています。
厚生労働省「職場における心の健康づくり」
画像引用:厚生労働省「職場における心の健康づくり」(参照:2022-06-18)

過度のストレスは心身の健康に悪影響を与えます。また近年では、ストレスを原因としたメンタル不調者は増加しています。強いストレスを継続的に受けることによって休職や離職、業務のパフォーマンス低下が生じる恐れがあるのです。

ストレスから生じる仕事への悪影響の改善策として注目を集めているのがストレスマネジメントです。近年では多くの企業が職場環境改善のためにストレスマネジメントに着目しており、社員教育や研修にも取り入れています。

ストレスチェック制度の義務化

厚生労働省によってストレスチェックが義務化されたことも、企業のストレスマネジメントに対する意識が高まった原因の一つです。ストレスチェックとは、ストレスに関する質問票への回答によって回答者のストレス状態を調べる検査です。

厚生労働省は、仕事でのメンタル不調者が増えたことを受け、2015年12月に労働安全衛生法を改正しストレスチェックを義務化しました。

常時50人以上の従業員がいる事業所では年に一度のストレスチェック実施が義務づけられています。ストレスチェック未実施の場合、罰金が課されたり安全配慮義務違反とみなされたりする恐れがあるため注意が必要です。

ストレスチェックについて詳しくは、『ストレスチェックに関するコラム一覧』を参考にしてください。

ストレスマネジメントが企業にもたらすメリット

ストレスマネジメントが企業にもたらすメリット

企業がストレスマネジメントに力を入れると従業員のメンタルヘルスが維持でき、生産性の向上やハラスメントの防止に役立ちます。そこで、ストレスマネジメントが企業にもたらすメリットについて解説します。

従業員のメンタルヘルスを健康に保てる

従業員のメンタルヘルスを維持することは、企業の業績向上のために欠かせません。メンタル不調者が多い場合、企業全体の士気やパフォーマンスが下がる可能性があります。

対人関係においてメンタル不調者はネガティブになりやすい傾向があります。メンタル不調者が一人でも職場にいれば、そのマイナスの気持ちが周囲にも伝播してしまうかもしれません。

また、深刻なメンタル不調では脳がうまく機能しなくなり、抑うつ状態が生じます。不眠や無気力感によって遅刻・欠勤・休職・離職が増えると人手不足から現場の負担が増え、ますますメンタル不調が起こりやすくなるなど負の連鎖が生じる恐れもあります。

出典:「うつ病|こころの病気を知る – 厚生労働省」(参照:2022-06-18)

職場環境の改善や従業員の生産性の向上につながる

ストレスマネジメントによって従業員のメンタルヘルスが健康になれば職場環境が明るい雰囲気になりやすく、一人ひとりのパフォーマンスが高まります。良好な職場環境は、従業員のモチベーションアップに不可欠です。

仕事に対してポジティブな考えを持つ人はワークエンゲイジメントが高いため、活力と熱意を持って業務に没頭しやすい状態です。従業員が仕事に対して前向きな気持ちを持てば、業務に積極的に取り組めるようになります。モチベーションが高いと作業スピードが早くなるだけでなく業務に対して工夫をこらしたり、効率化を考えたりといったことも可能です。

企業がストレスマネジメントに力を入れることで、企業全体のメンタルヘルスが健康に保たれれば、自然と業務効率が良くなり業績の向上につながります。

出典:厚生労働省「第3章 『働きがい』をもって働くことのできる環境の実現に向けて」(参照:2022-06-18)

ハラスメントの防止につながる

企業がストレスマネジメントを実施することは、従業員のストレスに関する意識を高め、ハラスメントの防止につなげられます。
ストレスに関する知識が身につけば、ハラスメントが人へストレスを与えていることや、どういったことがストレスになるのかを理解することができます。
パワハラやセクハラ、マタハラといった職場での対人トラブルは生産性低下の原因の一つです。職場内のハラスメントを防止するためには、ハラスメントによる悪い影響を周知することが大切です。

また、ストレスについての正確な知識を知ることは、コミュニケーション・エラーの防止にもつながります。コミュニケーション・エラーとは情報の発信が曖昧な場合や情報の解釈を誤った場合に起こる齟齬です。ストレスの感じ方やものごとの受け取り方が人それぞれ異なることを理解すれば、コミュニケーション・エラーは起こりにくくなるでしょう。

ストレスマネジメントに有効な『コーピング』とは?

コーピングとは物事にうまく対処するための行動を指します。主なストレスコーピングには、問題焦点型コーピングや情動焦点型コーピング、ストレス解消型コーピングの3種類があります。それぞれについて解説します。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングとはストレスの原因に直接働きかけ、状況を改善することによってストレスを解決する方法です。ストレスの根本的解決になるため大きな効果が期待できるでしょう。例えば、異動や業務内容の変更などを行って働く環境を変えるなどです。

ただし、問題焦点型コーピングは実行が難しいことも少なくありません。異動や業務軽減は個人の力では実現が難しく、また企業としても従業員全員の希望を叶えるのは現実的ではないからです。問題焦点型コーピングが実行できない状況では次項で解説する情動焦点型コーピングが有効です。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングでは、ストレスを感じる心に注目して認知の仕方を変化させます。ストレスの感じ方は人それぞれだと前述しましたが、この感じ方は後天的に変えることができます。情動焦点型コーピングは個人で実行でき、精神の成長にもつながるため将来にわたって役立つコーピングです。

