健康経営・職場改善
【令和4年度】職場環境改善計画助成金とは?受給要件や申請方法・記載例も紹介
職場環境改善計画助成金とは、ストレスチェック集団分析の費用の一部を助成してもらえる制度です。事業所や部署単位のメンタルヘルスケアを強化したいけれどもコストが気になる企業にとってメリットがあります。
本記事では企業担当者に向けて、職場環境改善計画助成金とは何か、活用するメリット、受給要件や申請方法、記入方法などを解説します。基礎知識を知ってスムーズに準備を進めましょう。
目次
職場環境改善計画助成金とは?
職場環境改善計画助成金とは、ストレスチェック集団分析の実施事業主を対象とした助成金制度です。専門家による指導に基づいて職場環境改善計画を作成して職場環境の改善を実施した場合に、負担した指導費用の助成を受けられます。
職場環境改善計画助成金制度の目的は、事業者が自主的におこなう産業保健活動を支援して労働者の健康確保を推進することです。
ストレスチェック集団分析の結果、高ストレスの職場や部署が判明した際、産業医や産業カウンセラー、臨床心理士などから意見を聞き、改善策を実施します。これらの施策を効果的にするためにこの制度が設けられています。
ストレスチェック集団分析について詳しくは『ストレスチェック集団分析とはどんなもの?やり方、目的について解説』を参考にしてください
職場環境改善計画助成金は産業保健関係助成金に含まれる
職場環境改善計画助成金は厚生労働省が整備している「産業保健関係助成金」の1つです。産業保健関係助成金は次のように7種類に分かれています。
種類 | コース | 支援項目 |
事業所における労働者の健康診断助成金 | – | THP指針に基づき健康保持増進計画を作成し、健康保持増進措置を実施する |
副業・兼業労働者の健康診断助成金 | – | 副業・兼業労働者に対して一般健康診断を実施する |
治療と仕事の両立支援助成金 | 環境整備コース | 傷病の特性に応じた治療と仕事を両立するための制度の導入または活用をおこなう |
制度活用コース | ||
ストレスチェック助成金 | – | ストレスチェック等を実施する |
職場環境改善計画助成金 | 事業所コース | ストレスチェックの集団分析の結果を活用し、職場環境の改善をおこなう |
建設現場コース | ||
心の健康づくり計画助成金 | – | 心の健康づくり計画(ストレスチェック実施計画を含む)を作成し、計画に基づきメンタルヘルス対策を実施する |
小規模事業者産業医活動助成金 | 産業医コース | 産業医・保健師と契約し、産業保健活動をおこなう |
保健師コース | ||
直接健康相談環境整備コース |
出典:労働条件等関係助成金のご案内|厚生労働省(参照:2022-06-07)
職場環境改善計画助成金は、厚生労働省が所管する独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する助成金制度です。したがって、申請もJOHASへおこないます。
ストレスチェック助成金については『ストレスチェック助成金とは?対象要件や支給までのステップなどわかりやすく解説』を参考にしてください。
職場環境改善計画助成金には2つのコースがある
職場環境改善計画助成金には、事業場コースと建設現場コースの2種類があります。
2つのコースは業種によって変わりますが、助成内容や目的は以下のように同じです。
【事業場コースの概要】
ストレスチェック実施後の集団分析結果を受けて、事業者が専門家による指導に基づいた職場環境改善計画を作成します。職場環境改善計画に基づいた職場環境の改善を実施した場合、申請することによって事業者が負担した専門家による指導費用の助成を受けられます。
出典:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引
【建設現場コースの概要】
ストレスチェック実施後の集団分析結果を踏まえ、建設業の元方事業者が専門家による指導に基づいた職場環境改善計画を作成します。職場環境改善計画に基づいた職場環境の改善を実施した場合、元方事業者が負担した専門家による指導費用の助成を受けられます。
引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【建設現場コース】の手引
職場環境改善計画助成金の金額
職場環境改善計画助成金の金額は以下のとおりです。
コース | 補助上限 |
事業場コース | 1事業場あたり10万円 |
建設現場コース | 1建設現場あたり10万円 |
