メンタルヘルス・ストレスチェック

ストレスチェックは意味ない?労働者の受検率と実施状況・効果を高める方法を解説

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更新日:2023.02.20

ストレスチェックは従業員が感じているストレスを客観的に測れる制度です。50人以上の従業員がいる企業は毎年の実施が義務付けられています。しかし、ストレスチェックをすることに意味があるのかと疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ストレスチェックをする意味や効果を高めるための方法などを解説します。

なお、ストレスチェック制度に関する詳細は『ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説』を参考にしてください。

ストレスチェックが意味ないと思われるのはなぜ?

ストレスチェックを実施しても意味がないと考えてしまう人がいるのはなぜなのでしょうか。まずは、ストレスチェックを実施しても意味がないと思われるよくある理由について解説します。

受検しない労働者がいる

ストレスチェックをしても意味ないと思われているのは、受検しない労働者が一定数いるためです。厚生労働省が2022年3月に実施した『ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて』によれば、ストレスチェック制度が2015年に開始されて以降、事業場の実施割合は増え続けていることが分かります。

ストレスチェック制度を受検した人の割合が80%を超えている事業場は全体の80%を下回っています。しかし、ストレスチェックの受検は労働者に義務付けられていないため、事業者が強制的に受検させることはできません。

ストレスチェック制度は、従業員が自身のストレスに気付くきっかけになり、職場環境などを正確に把握するために必要です。事業者としては受検を促していく必要があります。事業場に対し、ストレスチェック制度によって高ストレスと判定された従業員や問題のある職場環境を改善するための対策を行うことが求められているのです。
厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
画像引用:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(参照:2022-07-13)

医師による面接指導を受けない従業員の割合が高い

高ストレスと判定された従業員は、事業者に申し出れば医師の面接指導を受けられます。しかし、高ストレスと判定された人でも医師の面接指導を希望しない従業員の割合が高い傾向です。

厚生労働省の『ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて』の統計によると、受検者のうち高ストレスと判定された従業員の割合は5~20%を占めていることが分かりました。また、高ストレスと判定されて医師の面接指導を受ける従業員の割合は5%未満でした。

事業場としては、高ストレスと判定された従業員が自らの意思で医師の面接指導を受けるように促すために、面接指導の重要性を周知させることが大切です。また、高ストレスと判定された従業員が医師の面接指導を申し出た際に、上司から不当な扱いを受けないようにするための環境作りも同時に進めていく必要があります。
厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」

画像引用:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(参照:2022-07-13)

職場環境の改善につなげられていない

ストレスチェックが意味ないと思われている理由として、職場環境の改善につながっていないことも挙げられます。ストレスチェックの結果は集団ごとに分析し、職場ごとの課題や問題点を洗い出して改善につなげていく必要があります。

しかし、ストレスチェックを実施するだけで終わっている、集団ごとの分析をしていないなど、受検結果を活かしきれていない事業場も少なくありません。ストレスチェックを実施しても高ストレスと判定された従業員へのメンタルケアが行われず職場環境の改善につながっていない場合、ストレスチェックをしても意味がないと思われてしまう可能性が高いです。

また、ストレスチェックの実施にはコストがかかるため、結果を活用しなければコストも無駄になります。ストレスチェックの実施は従業員のメンタルケアや職場環境の改善に真摯に取り組んでいることを社内外に示すことにもなります。事業場としては、ストレスチェックで得られる効果を全従業員に周知させることが重要です。

本当にストレスチェックは意味ない?

実施方法を正しく理解し、ストレスチェックを実施することでさまざまな効果が期待できます。ここでは、ストレスチェックで得られる具体的な効果を解説します。ストレスチェックは意味ないと考えている方に効果を周知させる際に役立ててください。

本当にストレスチェックは意味ない?
画像引用:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(参照:2022-07-13)

従業員のメンタルヘルスケア意識が上がる

ストレスチェックの実施により、従業員のメンタルヘルスケアに関する意識を向上させることができます。2022年3月に厚生労働省が実施したアンケート調査で公表されたストレスチェックの効果によると、事業者がストレスチェックの効果に挙げているのは従業員のセルフケアに対する関心の高まりや、従業員のメンタルヘルスの重要性を理解した職場風土を作り上げられたことです。

一方、ストレスチェックを受検した労働者の半数以上は、実施によって自身のストレスを日常で意識するようになったと回答しています。企業全体で従業員のメンタルヘルスケアを意識した施策に取り組むためには、従業員がどの程度のストレス状態にあるのかを知る必要があるのです。
出典:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(参照:2022-07-13)

職場環境の改善につながる

ストレスチェックのもう一つの効果は、検査結果を基に職場環境の問題点を洗い出して改善につなげられることです。2022年3月に厚生労働省によって実施されたヒアリング調査の結果によると、ストレスチェック制度を毎年実施するなど継続的に取り組んでいる企業では実施前と比べて、メンタルヘルスの不調を訴える従業員の割合が5分の1に減少したとの回答がありました。

また、メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成につながったと回答した事業者は27.8%です。その他、職場の雰囲気の改善につながったと回答したのは23.3%、長時間労働をする従業員が減少したと回答したのは13.6%でした。以上の回答結果により、継続的なストレスチェックは職場環境の改善につながっていることが分かります。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(参照:2022-07-13)

ストレスチェックを意味あるものにするためには?

