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ハラスメントとは?職場で起こりやすいハラスメントの種類や企業ができる対策を詳しく解説

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更新日:2023.02.21

ハラスメントとは職場における嫌がらせやいじめといった迷惑行為を指します。職場環境を悪化させ、適正な業務の進行を妨げるハラスメントは企業にリスクをもたらすため、防止することが大切です。本記事ではハラスメントについての現状と課題、リスク、どのような種類があるのかを解説します。ハラスメント対策についても紹介しているので、参考にしてください。

ハラスメントとは

ハラスメントとは、発言や行動によって相手を傷つけたり、不快にさせたりすることです。まずは、ハラスメントの現状や課題、ハラスメントが企業に与える主なリスクを解説します。

ハラスメントの現状と課題

近年ではパワハラやセクハラだけでなく、モラハラやマタハラなどハラスメントが多様化しています。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)ではパワハラについて、男女雇用機会均等法ではセクハラについて、育児・介護休業法ではマタハラについて、それぞれ法的な定義を明示しています。

企業や職場におけるハラスメントの件数は増加傾向です。厚生労働省の『令和元年度個別労働紛争制度の施行状況』によると、民事上の個別労働紛争の相談件数において、いじめ・嫌がらせに関するものが8年連続でトップという結果となりました。

※出典:「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します|厚生労働省

職場のハラスメントをなくすためには、企業や従業員がそれぞれ当事者意識を持ち、解決のための施策を進めていくことが求められます。

パワハラ防止法について詳しくは「中小企業も対象になったパワハラ防止法~企業が行うべき措置や有効な対策とは?」を参考にしてください。

ハラスメントが企業に与える主なリスク

職場内のハラスメントによって被害者に精神的な苦痛や疾患が生じた場合、企業に使用者責任が生じる場合があります。使用者責任とは従業員が加害者となって第三者に損害を与えた場合、企業がその従業員と連帯して賠償しなくてはならないという法的な責任のことです。

また、ハラスメントが発生することで職場の雰囲気が悪化し、従業員のメンタルヘルス不調や健康被害が起こり得ます。たとえ企業に法的責任や損害賠償責任が生じなくても、生産性が低下することは事業にとっては大きなリスクとなります。

職場で起こりやすいハラスメントの種類


職場で起こりやすいハラスメントには多くの種類があります。以下でそれぞれ詳しく解説します。

パワーハラスメント(パワハラ)

パワハラとは職場での力関係を悪用したハラスメントのことです。職務上地位の高い人物が適正な業務範囲を超えて、立場が下の人物に対し精神的、肉体的な苦痛を与えたり、いじめや嫌がらせを行ったりすることを指します。

例えば、暴言や脅迫、人間関係からの切り離し、プライバシーの侵害、暴力などがパワハラとみなされます。ハラスメントの対象になりやすいのは、職務上の立場が弱い新人や若手従業員、成果を上げられていない人、上司に対して反抗をしない人です。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクハラとは職場における性的な言動によって、他の従業員に不当な不利益を与えることです。性的な言動とは性的な冗談を浴びせることや、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の噂を流布することなどを指します。

必要なく身体に接触することや、性的な関係を強要することもセクハラに含まれます。例えば、食事やデートに誘い、断られた場合の腹いせとして被害者を不当に配置転換させることもセクハラに該当するケースが多いです。セクハラの対象となりやすいのは女性ですが、女性から男性に対してセクハラが行われる場合もあります。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラハラとは道徳や倫理に反したいやがらせによって相手の就業環境を妨げることです。パワハラに似ていますが、パワハラの定義は職務上有利な立場を悪用してハラスメントを行うことです。

一方、モラハラはパワハラと異なり仕事における優位性は関係しません。モラハラの対象になりやすいのは、自己肯定感が低い人や罪悪感を持ちやすい人、理不尽な要求をされても抵抗できない人などです。

モラハラについて詳しくは「職場で起きるモラハラとは?事例やリスク・予防方法や対処方法を解説」も参考にしてください。

リモートハラスメント(リモハラ)

リモハラとはリモートワーク中に起こるハラスメントのことです。リモートワークの普及とともにリモハラの発生事例も増えています。例としては、業務時間外のメールや電話対応の強要、就業時間内における過度の監視などが挙げられます。

普段からハラスメントを行わないように気をつけている人でも、リモート特有の距離感からコミュニケーションが難しくなり、意図せずリモハラを行ってしまう場合があります。リモハラの対象となりやすいのは、職務上監視される立場となりやすい新人や若手従業員などです。