どちらも1回だけ助成を受けられます。過去に受給したことがある場合、再受給できません。
費用が10万円未満だった場合には、実費となります。また、助成金は指導実施者に支払った費用のみに適応されるため、その他の費用は申請できません。
職場環境改善計画助成金を受ける主なメリット
ここでは職場環境改善計画助成金を受けるメリットとして、コストカットと休職・離職リスク低下の2つを解説します。
コスト面を気にせず職場環境改善の推進ができる
職場環境改善計画助成金は融資ではないため返済する必要はありません。活用できるのは1回だけですが、最大10万円までは費用を用意する必要がないことになります。
したがって、ストレスチェック集団分析を実施したいもののコスト面で推進できなかった企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
実際、ストレスチェックなど職場環境改善のための施策には、ある程度の費用が必要です。従業員数や依頼先にもよるため、あくまで目安ですが、費用相場を以下に示します。
施策 | 費用目安 |
ストレスチェック集団分析 | 1グループあたり2万5,000円程度 |
ストレスチェック | 1人あたり300~1,500円程度 |
面談指導 | 1人あたり1万5,000円~5万円程度 |
このように、事業所、部署、従業員が増えるほど費用は大きくなるため、助成金を上手に活用したいところです。
従業員の休職や離職リスクを減らせる
職場環境改善計画助成金を受けるには、ストレスチェックを以下のようにフルセットで実施することになります。
・ストレスチェック
・面談指導(高ストレス者かつ本人が希望する場合のみ)
・就業上の措置の実施
・集団分析(個人の結果を職場や部署ごとにまとめて分析)
・職場環境の実施
そのため、結果的に従業員がメンタル不調になり休職や退職するリスクを減らす効果を見込めます。
すでに職場や部署単位でのメンタルヘルスの課題を認識している場合は、助成金を受けることをきっかけに施策をスタートするのもよいでしょう。
例えば集団分析を受けて職場環境の改善を実施した場合、業務負荷の見直しや長時間労働の是正、周囲からの社会的支援の充実などによって、従業員の長期定着につなげられます。
職場環境改善計画助成金の受給要件
ここでは、職場環境改善計画助成金の受給要件を令和4年度版「職場環境改善計画助成金」から抜粋して紹介します。
なお、受給要件は変更される可能性があるため、最新情報は独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)の公式ページをご確認ください。
事業場コース
事業場コースの事業場の要件と取組の要件は以下のとおりです。
【事業場の要件】
1.労働者を雇用している法人・個人事業主
2.労働保険の適用事業場
【取組の要件】
1.ストレスチェック実施後の集団分析を実施
2.専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結
3.集団分析結果と専門家、管理監督者、労働者からの情報を勘案して、職場環境の評価を受け、改善指導を受けている
4.専門家の指導に基づき職場環境改善計画を作成し、すべてまたは一部を実施
5.専門家から職場環境改善を確認されている
引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引
建設現場コース
事業場コースの事業場の要件と取組の要件は以下のとおりです。
【事業場の要件】
1.労災保険の適用事業
2.元方事業者及び関係請負人の労働者数が常時50人以上の建設現場
【取組の要件】
1.ストレスチェック実施後の集団分析を実施
2.専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結
3.集団分析結果と専門家、管理監督者、労働者からの情報を勘案して、職場環境の評価を受け、改善指導を受けている
4.専門家の指導に基づき職場環境改善計画を作成し、すべてまたは一部を実施
5.専門家から職場環境改善を確認されている
引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【建設現場コース】の手引
職場環境改善計画助成金の申請方法と記載例
ここでは職場環境改善計画助成金の申請から受給までの流れと、申請書と報告書の記載例を解説します。
職場環境改善計画助成金の申請から受給までのステップ
職場環境改善計画助成金の申請から受給までは、以下の7ステップに分けられます。