例えば情動焦点型コーピングの考え方としては、ノルマが厳しい場合にノルマを負担に感じるのではなく、挑戦のしがいがあると考えることなどが挙げられます。上司が厳しい場合も、それだけ自分が期待されているのだと考えることでモチベーションの向上につなげられます。

ただし、情動焦点型コーピングはストレスの根本解決にはなりません。あまり無理をしてしまうとかえってメンタルに不調をきたしてしまう可能性があります。ストレスの緩和については情動焦点型コーピングだけに頼るのではなく、他のコーピングとあわせて実行するのがおすすめです。

ストレス解消型コーピング

ストレス解消型コーピングはストレスがある場合に発散させることでストレスを溜め込まないようにする方法です。コーピングの中でも気軽に実行しやすく、即効性がある方法といえます。

ストレスの原因となる悩みや不安がある場合、家族や友人に話を聞いてもらうこともストレス解消型コーピングの一つです。その他、趣味に没頭することや旅行やショッピングに出かけること、ヨガやスポーツなどで適度に体を動かすことなども効果的です。

ストレス解消型コーピングによって一時的にストレスを遠ざけられますが、仕事に戻れば状況は改善されていないため再びストレスを感じることになります。こちらも情動焦点型コーピングと同じように他のコーピングとあわせて実行することが大切です。

ストレスコーピングについて詳しくは『ストレス対処法にコーピングが効果的?主な種類や注目される背景・企業ができる導入方法を紹介』も参考にしてください。

ストレスマネジメントを導入する手段

企業がストレスマネジメントを導入するには、セルフケアやラインケアの実施、産業医や外部専門家の活用といった手段が効果的です。そこで、具体的な方法を解説します。

セルフケアを行う

セルフケアとは自身のストレスに意識的に気づき対処するためのスキルです。ストレスへの適切な対応は正しい知識を得ることから始まります。

自分ではストレスに気づかず知らないうちに溜め込んでしまった結果、メンタルに不調をきたすことは珍しくありません。セルフケアではストレッサーを正しく認識し、自身のストレス反応を客観的に評価することでストレスを自己管理することを目指します。

企業は従業員に対し、セルフケアについて周知や意識付けをすることが大切です。社員研修にセルフケア教育を組み込んだり、社内報で定期的にセルフケアを呼びかけたりなどを習慣にしましょう。

ラインケアを行う

ラインケアとは部下を持つ立場の役職が、職場環境を良好に保つために実施するケアのことです。上司が直属の部下に行うメンタルケアともいえます。管理監督者から一般社員までの縦一直線(ライン)の組織体系が語源です。

従業員を取り巻く職場環境は、課長や部長など上司に左右されることが少なくありません。職場全体のメンタルヘルスを維持するためには、まずは上位の役職がストレスについて正しい知識を持つことが大切です。

ラインケアが適切に実施されれば上司は部下のモチベーションを向上させ、パフォーマンスを上げられるでしょう。また、部下にメンタルヘルス不調がある場合でも、早期に発見し、深刻化する前に治療しやすくなります。

ラインケアについて詳しくは『ラインケアとは?従業員のメンタルヘルスを良好に保つために企業がすべきこと』も参考にしてください。

産業医や産業カウンセラーを導入する

産業医や産業カウンセラーの導入によっても、従業員のストレスマネジメントが可能です。産業医は社内に設置するほか、外部に産業医サービスを依頼することができます。

産業医は労働衛生の専門家として企業における従業員の心身の健康を保つサポートをするのが役割です。企業全体のメンタルヘルス指導のほか、従業員への面接や就業判定、職場の巡視、安全配慮義務へのアドバイスや実行などを行います。

なお常時50人以上の従業員がいる事業所では、産業医の選任が義務となっています。従業員が50人に満たない場合では、産業医を設置する義務はありません。しかし、昨今の企業を取り巻くメンタルヘルス不調者の増加により、産業医を活用して従業員のケアを充実させることが、結果的に生産性向上につながることが分かります。自社に産業医を選任していない場合でも、産業医サービスなどを利用することで産業医との連携をはかれます。

産業医について詳しくは、『産業医とは?医療機関で働く医師との違いや企業にもたらす導入メリットを解説』も参考にしてください。

社外の専門家に委ねる

労働衛生の社外専門家として、地域産業保健センターや都道府県産業保健推進センター、中央労働災害防止協会、労災病院勤労者予防医療センターなどがあります。社内専門家だけでは対応が難しい場合、社外専門家を活用するのも一つの手です。

企業や従業員を取り巻く労働環境は複雑化しているため、個人や企業、社内専門家だけでは対処が難しい場合もあります。社外専門家との連携によって、良好な職場環境を整えることがストレスマネジメントの近道となります。

まとめ

ストレスマネジメントは従業員がストレスをコントロールし、メンタルヘルスの維持を目指すものです。企業はストレスマネジメントを導入することで一人ひとりが活き活きと働ける環境を整えられます。従業員のモチベーションが上がることは業績の向上にもつながるでしょう。

企業がストレスマネジメントを実施する方法としてメンタルケアに強い産業医の活用がおすすめです。Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスとして多くの企業に導入されています。まずはお気軽にお問合せください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。