産業医の役割・選任

産業医面談では何を話す?種類別の質問と面談者事前記入シートの記入例【テンプレート付】

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更新日:2023.06.26

産業医面談で何を話すのかを疑問に思い、面談を拒否したり不安を抱いたりする従業員は珍しくありません。

企業が健康経営の一環として産業医面談を実施するときは、「何を話すのか」「個人情報はどのように取り扱われるのか」をしっかりと説明しておくことが肝心です。

本記事では、産業医面談で何を話すのかについて詳しく解説します。

産業医面談で役立つ面談者事前記入シートについても紹介するので、従業員から質問された際に回答できるよう、産業医面談の基本的な知識を身につけておきましょう。

産業医面談では何を話す?

従業員の中には、産業医面談で何を話すのかについて不安を抱く方もいます。企業担当者は、従業員に安心して面談を受けてもらえるように、話す内容についてしっかりと説明してあげることが大切です。

産業医面談で話す内容は、以下の7つです。

    • ・体調
    • ・メンタルヘルス
    • ・生活習慣
    • ・就業
    • ・休職
    • ・復職
    • ・退職

まずは、産業医面談で話す基本的な内容を詳しく解説します。

体調

産業医面談では、体調について必ず聞かれます。

この際、「睡眠時間や食事はしっかりと取れているか」「体でどこか悪いと感じるところはないか」などをメインに質問されます。

産業医が適切な判断を下せるよう、従業員には現在の体調や生活習慣を正直に話してもらいましょう。とくに健康診断で以下のような異常が見つかった方は、体調について細かく聴取されます。

    • ・高血圧
    • ・高血糖
    • ・貧血
    • ・肥満
    • ・肝臓の数値が高い
    • ・心電図異常 など

産業医は上記の疾患を治療することはできませんが、「医療機関を受診すべきか・治療が必要性かどうか」の助言をすることはできます。ほかにも体調で気になる症状がある場合は、面談の際に何でも相談することが可能です。

メンタルヘルス

産業医面談では、メンタルヘルスに関する話もします。職場だけではなくプライベートの精神的な悩みも気軽に相談できますし、上司や同僚との人間関係についても聞いてもらうことが可能です。

また、ストレスチェックで高ストレスだと診断された従業員は、仕事で悩んでいることを詳しく聞かれることになります。

ストレスに感じている内容や期間、生活への支障の有無などを正直に話して、対処法や治療についてアドバイスをもらうことが大切です。

生活習慣

産業医面談では、健康上のリスクを把握するために、生活習慣について詳しく確認されることもあります。

    • ・喫煙や飲酒は増えていないか
    • ・睡眠時間が大幅に増減していないか
    • ・生活リズムは規則正しいかどうか
    • ・運動習慣は適切かどうか

こういった些細な生活習慣や日常の変化に、病気のリスクや症状が隠れている可能性があります。従業員の中には、注意されることを面倒に思って本当のことを話さない方もいるかもしれません。

しかし、産業医面談は「従業員の健康維持サポート」が目的なので、正確な現状を話すことが重要であると理解してもらうことが大切です。

就業

産業医面談では、就業に関することも話します。現在の業務内容や労働時間などを確認し、体調やメンタルヘルスを加味したうえで、どのように問題を改善していくべきなのかを一緒に考えます。

