健康経営・職場改善
健康経営に取り組む企業の最新事例10選!企業ができる施策を紹介
健康経営に取り組む際は他社の成功事例が参考になります。健康経営とは、従業員の健康管理を経営戦略に盛り込み、実践する経営手法のことです。
本記事では、健康経営における企業の取り組み事例について大規模法人部門と中小規模法人部門に分けて紹介します。自社の会社規模に近い法人部門の事例を参考にし、健康経営に役立ててください。
目次
健康経営とは
健康経営は経済産業省の健康長寿社会を実現するための取り組みで、経営的な視点で従業員の健康管理を捉え、実行性のある戦略を立てて実践する経営手法です。企業が従業員の健康を向上させるために投資を行うことで、将来的に経営面への成果が得られると考えられています。
経済産業省が企業に健康経営を推奨する目的は、健康経営に取り組む企業が社会的な評価を得られる環境を整えることです。経済産業省では毎年、健康経営に取り組む優良な企業を健康経営優良法人に認定しています。
健康経営優良法人認定を投資対象や就職先選びの条件にする動きが見られるなど、今後も健康経営への取り組みに関心が高まることが予想されます。
健康経営に関して詳しくは「【2022年】健康経営優良法人の変更点とは?意識するポイントや認定企業の取り組み事例を紹介」を参考にしてください。
【大規模法人部門】健康経営で成功した企業の取り組み事例
健康経営で成功した大規模法人部門の取り組み事例を紹介します。会社規模が大きいほど抱える従業員の数が多いため、徹底した健康管理を行うには工夫が必要です。以下の事例を参考にしてください。
富士フイルムホールディングス株式会社
富士フイルムホールディングス株式会社は、従業員の健康の維持・増進を重要な経営課題とし、次のような取り組みを行っています。
- ・社内のイントラネットに健康経営のポータルサイトを開設する
- ・社内にポスターを掲示して従業員の啓発を図る
- ・全従業員を対象に産業医監修の健康eラーニングを受講させる
- ・人事評価項目に健康増進への取り組みを追加
- ・上司と部下が健康と仕事をテーマにした話し合いの場を設けた
- ・健康保険組合主催のウォーキングイベントを実施
同社は、組織全体で取り組む活動であると全グループに周知し、健康経営の取り組みを加速させることに成功しました。2022年3月には「健康経営銘柄2022」の認定を受け、同社グループ25社が「健康経営優良法人2022」に認定されました。
※出典:【重点課題5】健康経営の推進|富士フイルムホールディングス
オムロン株式会社
オムロン株式会社は、自社での健康経営の取り組みを通して得た知見を積極的に公開しています。主な取り組みは、以下のとおりです。
- ・健康経営の総括責任者を社長とし、健康経営推進委員会を設置
- ・健康保険組合や産業医などと連携を図る
- ・5つの項目「運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、タバコ」を基に、定量目標を掲げている
- ・全従業員が毎日血圧を測って自分の血圧レベルを把握し、生活習慣の見直しと行動変容を促す
オムロン株式会社は6年連続で「健康経営優良法人2022(ホワイト500)」に認定されました。全従業員を対象にした血圧測定推進週間の実施により、測定実施者率100%を達成しています。152名の従業員が高血圧予備軍のリスクに気付くことができました。
※出典:健康経営|オムロンヘルスケアの紹介|オムロンヘルスケア
出光興産株式会社
出光興産株式会社は、全従業員の心と体が健康でいきいきと働ける会社を目指しています。健康経営への取り組みは、次のとおりです。
- ・生活習慣病予防のための望ましい習慣「出光ヘルスアクション」を提案
- ・定期健康診断結果のハイリスク者を対象に、産業保健スタッフによる保健指導を徹底
- ・メンタルヘルスのセルフケアなど、さまざまな状況に対応できるeラーニングを導入
- ・毎月22日を「スワンスワンデー」と定め、就業時間内の禁煙を推奨している
- ・健康保険組合と共同で、禁煙外来でかかった医療費の補助、禁煙への支援を実施
出光興産株式会社は「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人2022 ホワイト500」に認定されています。