1.ストレスチェックの実施 | ストレスチェックを実施し、従業員への報告をおこなう |
2.ストレスチェック実施後の集団分析 | ストレスチェック実施後に集団分析をおこない集計や分析をする |
3.職場環境改善計画の作成に係る指導契約の締結 | 専門家と指導契約を締結する ※専門家とは、産業医や医師、保健師や看護師、精神保健福祉士や産業カウンセラー、臨床心理士、労働衛生コンサルタント、社会保険労務士などをいう |
4.職場環境改善計画の作成 | 専門家の提案を受けて、企業が職場環境改善計画を作成する |
5.職場環境の改善 | 職場環境改善計画に基づいて、職場環境を改善する |
6.職場環境改善計画助成金支給申請 | JOHASに助成金支給を申請する |
7.助成金支給決定通知の受取、助成金受領 | JOHASから支給決定通知書が届き、助成金が振り込まれる |
画像引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引(参照:2022-06-07)
職場環境改善計画申請書の記載例
ここでは、事業場コースと建設現場コースの記載例を紹介します。
作成の際は、以下の3点に気を付けましょう。
・すべてA4サイズの書面で揃える(ホチキス止めはしない)
・黒のボールペンで記入する(消せるタイプのボールペンは使用しない)
・申請書の控えをコピーしておく
事業場コースと建設現場コースの申請書と、職場環境改善指導実施報告書の記載例をそれぞれ紹介します。申請書は事業者が記入しますが、職場環境改善実施報告書は専門家に記載してもらう報告書です。記載漏れがないように、提出前に確認する必要があります。
【事業場コース】
・申請書の記載例
・報告書記載例
画像引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引(参照:2022-06-07)
【建設現場コース】
・申請書記載例
・報告書記載例
引用:令和4年度版「職場環境改善計画助成金」【建設現場コース】の手引
【令和4年度】職場環境改善計画助成金の申請期間と注意点
ここでは職場環境改善計画助成金の申請期間と、領収書についての注意点を解説します。
【令和4年度】職場環境改善計画助成金の申請期間は?
令和4年度の職場環境改善計画助成金の申請機関は、事業所コース、建設現場コース共通で以下のとおりです。取組時期によって、上半期、下半期に分かれていることに注意してください。
上半期 | 令和4年11月1日から令和5年3月31日まで(消印有効) ※令和4年4月1日から令和4年9月30日までの取組 |
下半期 | 令和5年5月1日から令和5年10月31日まで(消印有効) ※令和4年10月1日から令和5年3月31日までの取組 |
申請書類の様式とチェックリストは、独立行政法人労働者健康安全機構のホームページでダウンロードできます。
ただし、2022年7月現在、産業保健関係助成金全体の申込件数が非常に多くなったことから、実施の可否について検討中です。最新情報は以下のJOHASの公式ページをご確認ください。
今後の見通しは不明ですが、受付再開後はできるだけ早期に申し込んだほうがよいでしょう。
出典:産業保健関係助成金|労働者健康安全機構(JOHAS)(参照:2022-04-07)
申請に必要な領収書は事業場ごとに分けるようにする
職場環境改善計画助成金は、指導実施者(専門家)に支払った費用のみに適用されます。そのため正しい支給申請であることを証明するために、領収書の写しを添付書類として提出する必要があります。ただし、銀行振り込みの明細書は認められていないため注意が必要です。
また、複数の事業所を持つ企業が1つの依頼先に依頼した場合、事業所ごとに領収書をもらわなければなりません。
申請の際は、支給額の上限(10万円)を超えていない場合は、領収書に書いてある実費を記入します。上限を超える場合は10万円と記載してください。
まとめ
職場環境改善計画助成金を申請して条件を満たせば、ストレスチェック集団分析で専門家に支払う費用の助成を受けられます。1回に限り10万円までの助成金を受けられるため、事業所や部署単位の課題を解決したい企業は有効活用できるでしょう。
集団分析を実施する際は、信頼できる専門家に依頼することが大切です。株式会社Dr.健康経営では、メンタルケアに強い産業医サービスを提供しています。基本料金3万円+1人500円で準備・実施・集団分析まで網羅できますので、ぜひご相談ください。
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