ラインケアとは?従業員のメンタルヘルスを良好に保つために企業がすべきこと

日付2022.02.14
更新日:2022.02.14

近年、職場におけるストレスによってメンタルに不調を抱える人が増え、メンタルヘルス対策が重要視されています。職場でのメンタルヘルス対策の一つとして、管理監督者である上司が部下の異変に気づくことが大切です。上司が部下の異変に気づくためには、ラインケアについて理解しておく必要があります。

本記事ではラインケアとは何か、ラインケアによるメリット、職場環境の整え方などを解説します。企業としてラインケアに関してどのように取り組むべきかの参考にしてください。

ラインケアとは?

ラインケアは、厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に記載されている4つのケアのうちの一つです。厚生労働省による4つのケアの具体的な内容については詳しく後述します。

ラインケアの具体的な内容としては、直属の上司や課長、部長などの管理監督者が部下の異変にすぐに気づき、相談に対応したり職場環境の改善に務めたりすることなどが挙げられます。

それぞれの部下の様子を把握している上司が異変に気づくことによって、精神的不調を軽いうちに改善することが可能です。ラインケアは、近年のメンタルヘルス対策の一つとして重要視されています。

厚生労働省による4つのケアとは?

厚生労働省が推奨している4つのケアは、ラインケアの他にもセルフケアや専門的なスタッフによるケア、事業外資源によるケアなどが定められています。まずは、4つのケアについてそれぞれの内容を確認しましょう。

1.セルフケア

セルフケアとは、従業員が自ら行うメンタルヘルス対策です。従業員が職場やプライベートで抱えているストレスに気がつき、予防や適切な対策をすることを目的としています。

具体的な内容は下記の3つです。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックを活用しストレスに気づく
・ストレスの緩和や解決に向けた対処

セルフケアができるように管理監督者が部下に対して、教育研修や情報提供などを行い支援する必要があります。また、管理監督者にとってもセルフケアはメンタルヘルスを良好に保つためにとても大切です。事業者は、管理監督者も含めた従業員をセルフケアの対象としましょう。

体調管理と同様に心の健康を管理することはとても重要です。管理監督者が部下の抱えているストレスに早めに気づいて、ストレスへの対処方法を身につけ実践することで、心身の不調が悪化する前にセルフケアを行えます。

従業員が抱えるストレスにいち早く気づくためには、心身に対するストレス反応が起こる原因を知ることが大切であり、従業員の心の健康状態を把握しておくことが重要です。

2.ラインによるケア

ラインによるケアとは、前述したように上司である事業者や管理監督者などが部下に対して行うメンタルヘルス対策です。

具体的な内容としては主に下記の3つとなります。
・職場環境等の把握と改善
・部下からの相談対応
・職場復帰への支援など

従業員の異変としては、例えば普段から真面目で遅刻をしたことのない部下の遅刻や欠勤が増えたりミスが目立ったりする、無断欠勤をするという行動などが挙げられます。ラインケアでは管理監督者が、上記のようないつもと様子が違う部下にいち早く気づくことが大切です。

部下の異変にいち早く気づくために、管理監督者は日頃から部下からの相談に対応する必要があります。したがって、部下が上司に相談しやすい雰囲気や環境作りを心がけることが大切です。

3.事業場内産業スタッフ等によるケア

産業医や保健師等の事業場内産業スタッフによって行われるメンタルヘルスケアです。

具体的な内容としては主に、下記の4つとなります。
・メンタルヘルスケアの実施に関する具体的な企画立案
・事業場外資源とのネットワークの形成や窓口
・個人の健康情報の取扱い
・職場復帰における支援など

主に産業医や産業保健師等が一般従業員や管理監督者への支援を行い、セルフケアやラインケアが効率よく実施されるようにサポートします。産業医や産業保健師は医学に関する専門的な立場から、企業で従業員の健康管理などを行う医師および看護師です。