また、面談では労働環境だけではなく、パワハラやセクハラといったハラスメントについても相談可能です。

上司を経由して面談の希望を申告しなければいけない場合は、「健康や睡眠に関する不調」などといった別の理由で申告してもらうとよいでしょう。

休職

体調不良やメンタルヘルスの不調が長引いている従業員に対しては、産業医面談で休職の必要性を検討します。

産業医が面談を通して休養が必要だと判断した場合は、意見書を作成して企業へ提出します。

また休職する従業員には、経済的な不安や人事評価への影響、休んでいる間の補償といったさまざまな不安がつきまとうでしょう。

こういった不安に関しても、企業と産業医が連携して対応していくことが大切です。

復職

休職していた従業員が復職するときも、産業医面談を行います。

ただし復職の際は、主治医が作成した診断書が必要です。本人の医師や産業医面談だけでは復職させることは難しいため、十分に注意しましょう。

復職面談では現在の状態や生活習慣、働くことへの意欲、今感じている不安などをヒアリングします。産業医はこういった話を総合的に評価し、復職可能かどうかを判断します。

復職を急ぐ従業員もいますが、無理に仕事に戻ると再び体調不良に陥ってしまう可能性があるため、慎重な判断が欠かせません。

復職後は不調の再発を防ぐために、企業と産業医、そして主治医が連携を取りながら労働状況や勤務時間、治療状況などを共有します。

企業は定期的にフォローを行い、従業員が無理なく働けるようにサポートしましょう。

退職

産業医面談では、従業員が退職の相談をすることも可能です。

産業医が従業員を引き止めることはありませんが、「問題を解決する方法はないか」「異動や部署異動で改善できないか」を検討するために退職理由を尋ねることはあります。

また、産業医が従業員の退職を勧告することは決してありません。基本的に産業医は、従業員が心地よく仕事を続けるための対処法を検討・提案していくことになります。

【面談の種類別】産業医面談の内容

産業医面談は、次の流れで行われることが一般的です。

    • 1.自己紹介
    • 2.産業医の立場や役割の説明
    • 3.面談の目的の説明
    • 4.面談に至った経緯の説明
    • 5.面談時間の説明
    • 6.個人情報を許可なく会社に共有しないことの説明
    • 7.面談の実施
    • 8.会社への情報共有についての説明
    • 9.今後の方針、次回の面談予定の説明

どのような目的の産業医面談でも、前項で紹介した事項であれば何でも相談することが可能です。

ただし、産業医面談の種類によって重点的に聞かれる質問や面談の流れは異なりますより従業員に安心して産業医面談を受けてもらうためにも、面談の種類別に話す内容や流れについて説明できるとなおよいでしょう。

以下では、面談の種類別に産業医面談の内容を解説します。

長時間労働者面談

長時間労働者面談では、「疲労蓄積度チェックリスト」「心身の健康状況、生活状況の把握のためのチェックリスト」を事前に本人に記入してもらいます。

その内容に沿って、次の内容について詳しく確認します。

    • ・身体状況(高血圧、コレステロール値など、脳心臓疾患に関係する既往歴、喫煙や飲酒、睡眠時間や食事・運動などの生活状況)
    • ・精神状況(落ち込み、不安、焦燥感、意欲低下、希死念慮などの精神症状、また睡眠障害の有無)
    • ・業務状況(業務内容、通勤時間、職場環境や対人関係、周囲のサポート)など

高ストレス者面談

高ストレス者面談では、ストレスチェックの個人結果と事前に記入してもらう「面談者事前記入シート」の内容を参照します。

この場合も、身体状況や精神状況、業務状況の確認を行います。また、就業制限が必要かどうかを検討するために、次の内容について重点的に聴取しましょう。

    • ・睡眠や食事などの生活リズム
    • ・労働時間や月の残業時間
    • ・勤怠状況(遅刻・早退・欠席など)
    • ・精神症状の有無
    • ・職場やプライベートでのストレス要因 など

健康診断後の面談

健康診断後の面談では、健康診断結果と事前に記入してもらう「面談者事前記入シート」の内容を参照しながら、身体状況、精神状況、業務状況の確認を行います。

その後、就業制限が必要かどうかを検討するために、次の項目を参照しながら、症状やリスク因子などを中心に聴取を進めていきます。

      • 身体・体重・腹囲
      • ・聴力・視力
      • ・血圧
      • ・胸部X線
      • ・心電図
      • ・貧血
      • ・糖尿病
      • ・脂質異常
      • ・肝機能 など

