健康経営・職場改善

【事例あり】健康経営の投資効果を検証!得られる5つの効果とは?

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更新日:2023.02.28

経営的な側面から従業員の健康増進に取り組むこと、またはその考え方を健康経営といいます。近年では健康経営に注目し、実践のための投資をする企業が増えています。

従業員の健康問題は、企業にとって重要な課題です。従業員が健康を損なうことによって、病気による欠勤や退職につながったり、生産性の低下を招いたりなど企業に損失をもたらすことが明らかになっています。
本記事では健康経営に投資する目的や具体例、投資による5つの効果、健康投資管理会計ガイドラインなどについて解説します。あわせて健康経営の具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

健康経営の投資とは

健康投資とは健康経営のための投資をいいます。具体的には従業員の健康保険や健康診断、健康促進のために予算を割いたり、適切な制度を整えたりすることです。社外での支出、社内で発生した費用のどちらでも、健康経営上の課題解決を目的とした出費なら健康投資に含まれます。健康投資の目的や健康投資の具体例について以下で解説します。

健康経営に投資する目的

健康経営では従業員の健康増進を通して生産性を向上させ、企業の成長につなげることを目的としています。健康経営が将来的な収益性を高めるための考え方だとすれば、健康投資とはその考え方に基づく具体的な取り組みであるといえます。

また、健康経営の対象者は従業員だけでなく管理職や経営者も含まれます。健康経営の考えに基づいて健康増進を行うことは、労働生産性や企業イメージの向上、企業の医療費負担の削減などにつながります。したがって、従業員の健康増進にかかる費用はコストではなく、企業の成長のための投資だといえるでしょう。

健康経営に関して詳しくは下記の記事も参考にしてください。
健康経営で得られるメリットとは?求められる背景や成功につなげるポイントを解説

健康投資の具体例

健康投資として企業ができることは、従業員のセルフケアの促進や業務負担の軽減、快適な職場環境の整備などです。具体例としては、メンタルヘルスを扱う研修や講習会を実施すること、ノルマを減らすことや残業・休日出勤を削減することなどが挙げられます。

受動喫煙防止のために喫煙室を設置したり、オフィス内の照明や空調を整備し、適切に保ったりすることも効果的でしょう。また、従業員の満足度調査を測定する方法として組織サーベイを活用することもおすすめです。

健康経営に投資することで得られる5つの効果


健康経営に投資することで得られる5つの効果は、従業員の健康増進、組織の活性化、リクルート効果、離職防止、医療費削減です。それぞれについて解説します。

1.従業員の健康増進・保持

健康経営に投資すれば従業員の心身の不調による疾病や休職者を減らせるでしょう。従業員の健康増進に取り組むことで企業はアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムを改善できます。

アブセンティーイズム(Absenteeism)とは欠勤や遅刻、早退、休職など、職場にいることができず、業務に就けない状態のことです。プレゼンティーイズム(Presenteeism)とは出勤はしているものの、健康上の問題によって業務効率が落ちている状態を指します。アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムはどちらも企業の生産性評価の指標としても使われます。

2.組織全体の活性化

企業が健康経営に投資することで組織全体の活性化が期待できます。従業員のワーク・ライフ・バランスが良好に保たれると、仕事に対する活力やモチベーション、生産性の向上が期待でき、勤務中のパフォーマンスも上がるでしょう。

反対に長時間労働が常態化していると、たとえ勤務時間は長くても業務効率が落ち、生産性が下がってしまうことが考えられます。

3.リクルート効果

現代では働き方の多様化によって、仕事だけでなくプライベートな生活を重視する人が増えています。就職先を探す時に、業務内容や待遇だけでなく柔軟な働き方ができるかどうかを重視する人は少なくありません。

健康経営に基づいた健康投資を実践している企業は、従業員の健康を優先する働きやすい職場だと判断され、求職者が集まりやすいでしょう。新卒採用の際にも多くの就活生から応募が受けられ、優秀な人材を獲得しやすくなります。

