メンタルヘルス・ストレスチェック

ラインケアとは?職場のメンタルヘルス対策の重要性・研修や資格についても徹底解説

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更新日:2023.05.17

ラインケアとは、職場のライン上にいる「管理監督者」が部下の異変に気づき、早い段階で相談に乗ったり職場環境を改善したりする取り組みです。

近年、職場のストレスによってメンタルに不調を抱える人が増え、メンタルヘルス対策の重要性が増してきました。職場でのメンタルヘルス対策のひとつとして、管理監督者である上司が部下の異変に気づくラインケアについて理解しておくことが大切です。

本記事ではラインケアの意味や企業のメリット、実施手順などを解説します。従業員が健康でいきいきと働ける職場環境を整えるためにも、ラインケアの知識を深めていきましょう。

ラインケアとは

ラインケアとは、直属の上司や課長、部長などの管理監督者が部下の異変に素早く気づき、相談に対応したり職場環境の改善に務めたりする取り組みです。

部下の普段の様子を把握している上司が異変に気づくことによって、メンタルヘルスなどの不調が軽いうちに改善できるというメリットがあります。そのためラインケアは、メンタルヘルス対策のひとつとして近年重要視されているわけです。

なおラインケアは、厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に記載されている「4つのケア」のひとつです。4つのケアについては後述するので、そちらもあわせて押さえておきましょう。

“出典:厚生労働省労働者の心の健康の保持増進のための指針」”

ラインケアにおける管理監督者とは

管理監督者は、「労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者」を指します。管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様によって判断されます。

以下の3点が、管理監督者の定義です。

  • ・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること
  • ・現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • ・賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

なお、課長やリーダーといった肩書きがあっても、自らの裁量で行使できる権限が少ない者は、管理監督者とはいえません

ラインケアの目的

ラインケアの目的は、従業員のメンタルヘルスを維持し、働きやすい職場環境を整えることです。

産業医面談やストレスチェックを実施して、従業員のメンタルヘルス維持に努めている企業は多いかもしれません。こういった取り組みも、有用性が高いと言えるでしょう。

しかし、普段から一緒に業務を遂行している管理監督者だからこそ気づける、従業員の不調もあります。また、身近な存在である管理監督者の方が相談しやすいと感じる従業員も少なくありません。

さらに、管理監督者は業務量やシフトの調整、産業医との連携など問題解決に向けた改善策を実施しやすい立場にあります。スムーズに従業員の不調を把握して改善するためには、ラインケアの実施が欠かせません。

ラインケアの必要性

ラインケアは、企業にとって非常に必要性の高い取り組みです。

厚生労働省の調査では、メンタルヘルスの不調で退職、もしくは連続1カ月以上休業した労働者がいる事業場の割合は10.1%にも上ることがわかっています。つまり、事業場が10カ所あった場合、そのうち1カ所以上でメンタルヘルス問題が発生していることになるのです。

従業員がメンタルヘルスの問題で休職や退職すれば、企業は大きな金銭的損害を被ることになります。また、一緒に働く仲間を失うことで、職場の士気が低下したり蓄積してきたノウハウを失ったりする恐れもあるでしょう。

メンタルヘルス問題を放置したままにすると、企業に課された安全配慮義務を怠ったとみなされる可能性もあります。最悪の場合、行政から勧告を受けたり会社名を公表されたりすることも考えられるでしょう。

従業員だけではなく企業を守るためにも、ラインケアでメンタルヘルスの問題を未然に防ぐ必要があります。

“出典:厚生労働省令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」”

厚生労働省が推奨している4つのケア

厚生労働省が推奨している4つのケアには、以下の項目が含まれています。

  • ・セルフケア
  • ・ラインによるケア
  • ・専門的なスタッフによるケア
  • ・事業外資源によるケア

ここでは、ラインケアとともに押さえておきたい各ケアの内容を確認しておきましょう。

1.セルフケア

セルフケアとは、従業員が自らおこなうメンタルヘルス対策です。従業員が職場やプライベートで抱えているストレスに自分で気付き、予防や適切な対策をすることを目的としています。

具体的な取り組みとしては、次の3つが挙げられます。

  • ・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
  • ・ストレスチェックを活用しストレスに気づく
  • ・ストレスの緩和や解決に向けた対処