ストレスチェックを意味あるものにするためには?
ストレスチェックを実施するだけで終わらず、効果を引き出す意味のあるものにするためには重要なポイントを意識して取り組むことが大切です。そこで、ストレスチェックを意味のあるものにするためのポイントを解説します。

全従業員が受検するように促す

ストレスチェックを意味のあるものにするには、全従業員が受検できるように促すことが大切です。ストレスチェック制度の実施は50人以上の労働者のいる事業場に義務付けられています。事業者は全従業員に強制的に受検させることはできませんが、ストレスチェックの受検を促すことはできるため、受検率が低い事業場は次に挙げる方法を参考にしてください。

まず、全従業員に受検を促すためにストレスチェックの重要性や結果を、どのように活かすことができるのかについて具体的な活用例を、分かりやすく伝える必要があります。

そのために企業としては、ストレスチェックの担当者に全てを任せきりにするのではなく、会社全体でフォローする体制作りが必要です。また、ストレスチェックの結果は本人や担当者のみが確認できること、個人情報が外部に漏れる心配がないことも伝えておくことで従業員は安心して受検できます。

結果を職場環境の改善につなげる

ストレスチェックの結果を職場環境の改善につなげることでストレスチェックを意味のあるものにできます。職場環境の改善はストレスチェック制度の目的の一つです。結果を職場環境の改善につなげるために、高ストレスの従業員個人の結果だけでなく集団分析を行うことも重要です。

集団分析とは、従業員を年齢や性別、職種や部署・部門ごとに分け、集団ごとに職場でのストレス要因を評価する方法です。小規模な事業場は従業員の人数が少ないため個人が特定されないことを前提にした方法で実施する必要があります。

集団分析を行うことで集団ごとのストレス度と職場環境の改善点の把握が可能です。分析後は結果と職場環境の改善に向けた具体的な取り組みの事例を従業員に共有してください。従業員にストレスチェックの結果がどのように活かされているのかが伝われば、今後の受検率を高めることにつながります。

ストレスチェックの集団分析の詳細は『ストレスチェック集団分析とはどんなもの?ストレス判定図の見方や活用方法を解説』を参考にしてください。

メンタルヘルス対策を経営課題の一つにする

生産性低下の原因が職場環境のストレスだった場合、従業員のメンタルヘルス対策は企業の経営課題の一つに掲げられます。

厚生労働省が発行している『これからはじめる職場環境改善』では、職場環境の改善は生産性を向上させる効果があると明言しています。職場環境を改善した生産ラインでは、従業員のパフォーマンスが向上したとする研究結果が報告されました。

メンタルヘルス対策は従業員の健康維持・促進につながるため、従業員一人ひとりが自身の健康を維持することで業務やプロジェクトなどの生産性の向上に好影響を及ぼしてくれるのです。

生産性が向上すれば経営資源を投入するきっかけにつながる可能性もあります。メンタルヘルス対策を実施して生産性を向上させるためにも、職場環境の改善の取り組みを全従業員に周知し、自発的な参加を促すことが大切です。

出典:厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」』(参照:2022-07-13)

ストレスチェックと産業医の連携を大切にする

ストレスチェックを職場環境の改善につなげるには産業医の意見を取り入れることが重要です。ストレスチェックの効果を高められる職場環境に改善するには、ストレスチェックの集団分析結果と産業医の意見を取り入れた改善策の検討が求められます。

メンタルヘルス専門の産業医に意見をもらうことで、メンタルヘルス対策や職場環境の改善策を誤った方向性に導いてしまうリスクを減らせます。ストレスチェックの実施や面接指導に産業医が立ち会うのが理想的ですが、非常勤や他の事業場との兼務などで忙しい場合は引き受けてもらえないことも珍しくありません。

ストレスチェックを意味のあるものにするには産業医の意見も重要なため、連携しやすい体制や仕組みを検討する必要があります。ストレスチェックの実施や面接指導を依頼できる産業医がいない場合は、外部の産業医と連携を取ることでスムーズな職場環境の改善に取り組んでいけます。

ストレスチェックの効果を高められる職場環境づくりを

厚生労働省による調査結果により、ストレスチェックの実施は従業員のメンタルヘルスケアの意識向上や職場環境の改善につながることが分かっています。また、職場環境が改善されると生産性も向上しやすいため、ストレスチェックによる効果は企業に良い影響を及ぼしてくれるでしょう。

ストレスチェックの効果を高めるためには産業医との連携が大切です。株式会社Dr.健康経営の「産業医コンシェルジュ」は、産業医紹介サービスです。はじめての産業医選任もプロ産業医がサポートし、各企業に合ったプランを提案します。産業医をお探しの方はぜひご相談ください。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
「ストレスチェックを初めて実施するので不安…」

そんなお悩みを抱える労務担当者の方はいませんか?
Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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