※出典:出光グループ健康宣言|従業員の健康推進|出光興産サステナビリティサイト
住友ゴム工業株式会社
住友ゴム工業株式会社は、従業員が安全で働きやすい職場づくりに取り組んでいます。取り組みの一例は以下のとおりです。
- ・時間外労働が月間80時間以上になる従業員に産業医面談を実施し、健康状態を確認
- ・社内イントラネットでセルフケアの情報発信
- ・屋内喫煙所の廃止、就業時間内禁煙、売店でのたばこ販売停止
- ・2019年に禁煙外来治療の自己負担を会社が負担する制度を開始
- ・上長と産業医などが連携して従業員の復職支援を行う
2020年末時点で、主要拠点の屋内喫煙所の全廃を実現しました。2020年度のストレスチェック受検率は、99.8%を達成しています。心身の不調などによる従業員の休業日数も2020年においては前年から15%減少しました。
※出典:健康管理|住友ゴム工業
コニカミノルタジャパン株式会社
コニカミノルタジャパン株式会社は、従業員の健康が事業経営の基盤であるとの認識を基に、以下のような取り組みを行って健康経営を推進しています。
- ・人事部内に健康管理の専属部署を設置
- ・健康保険組合と連携し、従業員が楽しく参加できる多彩な運動イベントを実施
- ・希望者全員に歩数計を初回のみ無料配布
- ・スマートフォン対応の無料アプリや全社の歩数データを連携できるシステムを導入
- ・ICTを活用した遠隔による禁煙支援プログラムや禁煙成功者への補助金制度を導入
- ・快眠のためのフィットネス動画などを配信
- ・新入社員研修時には、外部メーカーとタイアップして朝食欠食対策を実施
ワークエンゲージメントは2020年度26.0%で、前年比1.1%アップしました。また4年連続で「健康経営銘柄」に認定されています。
【中小規模法人部門】健康経営で成功した企業の取り組み事例
中小規模の企業は従業員の人数が少なく、健康経営に取り組みやすいと考える方もいるかもしれません。しかし、従業員の健康管理に投資できる資金は限られているため、大規模法人とは異なる工夫が必要です。中小規模法人の成功事例を紹介します。
ナガオ株式会社
化学工業薬品製造販売業のナガオ株式会社では、次のような取り組みを行い、健康経営を推進しています。
- ・問診・血圧などの測定データの分析結果と個別アドバイスにより、将来の健康状態を予想できるセルフチェックシステムを導入
- ・部署の垣根を超えて参加できるマラソン同好会を結成
- ・従業員の家族も参加できるソフトボール大会を定期的に開催
- ・子どもと一緒に参加できる運動イベントなどを実施
肥満リスクの高い人には食生活のアドバイスなどを提示したことで、従業員の生活習慣病予防への意識が変わりました。従業員の離職率は10年間で0.5%と低い水準を維持しています。同社の理念・働き方に関する姿勢に合致した応募者が集まるようになり、従業員の人数が増えたことも企業成長につながっています。
宇野重工株式会社
橋梁の建設や補修などを担う宇野重工株式会社で実施している健康経営の取り組みは、次のとおりです。
- ・定期健康診断結果を産業医が診断し、治療・精密検査が必要な従業員に対して、衛生管理者が二次検査を受診するよう推奨している
- ・玄関や食堂に血圧測定コーナーを設置
- ・カロリー、栄養素、アレルギー表示のあるお弁当メニューを用意している
- ・40年以上、毎朝ラジオ体操を実施
- ・従業員が役員に相談できる場を設置
- ・希望者は70歳まで働ける特別再雇用制度を創設
日常にない動作を取り入れているラジオ体操を実施することで、作業中の事故防止に役立っています。平成28年度の健康診断の受診率は100%を達成しており、従業員は自身の健康に配慮しながらカロリー表示などを確認してお弁当を選ぶようになりました。
丸善土木株式会社
土木・舗装・造園などの工事を担う丸善土木株式会社では、全国土木建築国民健康保険組合の健康支援室と連携し、以下のような健康経営の取り組みを進めています。
- ・同業種の定期健康診断との比較結果や他社の取り組み事例の共有
- ・全国土木建築国民健康保険組合の健康活動助成金を活用し、運動不足解消のためにバランスボールを購入して全従業員に配布