セルフケアができるように、管理監督者は部下に対して教育研修や情報提供などをおこない、支援する必要があります。

また、管理監督者のメンタルヘルスを良好に保つためにも、セルフケアは非常に重要です。事業者は、管理監督者も含めた従業員全体をセルフケアの対象としましょう。

体調管理と同様に、心の健康を管理することはとても大切です。管理監督者が部下の抱えているストレスに早く気づいて、ストレスへの対処方法を伝えることで、心身の不調が悪化する前にセルフケアをおこなえます。

従業員が抱えるストレスに気づくためには「心身にストレス反応が起こる原因を知ること」そして「従業員の心の健康状態を把握しておくこと」が欠かせません。

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2.ラインによるケア

ラインによるケアとは、上司である事業者や管理監督者などが部下に対しておこなうメンタルヘルス対策です。

具体的な取り組みとしては、次の3つが挙げられます。

  • ・職場環境等の把握と改善
  • ・部下からの相談対応
  • ・職場復帰への支援など

ラインケアでは、管理監督者が部下のいつもと違う様子にいち早く気づくことが大切です。

部下の異変に気づくためには、管理監督者は日頃から部下からの相談に対応する必要があります。部下が上司に相談しやすい雰囲気や環境作りを心がけましょう。

3.事業場内産業スタッフ等によるケア

産業医や、保健師等の事業場内産業スタッフによっておこなわれるメンタルヘルスケアです。

具体的な取り組みとしては、次の4つが挙げられます。

  • ・メンタルヘルスケアの実施に関する具体的な企画立案
  • ・事業場外資源とのネットワークの形成や窓口
  • ・個人の健康情報の取扱い
  • ・職場復帰における支援など

主に産業医や産業保健師等が一般従業員や管理監督者への支援をおこない、セルフケアやラインケアが効率よく実施されるようにサポートします。

なお産業医や産業保健師とは、専門的な立場で従業員の健康管理をおこなう医師および看護師を指します。

事業場内産業スタッフは企業に常駐しているため、職場環境を理解したうえで、専門的視点かつ具体的なケアをおこなえる点がメリットです。

4.事業外資源によるケア

事業外資源によるケアとは、事業場以外の専門家や専門機関が主体となっておこなうケアです。

具体的な取り組みとしては、次の3つが挙げられます。

  • ・情報提供や助言を受けるなどのサービスの活用
  • ・ネットワークの形成
  • ・職場復帰における支援など

事業場が抱えている問題に応じて、専門的なメンタルヘルスケアの知識を有する「事業外資源」を活用するケア方法です。事業場資源とは、医療機関や地域保健機関などの、事業場の外の機関を指します。

職場内で対応が難しい心の状態の場合や、早急に対応が必要な場合には、事業外資源によるケアも検討しましょう。

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ラインケア実施時の手順・方法

※画像出典元:Dr健康経営管理職必見!職場のメンタルヘルス対策「ラインケア」を徹底解説!

実際にラインケアを実施するときは、どのような流れで対応していくことになるのでしょうか。

ここからは、ラインケアの手順を具体的に解説します。

1.普段の会話、相談体制を整える

まずは、普段から部下と会話したり関心をもって接したりすることで、本人の性格や行動、人間関係などを把握しておくことが肝心です。そのうえで、日頃から良好なコミュニケーションを取ることを心がけましょう。

この人なら自分の悩みを打ち明けても大丈夫」と思ってもらえる信頼関係が築ければ、部下が気軽に相談できるようになります。

人に話すことはストレスや不安を軽減させ、気持ちの整理や解決に効果を発揮します。そのため、上司に相談しやすい環境づくりや、健康相談窓口の設置・周知をすることも大切です。

また、テレワークを実施している企業では、「オンライン会議では顔出しする」「上司と部下で定期的な1on1の機会を作る」などのルールを決めておきましょう。こうすることで、お互いの様子を確認できる機会を意識的に作り出せます。

2.部下の「いつもと違う」に気付く

ラインケアで大切なのは、管理監督者が部下の「いつもと違う」様子に早く気付くことです。

「いつもと違う」とは、「部下がそれまでに示してきた行動パターン」からずれた行動を指します。その異変の背景には、メンタル不調が隠れている場合が多い傾向にあります。

いつもと違う行動は、本人では気づけないケースがほとんどです。周りの人が早めに気付いて、報告できる体制を作っておくことが肝心です。

3.声掛け・傾聴

部下の「いつもと違う」様子に気付いたら、まずは本人へ声をかけてあげましょう。その際は聴き役に徹し、相手の考えや感情を受け入れて共感することが大切です。

「いつもと違う」様子がなかったとしても、個別の配慮が必要と思われる部下に対しては、管理監督者から定期的に声をかけるようにします。例えば、長時間労働などにより過労状態にある人や、強度の心理的負荷のある出来事を経験した人には、個別に対応することが望ましいでしょう。