メンタル不調者面談

メンタル不調者面談では、次の症状が現れていないかを確認しましょう。

      • ・抗うつ気分
      • ・集中力や思考力、仕事の能率の低下
      • ・倦怠感や気力低下
      • ・罪悪感や希死念慮
      • ・食欲低下
      • ・睡眠障害
      • ・その他の体調不良

希死念慮の症状がある場合は、早急に医療機関を受診させましょう。また、不眠症状は抑うつ状態に移行する可能性が非常に高い傾向にあります。週に2~3回以上、不眠が1カ月継続している」場合は、医療機関を受診するように勧めてください。

これらの症状以外にも、「日常生活や仕事が通常通り行えない状況が約2週間以上続いている」と判断されるときは、早めの受診を勧めましょう。

健康相談

健康相談は、基本的に「健康診断後の面談」と同じ内容になります。健康診断結果なども参照しながら、本人の相談内容に合わせて健康状態について聴取しましょう。

産業医面談では、健康診断や就業と関係のない健康問題について相談することも可能です。些細なことでも気になることがある従業員には、積極的に産業医面談を活用してもらいましょう。

休職・復職面談

休職面談は、基本的には「メンタル不調者面談」と同じ内容の聴取を行います。産業医は医学的な視点から従業員の健康状態や業務遂行能力を確認し、休職が必要かどうかを適正に判断します。

復職面談の主な確認事項は、次のとおりです。

    • ・通院や治療状況
    • ・自覚症状
    • ・生活や睡眠リズム
    • ・家族からの情報(生活状況など)
    • ・業務遂行能力
    • ・就業に関する本人の考え
    • ・休業に至った本人側の原因は見直されているか など

職場で求められる業務遂行能力まで回復していると判断されるときは、従業員本人や企業側と話し合いながら、慎重に職場復帰プランを作成します。

この際、本人や家族が不安や焦りから職場復帰を急ぎ、回復が不十分なまま復職の希望を出していないかをよく確認することが大切です。

産業医面談とは

産業医面談とは、従業員が健康でいきいきと働ける職場環境を整えるために、産業医が行う面談です。

産業医は、単に話を聞いてアドバイスをするだけではなく、企業側に環境改善を勧告する権利も持っています。そのため健康問題のみならず、職場環境や働き方に関するさまざまな問題を相談する場としての有用性が高いのです。

従業員のなかには、産業医面談に対して「何を話すの?」「評価や昇進に影響するの?」など、不安やマイナスのイメージを抱いている方は少なくありません。

そのような従業員にも安心して産業医面談を受けてもらえるように、ここでは企業が従業員に周知したい産業医面談の基礎知識を紹介します。

なお、産業医面談の詳細はこちらの記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

産業医面談とは?目的やメリット、拒否されたときの対処法まで解説

産業医の立場は中立

産業医は会社の味方でもなく、従業員の味方でもありません。中立的かつ医学的な立場から物事を判断し、合理的な意見を述べることが、産業医の仕事であるためです。

産業医は事業主側が選任するため、「産業医は会社の味方」と勘違いをしてしまう従業員は少なくありません。

このような誤解があると、「話の内容が会社に伝わる」「昇進に影響する」などの不安が従業員に生じてしまい、安心して産業医面談を受けさせることは難しくなります。

企業は、産業医の立場や役割をしっかりと周知し、面談者が不利益を被ることはないことを理解してもらうことが大切です。

産業医については、こちらで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

産業医とは?設置基準や仕事内容、報酬相場や探し方を解説

 

産業医面談の種類と対象者

産業医面談には、6つの種類が存在しています。産業医面談の種類と対象者は次のとおりです。

産業医面談の種類 対象者
長時間労働者面談 主に月80時間超の時間外・休日労働があり、疲労の蓄積が認められる従業員
高ストレス者面談 ストレスチェックで高ストレスであると判断され、面談を希望する従業員
健康診断後の面談 健康診断結果に異常があった従業員
メンタル不調者面談 メンタルヘルスに不調を感じている従業員
健康相談 健康に関して相談したいことがある従業員
休職・復職面談 休職、または復職の希望がある従業員