- ・全国土木建築国民健康保険組合主催のスマートフォン対応のアプリを使用し、合計歩数をグループで競う健康イベント「みんなで歩活」に参加
取り組みの結果、松本市ホームページの健康経営優良法人認定取得企業に掲載され、企業のPRにつながりました。また、従業員間で健康や特定保健指導に関する話題が増えたそうです。
株式会社笠間製本印刷
印刷業の株式会社笠間製本印刷では、次のような健康経営の取り組みを実施しています。
- ・年始に残業時間を含む部署の業績目標を設定し、達成度を部署の管理者の賞与に反映
- ・管理職のパソコンは定刻になると強制的にシャットダウンするシステムを導入
- ・代表取締役また執行役員は健康経営に関する外部セミナーに参加し、テキストなどを社内で回覧
- ・従業員の健康に対する投資額は代表取締役の経費の予算で管理
- ・スポーツジムとの法人契約を結び、従業員に利用を呼びかけている
管理職が定刻で終業するような仕組みを作ったことで、従業員の残業時間が減少しました。中途採用の面接時に応募者から「福利厚生がしっかりしているイメージがある」といわれるなど、同社の取り組みが社外にも浸透していることが分かります。
マツオカ建機 株式会社
建設関連の総合レンタルサービス業のマツオカ建機株式会社は、以下のような取り組みを実施して健康経営を推進しています。
- ・従業員が自由にチャレンジできる健康づくりコース(禁煙、体重・腹囲、万歩計、自転車通勤)を企画実践
- ・チャレンジ達成者の表彰制度を設置
- ・隔年で従業員参加の運動会を開催
- ・生活習慣病予防健診の対象外の従業員(20歳、25歳、30歳)が、血液・心電図・バリウム検査を希望する場合に、検査費用を会社が負担
- ・上記年齢以外の従業員が希望する場合は、血液検査費用のみを会社が負担
主催した運動会には関連企業の従業員や従業員の家族なども参加し、300名以上の規模になりました。マツオカ建機株式会社は関連企業の従業員も巻き込み、社外での取り組みでも成功を収めています。
健康経営のために企業ができる施策
他社の成功事例からも分かるとおり、健康経営への取り組み内容や目的は企業によって個人レベルでできるものから、従業員の家族や社外の関係者を巻き込んだ大規模なものまであります。以下では、健康経営のために企業ができる施策を紹介します。
ストレスチェックの実施
ストレスチェックは労働者のストレス状況を把握し、メンタルヘルスの不調を予防するための制度です。50人以上の従業員が働く事業場に義務付けられており、50人未満の事業場でも努力義務が定められています。
ストレスチェックによって従業員のストレス状況を把握できるようになると、体調不良などの理由で離職・休職する従業員の人数を減らせます。従業員のメンタルヘルスが良好になることで、仕事へのモチベーションの向上も期待できるでしょう。結果的に、企業全体の生産性の向上につながります。
ストレスチェックの詳細は、こちらの記事をご覧ください。
産業医の導入
健康経営への取り組みには産業医との連携が欠かせません。産業医は、事業主が労働者の健康管理や、労働者が安心安全に働ける職場環境を整備する際に、医学的な視点から指導・アドバイスを行う専門家です。なお、事業場規模によっては、産業医の専任が義務付けられている場合があります。
産業医との連携により、ストレスチェックを実施した際に高ストレス者への面接指導などを速やかに行えます。また、定期健康診断で異常の所見がある従業員の就業の可否を判定する際も産業医の意見を参考にできます。
産業医の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
健康経営への取り組みを実践し、多くの成果を上げている企業が増えています。成功事例を参考にしながら自社に合った施策の検討に役立ててください。
株式会社Dr.健康経営の産業医コンシェルジュは、経験豊富なプロ産業医を紹介しているサービスです。従業員の健康管理・休職復職・感染対策などの幅広いサポートに対応できる産業医を探せます。産業医の導入を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。
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