事業場内産業スタッフ等は事業所内に常駐しているため、事業所内のことをある程度把握している状態で専門的視点から具体的なケアを行えます。

4.事業外資源によるケア

事業外資源によるケアとは、事業場以外の専門家や専門機関が主体となって行うケアです。

具体的な内容としては、主に下記の3つとなります。
・情報提供や助言を受けるなどのサービスの活用
・ネットワークの形成
・職場復帰における支援など

事業場が抱えている問題に応じて専門的なメンタルヘルスケアの知識を有する事業外資源を活用するケア方法です。事業場資源とは、医療機関や地域保健機関などの事業場の外の機関を指します。

職場内で対応が難しい心の状態の場合や、早急に対応が必要な場合には、事業外資源によるケアも検討しましょう。クリニックなどに通院中の従業員の許可を得た上で、企業が行うべき対応や従業員への配慮などを相談することが可能です。医療機関や地域保健機関などの助言を受けて、職場環境改善や今後のメンタルヘルスケアへの対応などに活用できます。

ラインケアを効果的に実施するために企業がすべきこと


ラインケアを効果的に実施するためには、相談しやすい職場環境を整える、不調を抱える従業員の早期発見をする、管理職へのラインケア研修を行うなど、企業がすべきことがあります。それぞれについて確認しましょう。

気軽に相談できる職場環境を整える

不調を感じた従業員が気軽に相談できる職場環境を整えることはとても大切です。相談しづらい職場環境の場合、悩みを抱えた従業員のストレスは軽減されずに蓄積されてしまいます。第三者からの助言やアドバイスによってヒントを得られることで、問題を解決し改善できる可能性があります。

例えば、常に忙しくしている上司に対して、部下は上司に悩みや不安を相談できないケースも多いでしょう。部下が相談しやすい環境を整えるために上司は日頃から、笑顔で受け答えをする、話しかけた際にリアクションをしっかりとするといった話しかけやすい雰囲気作りをすることも大切です。

不調を抱える従業員の早期発見

ラインケアでは、部下や従業員の不調にいち早く気づくことが大切です。不調を抱える従業員は以下のような行動が目立ちます。

・ミスが目立つ
・遅刻、早退、欠勤が増える
・無断欠勤をする
・業務への支障がでている(判断力などの低下)
・表情が暗く会話が少ない
・服装の乱れや、衣服の清潔感がない

上記のような部下の変化を早期発見し、声かけや面談を行うなどの対応をしましょう。また、早急な対応が必要であれば産業医や産業保健師などへ相談することも大切です。

従業員の不調を早期発見するには、普段から部下とのコミュニケーションを取ることや、普段の仕事ぶりを観察し、どのような部下なのかを把握しておく必要があります。

例えば、明るく元気に挨拶をする部下の挨拶の声が小さく表情が暗い、遅刻をしたことがない部下の遅刻が目立つなど、普段と違う様子がないかどうか意識しておくことで「いつもと違う」異変に早く気づくことができるでしょう。

休職者の職場復帰のサポートや支援

ラインケアを効果的に実施するには、休職中の従業員が復帰する際のサポートや支援が必要です。職場復帰のサポートや支援は下記のような流れで行います。

1.従業員の休職
休職を必要とする従業員から医師による診断書の提出をしてもらい、診断書に記載された期間中を休職とします。事業所は休職する従業員に対して傷病手当金制度の説明や、復職する際の手順の説明を行います。

2.医師による復職可能の判断
休職中の従業員が復帰するには本人の意思に加え、医師による復職可能と判断された診断書の提出をしてもらいます。

3.職場復帰の可否の判断
休職者がスムーズに職場復帰をするために、上司や人事担当者、産業保険スタッフと面談をした上で、勤務時間の配慮や必要な環境調整などの情報を確認します。しっかりと話し合い、職場復帰に必要な支援プランを作成します。

4.決定
休職者の状況の安定や医師による判断、企業内での話し合いの元、職場復帰が可能か最終的な判断をします。

5.職場復帰後のフォロー
職場復帰後は休職した従業員が「休職して迷惑をかけてしまった」といった罪悪感を持たないように配慮する必要があります。職場全体が、休職前と変わらず挨拶をしたりコミュニケーションを取ったりすることが大切です。