たとえ会社側が「なぜ面談が必要なのか」「面談の目的は何か」を理解していても、面談者である本人は面談の経緯や目的を理解していないケースが多々あります。

「呼ばれたからとりあえず受けにきた」と、産業医面談に対して消極的な姿勢では、面談の成果を得ることはできません面談開始前は、面談者に産業医面談の目的や意義・必要性などを十分に説明しましょう。

「会社指示面談」と「本人希望面談」の違い

産業医面談には、「会社指示面談」と「本人希望面談」の2種類があります。

「会社指示面談」とは、会社によって設定される面談です。一方で「本人希望面談」とは、本人の希望で設定される面談を指します。

それぞれでは面談の設定者が異なりますが、話す内容や面談の流れは同様です。また、どちらの面談を行う場合も、個人情報の取り扱いには注意しなければいけません

面談終了時は毎回、本人へ次のように説明して、情報共有の同意を取得するとよいでしょう。

    • 「この面談の内容は基本的に会社へ報告することになりますが、会社に伝えてほしくないことがあれば遠慮せずにその都度教えてください。その場合は会社へは詳細を伏せて報告します」

「メンタル面談」など、本人がナーバスになる問題に関しては次のように伝え、情報共有の同意を求めるようにしてください。

    • 「この内容は安全配慮の観点から、会社(または特定の上司)に伝えた方がいいと考えられますが、お伝えしてもよろしいでしょうか?」

本人の同意が得られない内容に関しては、基本的には本人の許可なく会社へ共有してはいけません。

しかし、本人または周囲の安全健康が損なわれるリスクが高い場合に限り、本人の同意なしに会社や家族に情報を共有するケースもあります。

産業医面談を受ける義務はない

企業が「会社指示面談」を設定しても、さまざまな理由によって産業医面談に参加しない従業員は一部存在しています。

じつは、従業員に産業医面談を受ける義務はありませんそのため、会社指示面談を受けなくても何ら問題はないのです。

ただし、企業には対象者に対して産業医面談を実施する義務があります。

万が一、産業医面談が必要な従業員が面談を受けずに健康やメンタルヘルスを害してしまった場合、企業が責任を問われるリスクがあるため注意が必要です。

企業が「安全配慮義務」を果たしていると証明するためにも、積極的に産業医面談へ参加してもらうように従業員へ働きかけることが大切です。

産業医面談の「面談者事前記入シート」とは

産業医面談の実施が決まったら、参加者に「面談者事前記入シート」を記入してもらいましょう。面談者事前記入シートを用意しておくことで、スムーズに産業医面談を進められるようになります。

ここからは、企業にぜひ活用してもらいたい面談者事前記入シートの詳細を説明します。

面談者事前記入シートの役割

面談者事前記入シートは、本人の事前情報を産業医に把握してもらい、面談を効率よく進めるための資料です。

面談者事前記入シートであらかじめ情報共有してもらうことで、面談時間を短縮したり、詳しく確認すべき事項を把握したりできるようになります。

なお面談者事前記入シートは、産業医面談者が発生するすべての企業でご活用いただけます。産業医面談にはさまざまな種類がありますが、どの面談に対しても有効です。

とくに訪問時間が限られる嘱託産業医の場合は、短時間で効率よく面談を完了させるために積極的に活用してみてください。

面談者事前記入シートを作成する担当者とタイミング

面談者事前記入シートは、会社からの指示を受けて面談者本人が作成します。この資料に記載される内容は個人情報となるため、取り扱いには十分に注意しましょう。

産業医面談の実施が確定したら、シートを面談実施日までに記入してもらいます。面談当日までに情報共有ができるよう、記入が完了したら担当者が回収し、産業医に共有してください。