4.離職防止

従業員が離職すると企業には労働力不足や組織のモチベーションの低下といった問題が生じ、経済的な損失をもたらします。企業が健康経営を行い、休職者や疾病者が出にくい労働環境を整備することで従業員の離職率の低下につながります。また、体調不良で休職している従業員がいる場合にも、適切な支援ができることで早期の職場復帰が望めるでしょう。

5.医療費の削減

現代では、高齢労働者の増加による企業の医療費負担の増大が問題になりつつあります。今後はますます企業が健康経営に取り組むことや従業員全体の健康に対する意識が求められるでしょう。

健康に気を使う従業員が増えれば社内の疾病率が低下し、病院にかかる従業員の減少につながります。また、通院する従業員や治療を受ける従業員が減少すれば、企業が負担しなくてはならない医療費の削減や適正化が実現できるでしょう。

健康経営の投資効果検証

健康経営の投資効果検証
健康経営の投資効果検証について、健康投資に対するリターン、健康投資に対する企業価値の2つの観点から解説します。

健康投資に対するリターン

企業による「健康投資」に関する情報開示について
※画像引用:企業による「健康投資」に関する情報開示について|経済産業省

経済産業省が発表している上記の資料では、総合医療の製造販売を行うJ&Jが計算した健康経営の投資リターンについて紹介されています。資料によると同社がグループ世界250社、約11万4,000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを試算した結果、健康投資1ドルに対して3ドル分の投資リターンがあったとされています。

同社での健康投資は健康・医療スタッフ・事務スタッフなどの人件費や、保健指導等利用費、システム開発・運用費、診療施設やフィットネスルームの設備費などに投じられました。投資リターンとしては生産性の向上、医療コストの削減、モチベーションの向上、リクルート効果、イメージアップなどがもたらされる結果となりました。

健康投資に対する企業価値

企業による「健康投資」に関する情報開示について_2
※画像引用:企業による「健康投資」に関する情報開示について|経済産業省

同じく経済産業省が発表している上記の資料では、健康投資に積極的な国内企業のインデックス比較(TOPIXとの比較)を発表しています。資料によると健康投資に積極的な企業の株価は、全体に比べて値が高くなっています。健康投資は企業の業績や株価向上に寄与していることがデータから分かります。

本データは厚生労働省「健康寿命を伸ばそうアワード受賞企業」、日本政策投資銀行「健康経営格付融資先企業」における東証一部上場企業のインデックスを、約5年間のTOPIX推移と比較したものです。

健康投資管理会計ガイドラインとは

経済産業省が2020年6月に策定した「健康投資管理会計ガイドライン」について解説します。

概要と目的

健康投資管理会計ガイドラインとは、量的・金銭的指標を用いて活動を行う費用と、その活動によって得られる効果を検証するための、管理会計における内部管理手法を示すものです。

経済産業省によれば「健康経営度調査等のこれまでの取組を踏襲しつつ、企業等が従業員等のために創意工夫し、健康経営をより継続的かつ効率的・効果的に実施するために必要な内部管理手法を示すとともに、取組状況について企業等が外部と対話する際の共通の考え方を提示するもの」とされています。(※)

健康投資管理会計ガイドライン策定の目的は、健康経営やその効果の見える化を促し、国内企業の健康経営実施をさらに促進することです。また、企業が外部と健康経営の取り組み状況について意見交換などをする際に共通認識を形成する役割も担っています。

※出典:「健康投資管理会計ガイドライン」を策定しました|経済産業省

対象企業

健康投資管理会計ガイドラインはすでに健康経営に取り組みPCDAを回して、健康経営の効果分析や評価方法を模索している企業に向けて策定されました。健康経営に関心があるものの、まだ具体的な取り組みを始めていない企業では、ガイドラインの活用が難しいと感じられるかもしれません。

健康経営の実施に取り掛かるなら、可能なことからガイドラインを取り入れていき、適応範囲を少しずつ拡大することが望ましいとされています。小さな施策でも継続して広げていけば、組織全体の健康経営に貢献できる取り組みとなるでしょう。