その際、ストレスマネジメントやセルフケアに関する情報を提供したり、必要に応じて産業医や保健師、社内窓口への相談を勧めたりするのもよいでしょう。

部下の話を積極的に聴くことは、本人の心をケアできることに加え、職場環境を改善する効果もあります。

「声掛け・傾聴」のポイントや注意点

従業員に対して「声掛け・傾聴」をおこなうときは、いくつか押さえておきたい注意点があります。

以下に気をつけておきたいポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。

ポイント 具体例
本人の異変について、発言態度や勤怠不良など具体的に客観的な事実をそのまま伝える 【○良い例】
「ここ1カ月間、遅刻や欠勤が〇回に増えているけど、心配事があれば相談して欲しい」
病名を伝えたり、精神科受診や休養を勧めたりすることはなるべく避ける 【×悪い例】
「うつ病なんじゃないの?」「精神科いったら?」
「話を聴きたい」という思いを伝えたうえで、相手の話に耳を傾け、相手の立場にたち共感する(積極的傾聴) 【○良い例】
「どうしてそう考えるのか教えてもらえないかな?」
本人の話が事実と異なっている、間違った判断をしていると感じても、指摘・修正・否定は避ける 【×悪い例】
「君の考えは間違っている、甘い」「要は〇〇と言おうとしているのでしょ?それはもう分ったよ」
自分の経験上や独断によるアドバイス、価値観の押しつけは避ける 【×悪い例】
「私の若いときは〇〇だった」
相手の苦しみを性格や気持ちの問題にすること、無理な励ましをすることは避ける 【×悪い例】
「そんなことは気の持ちようだ」「弱音を吐いてないで、もっと頑張らないと」
【○良い例】
「みんなも協力するから、一緒に考えていきましょう」
相手の考えや気持ちを一般論化し、他の人と比較することは避ける 【×悪い例】
「普通の人はそこまで気にしない」
【○良い例】
「あなたにとっては辛いことで、そんなに悩んでいたんだね」
気分転換に新しいことを勧めるのは避ける 【×悪い例】
「気分転換に旅行でもいってみたら?」「飲みに行って忘れたら?」
静かに落ち着いて会話ができ、プライバシーが保たれる空間で話す 【×悪い例】
オフィスの一角や食堂など

4.医療資源への連携(橋渡し)

部下の話を聴いたあと、管理監督者は改善のために何らかの対応をする必要があります。

大切なのは、「病気かどうか、職場不適応かどうか」を勝手に判断しないことです。管理監督者自身で解決が難しい場合は、産業医や保健師、人事労務担当者に相談し連携を図りましょう。

メンタルヘルスに関する問題は、必ずしも会社だけで解決する必要はありません。働きやすい環境のサポートに向けて、医療機関への橋渡しを早期かつ適切におこなっていくことが大切です。

パターン別に問題解決の事例を記載しておくので、ぜひ参考にしてみてください。

日常業務に支障がなく、仕事への前向きな意欲がある場合

急いで産業医や保健師、医療機関へつなぐ必要はないと思われます。

まずは本人と相談したうえで、職場環境や作業の調整(仕事量、仕事の質、役割など)を検討し、しばらくは経過を見てもよいでしょう。もし異変が続くようならば、その段階で産業医や保健師に相談します。

精神症状、身体症状、行動の異変などがある場合

メンタル不調の可能性があるので、まずは産業医や保健師に相談し、必要に応じて面談を設定しましょう。

面談の結果、医療機関の受診が必要と判断された場合は、本人へ受診を勧めます。受診の結果、休養が必要と診断された場合、休業の手続きをおこないましょう。

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ラインケアで気づくべき部下の変化や不調

ラインケアをおこなうときに重要となるのが、部下の「いつもと違う」様子に気づくことです。

部下の言動の中で特に注意したいポイントとして、以下の10項目が挙げられます。

  • ・遅刻、早退、欠勤が増える
  • ・休みの連絡がこない(無断欠勤がある)
  • ・残業、休日出勤が不釣り合いに増える
  • ・仕事の能率が悪くなる
  • ・思考力・判断力が低下する
  • ・業務の結果がなかなか出てこない
  • ・報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
  • ・表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
  • ・不自然な言動が目立つ
  • ・ミスや事故が目立つ
  • ・服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

このような傾向が見られた場合は、早急に部下のメンタルヘルスに不調がないか確認する必要があります。

また「いつもと違う」様子は、大きく3つのポイントに分けられます。

  • ・心の異変
  • ・体の異変
  • ・行動の異変

各ポイントに現れる特徴的な兆候をまとめたので、こちらも参考にしてみてください。

※画像出典元:Dr健康経営管理職必見!職場のメンタルヘルス対策「ラインケア」を徹底解説!