なお、面談者事前記入シートの記入は義務ではありません。

「本人の体調がすぐれないため事前記入できない」「記入に同意してもらえない」などの事業があるときは、無理に記入してもらう必要はありません。

面談者事前記入シートに記載する内容

「面談者事前記入シート」に記載してもらう内容は次の6つの項目です。その他、必要に応じて情報を追加してください。

基本情報

基本情報とは、次のような情報を指します。

    • ・名前、年齢、性別など個人情報
    • ・所属、役職、雇用形態などの会社情報
    • ・家庭や家族の内訳などの家庭情報

会社情報は、面談理由に役職や雇用形態が関連している場合があるため、記入してもらいます。家庭情報は、家族のサポートがあるかどうかを把握するために記入してもらいます。

面談に至った経緯

本人が相談したい内容を含め、面談に至った経緯を記入します。

面談の要となる重要な内容が記載される可能性が高いため、産業医面談ではこちらの内容をメインに聴衆を進めていきましょう。

業務状況

業務状況では、次の内容を記入してもらいます。

    • ・業務時間や休日、通勤時間など
    • ・時間外労働、出張、深夜業務
    • ・業務内容、職場の人間関係、仕事の悩み
    • ・職場のサポート

業務状況では、労働時間や業務内容、職場の人間関係による問題がないか、職場でのサポートがどれだけ得られる状況であるかを把握していきます。

こちらの内容は、今後の就労状況や職場環境の改善に活かせる重要な情報となります。

健康状況

面談者の健康状況を知るために、次の内容を記入してもらいます。

    • ・自覚症状
    • 既往歴
    • ・通院、内服について
    • ・健康診断の所見

自覚症状や既往歴、通院などの詳細を記入してもらい、現在の状況を正しく把握します。また、健康診断で指摘項目がないか、その後受診をしているかについてもしっかりと記載してもらいましょう。

生活状況

生活状況で記入してもらうのは、次のような項目です。

    • ・飲酒喫煙
    • ・食事、運動、睡眠状況

この項目により、飲酒喫煙歴や生活リズムを把握します。復職判定や就業制限を実施する際の重要な項目となるため、生活リズムに乱れがある場合は、産業医面談で詳しく聴取してもらいましょう。

精神状況

直近2週間〜1カ月間における抑うつ、興味・喜びの消失、意欲の低下などメンタル面での症状を記入してもらいます。症状がある場合は、症状の頻度や変化について産業医面談で詳しく聴取してもらいます。

面談者事前記入シートのテンプレートと記入例

面談者事前記入シートの記入例は、上記のとおりです。面談者に記入を依頼するときは、記入例も一緒に配布しておくと親切でしょう。

Dr.健康経営では、面談前に確認すべき内容を事前共有するための「面談者事前記入シート」を提供しております。産業医面談を実施する企業は、ぜひお役立てください。

「面談者事前記入シート」

産業医面談の守秘義務

産業医面談を受ける従業員の多くが、「話した内容は上司や会社に共有されるのか」「相談したらどうなるのか」と不安に思っています。

体調やメンタルヘルス、職場環境についての相談はデリケートな内容であり、周囲に知られれば人間関係や今後の働き方に大きく影響する可能性が高いためです。

結論からいいますと、面談で話した内容は上司や会社に知られることはありませんここでは、産業医面談の守秘義務について解説します。

産業医には守秘義務がある

産業医には、以下の2つの義務が課されています。

    • 守秘義務:業務上知り得た情報を守秘する義務
    • 報告義務:従業員に健康上の問題があると知ったときに報告する義務

守秘義務と報告義務は相反する性質を持つように思われますが、原則「守秘義務」が優先されます。

したがって、面談を受けた従業員の個人情報や相談内容が漏れることは決してありません。

ただし、従業員や周囲の方の安全に関わる緊急的な相談があった場合は、企業側に必要最低限の情報のみ共有されることがあることは押さえておきましょう。

産業医面談は1対1で行われる

産業医面談は、必ず従業員と産業医の2人だけで行います上司や同僚などが同席することは一切ありません。

そのため相談者は、体調の不調やハラスメント、職場に対して不満に思っていることなども安心して話せます。

たとえハラスメントなどの相談で上司について話しても、本人にそのまま報告が入ることはありません。

産業医面談を人事評価に影響させてはいけない

産業医面談で従業員の健康を維持・増進することは企業の義務であり、従業員にとっての権利です。そのため面談を受ける従業員に対して、人事評価や労働環境などにおいて不利益な扱いをすることは許されません