健康経営の投資|取り組み企業の事例

健康経営の投資について、ローソン、TOTO株式会社、オムロン株式会社、株式会社ベネフィットワン、ロート製薬株式会社​​の5社の取り組み事例を解説します。

ローソン

ローソンでは保険料負担を財務リスクの一つと捉え、従業員やFC加盟店のオーナーの健康意識を高める取り組みを行っています。具体的な施策としては「社員健康増進プログラム」を開始し、従来は従業員に任せていた健康リスクの把握や自主改善を、組織全体でケアする仕組みを作りました。

健康経営の実践の結果、健康診断結果に基づく事業所と連携した健康増進施策が評価され、厚生労働省が表彰する「第二回健康寿命をのばそう!アワード」で、ローソンは「企業部門 厚生労働省健康局長 優良賞」を獲得しています。

※出典:企業による「健康投資」に関する情報開示について|経済産業省

TOTO株式会社

TOTOグループは従業員の健康を重視し、業務上災害・業務上疾病ゼロを目指すとともに、快適な職場環境の形成に努めています。健康管理、メンタルヘルス対策、健康増進(健康づくり)を3本柱とする健康への取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が主催する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に6年連続で認定されました。

具体的な取り組みとしては、従業員の健康リスクを層別し施策を展開するとともに、健康リテラシーの向上に重点的に取り組んでいます。また、セルフケア、ラインケア、産業保健スタッフによるケアといった3つのケアを推進し、あわせてさまざまな健康プログラムを実施しています。

※出典:労働安全衛生|TOTO株式会社

オムロン株式会社

オムロン株式会社では従業員の健康の維持向上を企業の発展にとって欠かせないものと捉え、「健康経営宣言」を制定しました。オムロングループでは健康への取り組みを年度計画に基づいて進め、内容や進捗状況の報告に基づき取締役会が監視・監督を行っています。

また、オムロン株式会社では全社共通の独自指標「Boost5」を定め、その達成に向けた取り組みを実施しています。Boost5とは従業員の集中力向上に欠かせない要素として設定された、運動、睡眠、メンタルヘルス、食事、禁煙の5項目です。Boost5の目標を多く達成している従業員ほど自身のパフォーマンスが高いことを自覚している割合が多い傾向となっています。

※出典:従業員の健康|オムロン株式会社

株式会社ベネフィットワン

株式会社ベネフィットワンでは、社員が心身ともに健康的で情熱をもって挑戦し続けられるためのさまざまな制度を導入しています。具体的な施策は、健康ポータルサイトの運営による健康情報の発信や健康診断の結果管理などです。また、健康ポイントを導入し、生活習慣のチェックやウォーキングを通して楽しく健康増進できるような仕組み作りを行っています。

他にも就業中の全面禁煙や相談窓口の設置、オリジナル有給休暇制度の整備などを実施しています。株式会社ベネフィットワンは「健康経営銘柄 2022」に認定されており、これは「健康経営銘柄2018」より3度目の認定です。

※出典:健康経営への取り組み|株式会社ベネフィット・ワン

ロート製薬株式会社​​

ロート製薬株式会社は健康で活き活きと働ける「健康人財」の多い会社であることを目指しています。健康の土台となる8つの指標として、貧血改善、メタボ脱出、睡眠時間確保、喫煙率、適正飲酒量、早歩き実践、健康年齢維持、適切な運動量を揚げて各従業員の目標達成を推進しています。

ロート製薬株式会社は第1回「健康経営銘柄」、「健康経営優良法人2017(ホワイト500)」、「健康経営優良法人2018(ホワイト500)」に選出され、「健康経営優良法人2021(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されました。

※出典:ロート流 健康経営と働き方|ロート製薬株式会社

まとめ

従業員の健康管理を経営的な視点から捉え、企業の生産性向上につなげる手法を健康経営といいます。企業は健康経営に取り組むことによって従業員の健康を増進し、組織全体を活性化させるとともにリクルート効果や離職防止、医療費の削減といったさまざまなメリットを得られます。

健康経営を実践するなら従業員の身体の健康はもちろんのこと、さらにメンタルヘルス管理を行うことが大切です。

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Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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