企業全体の従業員の健康状況を把握する

一人ひとりの従業員によって健康状態は異なります。ラインケアを効果的に実施するためには、企業全体の従業員の健康状態を把握しておくことも大切なポイントです。

ただし、健康状態については従業員のプライバシーに触れることになるため、必要な健康状態だけを把握し、第三者へ情報が漏れないように注意する必要があります。健康状態に関しては人によってデリケートな内容も含まれるため注意が必要です。また、企業として個人情報の保護に努める必要があります。

管理監督者にもラインケア研修を行う

管理監督者にはラインケアを行う上で大切な役割があります。上司の立場として正しいラインケアの知識を得るため、管理監督者にもラインケア研修を行うことが大切です。

例えば、「心の病は甘えである」「気持ちが弱いから病気になるのだ」など、間違った解釈の押しつけは、社員のストレスとなり従業員の心身への負担が増します。

従業員に対する間違った指導や対応をしないように管理監督者へのラインケア研修を行い、正しいケア方法を学ぶことが大切です。

管理監督者に対するラインケア研修の講師は、産業医や産業保健師などの企業内の専門スタッフや人事担当者が実施するケースがあります。

信頼できる産業医を選任する

効果的なラインケアの実施には、産業医の存在も重要です。従業員の健康管理を効率的に行うために専門的な目線での判断や知識を有する産業医は、企業や従業員にとって重要な存在になります。

従業員と企業の架け橋となるような信頼できる産業医を選任することで、効果的にラインケアの実施が可能です。信頼できる産業医に必要なことは、産業医の知識を備えているだけでなく、従業員の立場で物事を考えられることです。

従業員が抱えている悩みや不安を相談しやすい産業医であれば、産業医が管理監督者と従業員との間に立って適切な措置を実行できます。ラインケアを効果的に行うためにも信頼できる産業医を選任しましょう。

ラインケアを行うことで企業が得られるメリット

ラインケアを行うと企業にとってどんなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、ラインケアを行うことで企業が得られる主なメリットを紹介します。

安全配慮義務を遵守できる

労働契約法により企業には安全配慮義務が課されています。安全配慮義務とは、従業員が安全で心身ともに健康に働ける配慮をすることです。

労働契約法の第5条により使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮することが定められています。従業員が、職場環境の影響により心の不調などを起こしてしまった場合は、企業側の安全配慮義務違反を指摘される恐れがあります。

安全配慮義務を遵守するには、あらゆる角度からの取り組みが必要ですが、ラインケアによって従業員に直接アプローチすることで安全な職場環境の構築が可能です。

出典:労働契約法のポイント|厚生労働省

健康経営を促進できる

ラインケアを行うことで企業の健康経営の促進につながります。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な課題とし、戦略的かつ計画的に行う経営方法です。

上司が部下の異変を早期に発見し、適切な対応をすることで部下のメンタルヘルスの不調を未然に防いで心身の健康を守ります。

また、役職に関わらず従業員全体が働きやすい職場環境を作り、ラインケアを行うことで、欠勤率の低下、作業効率のアップ、離職率の低下などの健康経営の促進につながるのです。

従業員のメンタルヘルスを良好に保てる

ラインケアを行うことで、従業員の良好なメンタルヘルスを維持することにつながります。例えば、従業員の多い企業など、一人一人のメンタルヘルスの状態を把握することは難しいケースもあるでしょう。

ラインケアを適切に推進することで、管理監督者が従業員の変化に気づき、適切な対処方法を伝えられるため、従業員に対するメンタルヘルスの課題解消が期待できます。従業員がメンタルヘルスを良好に保つことによって、仕事の生産性、離職率の低下、業務効率が上がるなど、企業にとってもさまざまなメリットが得られます。

まとめ

従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見するためには、ラインケアは欠かせません。上司が部下の異変にいち早く気づき対応することで、メンタルヘルスの不調を未然に防げます。

従業員のメンタルヘルスを良好に保つためには産業医の導入がおすすめです。株式会社Dr.健康経営の産業医コンシェルジュは、多くの産業医の中からそれぞれの企業にマッチした産業医を紹介します。メンタルケアに強い産業医をお探しの際は、産業医コンシェルジュの活用をご検討ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。