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退職者による会社の損失は?退職者を出さないための対策や損害賠償請求について解説

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更新日:2023.02.28

従業員が退職すると労働力が不足するだけでなく、さまざまな損失が会社に発生します。退職者による主な損失は、採用・教育の費用や社会保険料のコスト、技術が失われること、組織のモチベーションやイメージ低下などです。

本記事では退職者によってどのくらいの損失が発生し、退職者を出さないようにするためにはどんな対策が必要なのかについて解説します。また、退職者に対して会社が損害賠償を請求できるのかという疑問にも回答するのでぜひ参考にしてください。

退職者によって会社が損失するコストの目安

退職者によって会社が損失する主なコストは、採用や教育にかかった費用、そして社会保険料です。それぞれの目安について解説します。

採用にかかった費用の損失

従業員が退職すると、採用にかかった金銭的なコストの損失が発生します。また減った分の労働力は、新たに人材を採用しなければならないため、コストを再度かける必要があります。

一般的に採用を行う場合、新卒者なら50万円程度、中途採用者なら100万円程度の外部コストがかかるといわれています。外部コストとは社外で発生する求人広告費用や会社説明会の開催費用、外部研修などの運営費用です。反対に会社内において必要となる費用は内部コストと呼ばれています。

教育にかかった費用の損失

新しく採用した従業員が業務上の戦力となるためには、会社がさまざまな教育機会を提供しなくてはなりません。新入社員を雇った場合は新人研修を行ったり、OJTやメンター制度などに人的コストを割いたりする場合が多く、教育のための費用が発生します。

従業員が退職してしまえば教育費用は投資ではなく損失となってしまうでしょう。例えば、新入社員が入社3年で辞めた場合、500万〜1,000万円ものコストが発生しているといわれています。新入社員は売上を十分に伸ばせないことも珍しくないため、その期間に支払われる給与もコストと見なされます。

社会保険料の損失

社会保険とは健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険といった5つの保険の総称です。従業員一人当たりにかかる健康保険料と厚生年金保険料の支払いは労使折半、つまり従業員が半分、会社が半分となっており、それぞれが負担して納付することになっています。

また、雇用保険料は会社負担が従業員負担より多く、労災保険料は会社が全額負担する仕組みです。従業員が退職してしまえば、それまでに会社が支払った社会保険料の損失が発生します。

費用以外にも退職者によって会社の損失がある

費用以外にも退職者によって会社の損失がある
従業員が退職した場合に生じる費用以外の損失は、スキルや知識の損失、会社内のモチベーションの減退、会社イメージの低下などです。それぞれ解説します。

スキル・知識の損失

従業員の退職によって会社にはスキルや知識の損失が発生します。とくに中堅社員が退職する場合、それまでに培われた技術や蓄積されたノウハウが失われるため会社にとって大きな損失です。

また、指導に長けた従業員が離職することで人材育成に支障をきたす可能性もあります。その他にも特定の従業員の営業や接客に固定客がついていた場合、当該従業員の退職によって客離れが起きることもあるでしょう。

会社内のモチベーションの損失

従業員が退職すると残った従業員の意欲が失われ、会社内のモチベーションの損失につながる可能性があります。従業員の意欲が低い状態では退職が連鎖することも懸念されます。

退職によって人員が少なくなると残った従業員の業務負担が増加し、過重労働によって業務効率が下がったり、従業員が体調を崩したりするかもしれません。退職者が出ることによってモチベーションの低下が起これば、会社全体の生産性が落ちてしまい大きな損失になるでしょう。

会社のイメージの損失

退職者が多い場合、会社に何らかの問題があると思われ周囲からの評価が低下する可能性があります。また、従業員の退職理由が職場環境や待遇に問題がある場合、過重労働させる会社と判断されてしまうかもしれません。

求人サイトによっては、会社の直近3年間における新卒者の離職率を公表しているケースがあります。離職率が高い会社は一般的に応募者が集まりにくい傾向です。

また、近年では会社の評価において、インターネットの口コミが重視される傾向があります。

退職者を出さないための対策

退職者を出さないための対策
退職者を出さないための対策は、採用段階でミスマッチを防ぐ、適切な業務量を設定する、従業員の声を職場改善につなげることなどです。それぞれ解説します。