適切なラインケアのために研修を実施しよう

ラインケアは、導入していきなり適切に運用できるものではありません。効果的なケアを実施するためには、指揮監督者である管理職に向けて研修をおこない、必要な知識を身につけさせる必要があります。

ラインケア研修とは、管理職の方が部下のメンタルをケアする方法を学ぶ研修です。ラインケアの概要や目的、メンタルヘルスの基礎知識、メンタル不調者のサイン、適切な対処法などを学びます。

現在、多くの民間企業がラインケア研修を提供しており、基本的な知識は半日〜1日程度、深い知識は1週間程度で身につけられます。オフラインのみならず、オンラインでも研修を受けられるため、自社の状況に応じて受講することが可能です。

また、厚生労働省では職場のメンタルヘルス研修に活用できるコンテンツが公開されています。無料で利用できるので、こちらを活用して自社で研修をおこなってもよいでしょう。

“出典:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト職場のメンタルヘルス研修ツール」”

ラインケアに関する資格

ラインケアに関する資格として、「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」というものがあります。

この資格は、働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指して、メンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得するためのものです。全国15箇所で実施される「公開試験」のほか「団体特別試験」の2種類の受験方式を選べます。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験には、以下の3種類のコースがあります。

  • ・Ⅰ種(マスターコース)
  • ・Ⅱ種(ラインケアコース)
  • ・Ⅲ種(セルフケアコース)

より適切にラインケアを行いたい場合は、管理監督者に資格を取得させてもいいでしょう。また、管理監督者だけではなく、一般従業員のセルフケアを推進する際にもおすすめの資格です。

ラインケアを効果的に実施するためのポイント

ラインケアを効果的に実施するために企業が意識するべきポイントは、非常に多く存在しています。それぞれについて、詳しく確認しましょう。

気軽に相談できる職場環境を整える

ラインケアでは、不調を感じた従業員が気軽に相談できる職場環境を整えることがとても大切です。第三者からの助言やアドバイスによってヒントを得ることで、早い段階で問題を解決し改善できる可能性があります。

例えば、常に忙しくしている上司に対して、部下は上司に悩みや不安を相談しにくく感じてしまいます。部下が相談しやすい環境を整えるために、上司は「日頃から笑顔で受け答えをする」「問いかけにしっかりとリアクションする」などの行動を心がけましょう。

不調を抱える従業員の早期発見

ラインケアでは、部下や従業員の不調にいち早く気づくことが大切です不調を抱える従業員には、以下のような行動が目立つようになります。

  • ・ミスが目立つ
  • ・遅刻、早退、欠勤が増える
  • ・無断欠勤をする
  • ・業務への支障がでている(判断力などの低下)
  • ・表情が暗く会話が少ない
  • ・服装の乱れや、衣服の清潔感がない

上司は、このような部下の変化を早期発見して、声かけや面談をおこなうなどの対応をしましょう。早急な対応が必要であれば、産業医や産業保健師などへ相談します。

従業員の不調を早期発見するには、普段から部下とのコミュニケーションを取ることが欠かせません。普段の仕事ぶりを観察し、どのような部下なのかを把握しておきましょう。

例えば、「明るく元気に挨拶をする部下の声が小さく表情が暗い」「遅刻したことがない部下の遅刻が目立つ」など、小さな変化があるときは注意が必要です。普段からいつもと違う様子がないかどうか意識して見ることで、異変に早く気づけるようになるでしょう。

休職者の職場復帰のサポートや支援

ラインケアを効果的に実施するには、休職中の従業員が復帰する際のサポートや支援も必要です。職場復帰のサポートや支援は、以下の流れでおこないます。

1.従業員の休職

まずは、休職を必要とする従業員から医師による診断書を提出してもらい、診断書に記載された期間中を休職とします。事業所は休職する従業員に対して傷病手当金制度の説明や、復職する際の手順の説明をおこないましょう。