もちろん、体調やメンタルヘルスの不調、ハラスメント被害などを理由に退職勧告をすることも禁止されています。

むしろ、面談を受けた方について何らかの報告を受けた場合、企業は残業時間削減や異動など「従業員の利益のために行動すること」が求められます。

産業医面談で何を話すか不安に思う従業員への対処法

産業医は従業員がいきいきと働けるようにサポートするための制度です。

しかし、先述の通り「何を話すのか」「話した内容が評価に影響するのではないか」と不安に思う従業員は、企業が思っている以上に多いものです。

それでは、産業医面談で安心して相談してもらうために、企業はどのように制度を運用すべきなのでしょうか。

ここでは、2つのポイントを紹介します。

制度について十分に説明する

従業員に安心して面談を受けてもらうために、まずは制度についてよく説明することが大切です。

      • 面談を受ける従業員はほかにも多くいる
      • 何を話すのかを企業が知ることはない
      • 面談は人事評価に影響しない
      • 話したくないことを無理に話す必要はない
      • 産業医面談を受けることにデメリットはない

以上のようなことを丁寧に説明し、従業員を守るための制度であることを十分に理解してもらいましょう。

それでも面談を拒否される場合は、外部の相談窓口を紹介することもひとつの手です。

情報共有時は事前了承を徹底する

本来、産業医は面談で知った情報について、必要であれば本人の了承がなくても企業と共有することができます。

これは、従業員の健康を保護するための大切なシステムですが、一方で「何を話すのか筒抜けになってしまう」という不安の種になってしまうことが多々あります。

従業員の不安を取り除く方法としておすすめなのが、必ず本人の了承を得てから情報共有するように産業医へ依頼することです。

そうすることで、「了承していない相談内容が企業に知られることは絶対にない」と相談者に安心してもらえるでしょう。

産業医面談を実施するときの注意点

産業医面談を実施するときは、ヒアリング力・コミュニケーション力のある産業医が面談を担当することが大切です。

産業医面談の終了後は、今後の方針や面談予定をその場で本人と会社へフィードバックすることが望ましいとされています

しかし、必ずしもその場で適切な判断が下せるとは限りません。

そのような場合は一度持ち帰って、人事や他の専門職(社労士・弁護士など)、他の産業医の意見を参考にしたうえで、産業医意見を提出する必要があります。

また、本人の健康状態や悩み、希望、会社や職場の事情などを総合的に考慮し、企業や他の従業員にとっても望ましい形になるよう、連携・調整を行うことが重要です。

産業医は、本人の希望や会社の状況などを総合的に判断したうえで意見を述べなくてはいけないため、高いヒアリング力やコミュニケーション能力が欠かせません。

産業医を選任する際は、しっかりと面談者の話をヒアリングし、最適な答えを出すために面談者・会社双方とコミュニケーションを取れる人材かどうかを見極めることが大切です。

まとめ

産業医への権限と情報提供の強化

産業医面談とは、産業医と従業員が一対一で行う面談のことです。

面談では健康問題や労働環境などについて相談できますが、「何を話すのか」「話すことで不利益が生じるのではないか」と不安を抱く従業員は少なくありません。

大切なのは、「面談で話す内容や話したことが人事評価などに影響することはないこと」を十分に説明して理解してもらうことです。

もしも、自社だけでは従業員の理解を得ることが難しい、適切な産業医面談の運用が難しいという場合は、プロにアドバイスをもらうのも一案です。

Dr.健康経営では、経験豊富なプロの産業医による産業医面談、制度運用のサポートを実施しています。産業医面談の運用において少しでも不安や疑問をお抱えの企業担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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