採用段階で応募者とのミスマッチを防ぐ

退職者を出さないためには入社後のミスマッチを防ぐ必要があります。採用の段階で働き方や業務内容、待遇面などの情報をできる限り明確に示し、応募者との認識のズレが生じないように心がけましょう。

早期離職(新入社員の3年以内の離職)の原因としてよく挙げられるものは、仕事へのやりがいや成長が感じられないこと、待遇が整っていないことなどです。実情を知らせないまま採用を行うと、入社後に不満を感じた従業員が早期離職する可能性が高まります。

適切な業務量を振り分ける

希望する業務量と実情に大きな差があると、従業員が退職を検討しやすくなります。業務量が多すぎる場合は残業や休日出勤の必要が生じ、仕事に対して大きなストレスを感じるでしょう。長時間労働は体調不良を引き起こす主要な要因の一つとなっており、離職の原因となる可能性があります。

反対に業務量が少なすぎる場合、従業員は自分自身が会社にとって必要ないと感じてしまい退職を決意することも少なくありません。退職者を出さないためには、業務量を適切に設定することが大切です。

従業員の声を聞き職場改善につなげる

従業員の退職を防ぐためには快適な労働環境を整える必要があります。職場改善では上層部が主体となるのではなく実際に現場で働いている従業員の声に耳を傾け、施策決定につなげることが大切です。

また、会社内でヒアリングを行っていても、寄せられた意見が職場改善に反映されなければ従業員からの信頼は失われてしまうでしょう。上層部は従業員の声を真摯に受け止め、可能な限り採用するとともに改善が難しい課題に対してはきちんと説明をすることが求められます。

会社内でコミュニケーションがとりやすい環境を作る

退職者が多い職場ではコミュニケーションが不足している場合があります。コミュニケーションが少ないと人間関係に問題が生じやすく、従業員が退職しやすくなるでしょう。

コミュニケーションをとりやすい環境を作ることができれば、職場での人間関係を円滑にすることができます。また、コミュニケーションが活性化すれば業務効率化や生産性向上につながり、意欲を持って働ける労働環境となるでしょう。活発なコミュニケーションによって従業員の満足度やモチベーション、エンゲージメントが高まり長く活き活きと働けます。

従業員のメンタルヘルス対策をする

メンタルヘルスの不調によって働けなくなり退職を決める従業員は少なくありません。退職者を出さないためにも会社は従業員のメンタルヘルスを管理する必要があります。メンタルヘルス増進のためにできる主な施策は、ストレスマネジメント研修といった従業員教育、産業医との連携による健康管理、ストレスチェックの活用などです。

ストレスチェックとは労働者のストレス度合いを検査するための質問回答式のテストです。常時50人以上の従業員を使用する事業場では、年に1度のストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックによって高ストレス状態の従業員を把握できれば、メンタルヘルス対策に役立てられるでしょう。

ストレスチェックに関して詳しくは下記の記事も参考にしてください。
ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説

退職者に対して会社が損害賠償請求できる?

従業員の突然の退職によって会社が損害を受け、退職者に対して損害賠償を請求したいと感じるケースもあるかもしれません。退職者に対して損害賠償請求が認められるポイントは以下のとおりです。

  • ・従業員が起こしたトラブルで会社が損害を被り、そのまま従業員が退職した場合
  • ・従業員が無断欠勤し退職した場合
  • ・入社後すぐに従業員が退職し、会社に損害が発生した場合
  • ・研修や留学後すぐに従業員が退職し、会社が多額の費用を負担していた場合
  • ・従業員が退職時に他の従業員の引き抜きや転職の勧誘をした場合
  • ・有期雇用期間内に従業員が一方的に退職した場合

上記に該当しない場合、基本的に損害賠償請求は難しいと考えられます。

まとめ

退職者が出ると会社には経済的コストだけでなく、スキルやモチベーションの損失、イメージの低下といったさまざまな不利益が生じます。退職者を出さないためには採用時のミスマッチ対策や働きやすい職場の整備が必要といえます。従業員が長く快適に働ける環境作りのために産業医を活用するのも一つの方法です。

Dr.健康経営はメンタルケアに強い産業医サービスとして経験豊富なプロ産業医の紹介を行っています。産業医は労働衛生の専門家としての立場から、会社への職場改善指導、助言などを請け負います。産業医サービスを検討する場合はお気軽にご相談ください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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