リモハラについて詳しくは「リモハラ(リモートハラスメント)とは?事例や対策を解説」も参考にしてください。

マタニティハラスメント(マタハラ)

マタハラとは妊娠、出産、育児に関して職場で不当な扱いを行うことです。妊娠している、または出産した従業員を不当に解雇したり、退職を促したりすることはマタハラに当たります。

出産後に復職した際、わざと仕事を与えないことや、育児を理由に時短勤務している従業員に嫌がらせをすることもマタハラといえるでしょう。マタハラは女性に対して行われます。なお、男性に対する同様のハラスメントはパタハラです。次項で解説します。

パタニティハラスメント(パタハラ)

パタハラとは妻の妊娠や出産、育児に関して男性従業員への嫌がらせを行うことです。男性の育児参加が増えるにつれて、パタハラの発生事例も増加しています。

法律上は男性従業員も育児休暇を取得できますが、まだまだ男性の育児参加への理解は浸透していません。パタハラの対象になりやすいのは、育児は女性が行うべきだという固定観念がある職場に勤務する男性従業員です。

時短ハラスメント(ジタハラ)

ジタハラとは労働時間の短縮を強要するハラスメントのことです。長時間労働を是正することは従業員の健康を守るために大切です。

しかし労働時間削減のための有効な策も講じず、定時帰りを強要し残業を禁止にすることは、かえって業務負担を増加させます。ジタハラの対象となりやすいのは中間管理職です。中間管理職は上層部から早く仕事を終わらせるよう指示され、その上部下を定時までに退社させる責任を負っています。

リストラハラスメント(リスハラ)

リスハラとはリストラの対象者に嫌がらせを行い、自主退職を促すハラスメントです。企業がリストラを行うには、さまざまな法的制約があり簡単ではありません。企業は直接リストラすることを避け、従業員を自主退職に追い込もうとする場合があります。

不当に仕事を与えないことや、反対に無理難題を押し付けること、仕事に理由なく低い評価を与えることなどがリスハラとなります。リスハラの対象となりやすいのは給与が高い管理職などです。

ケアハラスメント(ケアハラ)

ケアハラとは介護を行う従業員に対するハラスメントのことです。高齢化社会においては家族に介護が必要な労働者も少なくありません。介護のために休暇を取得したり、時短勤務を行ったりする従業員に対して、不当な降格や部署異動などを行うことはケアハラとなります。

ケアハラの対象になりやすいのは働きながら介護を行っている従業員です。介護をしていると残業ができなかったり、介護を理由に仕事を休まないといけなかったりするため、他の従業員の業務負担を増やしてしまう場合があります。特に家族の世話は女性が行うべきだという固定観念が強い企業では、男性従業員が介護をすることへの理解を受けられずケアハラを受けやすくなります。

ソーシャルハラスメント(ソーハラ)

ソーハラとはFacebookやInstagramといったSNSを通じて行われるハラスメントのことです。SNS上で上司や先輩からコミュニケーションを強要される場合や、プライベートに介入されることをいいます。

SNSに職場の上下関係が持ち込まれると、ストレスとなることが珍しくありません。場合によっては上司や先輩にSNSで友達申請をされるだけで、迷惑に感じることもあるでしょう。ソーハラの対象となりやすいのは職場での立場が比較的弱い新人や若手従業員などです。

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

ジェンハラとは性別的役割分担を強要するような行為のことです。男らしさや女らしさといった固定観念にこだわり、他の従業員の行動や生き方を否定するような言動がジェンハラに該当します。

セクハラにも似ていますが、セクハラは性的な嫌がらせを指し、一方ジェンハラは性別に基づく役割分断意識に基づいた差別だといえます。加害者に悪意やハラスメント意識がないケースが多いことや、男女ともに対象となることもジェンハラの特徴です。

マリッジハラスメント(マリハラ)

マリハラとは結婚に関する言動によって、対象者に不快な気持ちを抱かせるような行為のことです。マリハラは結婚するのが当たり前だという価値観や、既婚者は独身者より優れているといった決めつけから生じます。

独身者に対して結婚しない理由を詮索したり、独身であることをからかったりする言動がマリハラに当たります。以前は女性がマリハラの対象となる場合が多くみられましたが、近年では男性への被害も増加しています。

スモークハラスメント(スモハラ)