2.医師による復職可能の判断

休職中の従業員が復帰するには本人の意思に加え、医師により復職可能と判断された診断書を提出してもらいます。

3.職場復帰の可否の判断

休職者がスムーズに職場復帰するために、上司や人事担当者、産業保険スタッフと面談をしたうえで、勤務時間の配慮や必要な環境調整などの情報を確認します。しっかりと話し合い、職場復帰に必要な支援プランを作成します。

4.決定

休職者の状況の安定や医師による判断、企業内での話し合いのもと、職場復帰が可能か最終的な判断をします。

5.職場復帰後のフォロー

職場復帰後は休職した従業員が「休職して迷惑をかけてしまった」といった罪悪感を持たないように配慮する必要があります。職場全体で、休職前と変わらず挨拶をしたりコミュニケーションを取ったりすることを心がけましょう。

企業全体の従業員の健康状況を把握する

人によって健康状態は大きく異なります。ラインケアを効果的に実施するためには、従業員ごとの健康状態を把握しておくことが大切です。

ただし、健康状態はプライバシーに関する情報に該当するため注意が必要です。人によっては、健康状態のなかにデリケートな情報も含まれることもあるかもしれません。

企業はラインケアに必要な健康状態だけを把握し、第三者へ情報が漏れないように配慮しましょう。

管理監督者にもラインケア研修を行う

ラインケアを成功に導くには、管理監督者が適切に部下を見守り、必要に応じて対処する必要があります。

例えば、「心の病は甘えである」「気持ちが弱いから病気になるのだ」など、間違った解釈の押しつけは、従業員の心身の負担を増大させます。間違った指導や対応をしないよう、管理監督者にラインケア研修を行い、正しい知識をつけてもらうことが大切です。

信頼できる産業医を選任する

効果的なラインケアの実施には、産業医の存在も重要です。専門的な知識をもつ産業医は、企業が従業員の健康管理をする際に欠かせません。

信頼できる産業医は企業と従業員の架け橋となり、効果的なラインケアの実施を実現してくれます。知識を備えているだけでなく、従業員の立場で物事を考えられる産業医を選任しましょう。

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ラインケアの実施で企業が得られるメリット

ラインケアの実施は、企業に多くのメリットをもたらしてくれます。ここでは、ラインケアをおこなうことで企業が得られる主なメリットを紹介します。

安全配慮義務を遵守できる

安全配慮義務とは、「従業員が安全で心身ともに健康に働けるように配慮する義務」です。

労働契約法の第5条により、「使用者は労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮すること」が定められています。つまり、職場環境の影響により従業員が心の不調を起こした場合は、企業側が安全配慮義務違反を指摘される恐れがあるのです。

安全配慮義務を遵守するには、あらゆる角度からの取り組みが欠かせません。その一環として、ラインケアをおこなって安全な職場環境を構築することが有効です。

“出典:厚生労働省労働契約法のポイント」”

健康経営を促進できる

ラインケアには、健康経営の促進効果があります。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な課題とし、戦略的かつ計画的におこなう経営方法です。

上司が部下の異変を早期に発見し、適切な対応をするラインケアをおこなえば、部下のメンタルヘルスの不調を未然に防げます。また欠勤率の低下や作業効率のアップ、離職率の低下などを実現することも可能です。

ラインケアは従業員本人のみならず、企業経営にも多くのプラスの影響をもたらしてくれることでしょう。

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従業員のメンタルヘルスを良好に保てる

ラインケアは、従業員の良好なメンタルヘルス維持に効果を発揮します。

従業員の多い企業では、一人ひとりのメンタルヘルスの状態を把握することが難しいケースもあるでしょう。ラインケアを実施すれば、各管理監督者が自分の抱える部下のケアをおこなうため、従業員が多くてもメンタルケアを行き届かせることができます。

まとめ

従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見するためには、ラインケアが欠かせません。上司が部下の異変にいち早く気づき対応して、メンタルヘルスの不調を未然に防ぎましょう。

従業員のメンタルヘルスを良好に保つためには、ラインケアの実施に加えて産業医を導入することがおすすめです。

株式会社Dr.健康経営の産業医コンシェルジュでは、多くの産業医の中から各企業にマッチした専門家を紹介しています。メンタルケアに強い産業医をお探しの際は、産業医コンシェルジュの活用をご検討ください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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