スモハラとは喫煙に関するハラスメントのことです。不快な思いをしている従業員がいるにもかかわらず喫煙することや、非喫煙者に対してタバコを吸うよう強制することなどが該当します。

タバコの匂いは喫煙者当人が気づいていなくても周りの従業員にとっては迷惑な場合が少なくありません。スモハラの対象となりやすいのは非喫煙者のうちでも、特に比較的立場の弱い新人や若手従業員などです。

アルコールハラスメント(アルハラ)

アルハラとは飲酒に関連したハラスメントのことです。職場の飲み会などでの飲酒の強要、一気飲みを強いることや意図的に酔いつぶすこと、お酒を飲めない人に対する嫌がらせ行為などがアルハラに含まれます。

アルハラの対象となりやすいのは断るのが苦手な人や空気を読みすぎる人、比較的立場が弱い新人や若手従業員などです。アルハラは急性アルコール中毒を引き起こし、従業員の死亡にもつながることもある危険な行為といえます。

スメルハラスメント(スメハラ)

スメハラとは匂いに関するハラスメントのことです。体臭や口臭、食べ物などの匂いは本人が気づいていなくても、周囲に不快感を与えていることがあります。香水や柔軟剤の匂いがきつすぎる場合でもスメハラとなります。

スメハラは加害者に悪意がなく、指摘されるまでは自覚できない場合が少なくありません。また、匂いの感じ方には個人差があるため、スメハラの認定は難しいという側面もあります。匂いに敏感な人ほどスメハラの被害を受けやすいでしょう。

エイジハラスメント(エイハラ)

エイハラとは年齢や世代に基づいて差別をすることです。若いからという理由で特定の仕事を押し付けたり、反対に能力があるにもかかわらず仕事を任せなかったりする場合や、年齢についてからかうこと、年齢によってひとくくりに扱うことなどがエイハラに該当します。

エイハラは個人の固定概念に基づいて行われ、加害者に悪意がない場合も珍しくありません。また、老若男女に関係なく誰もがエイハラの対象となる可能性があります。

パーソナルハラスメント(パーハラ)

パーハラとは個人的な特徴を対象として行われる嫌がらせのことです。例えば身体的な特徴を中傷することや、異なる考えの人に対して変な人であるというレッテルを貼ることなどを指します。軽い気持ちで発したことでも受け取る側が不快に感じることは珍しくありません。

パーハラの対象になりやすいのは、目につきやすい外見的特徴がある人や個性的な人です。また、嫌なことをされても言い返せない人などもパーハラの被害にあいやすくなります。

企業ができるハラスメント対策


企業ができるハラスメント対策としては、業務目標の設定や労働環境の改善、相談窓口の設置の2つが有効です。それぞれ解説します。

業務目標の設定・労働環境の改善

従業員が精神的、身体的に追い込まれている職場ではハラスメントが発生しやすくなります。業務目標が高すぎて、従業員への過度な負担となっていないかなど、まずは見直すことが大切です。

従業員が快適に働ける環境作りにはいくつかポイントがあります。作業環境を快適に維持するために、空気環境や室温、証明、騒音などに気を配りましょう。従業員の疲労回復のために、休憩室や相談室を設置することも有効です。

相談窓口の設置

人事部が直接ハラスメントの相談窓口を担当している場合、ハラスメントの被害者は相談しづらいと感じることもあります。社内の担当者による相談窓口では、ハラスメント被害の相談がキャリアに悪影響を与え、被所属組織内で広まってしまうのではないかと感じる従業員も少なくありません。企業に産業医がいれば、面談を通じて産業医が従業員からの相談を受けることも可能です。

産業医は企業と従業員との中立の立場からメンタルヘルスの専門家として、ハラスメント被害者のサポートができます。産業医には守秘義務があるため、従業員にとっては安心できる相談先となるでしょう。

まとめ

現在では、一般的に知られているセクハラやパワハラといったハラスメントだけでなく、さまざまなハラスメントが存在します。何気ない言動や行動がハラスメントとなる可能性もあるため、企業は従業員に対し、ハラスメント研修を行ったり、相談窓口を設置するなどの対策が必要です。

また、社会全体を見てもハラスメント発生件数は増加傾向にあるためり、政府は解決のためにさまざまな施策を行っています。ハラスメントをなくすためには企業だけでなく、従業員一人ひとりが法令を遵守し、ハラスメントに対する理解と意識を深めることが重要です。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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