産業保健・健康管理

衛生管理者を選任しなかった場合に罰則規定はある?罰則例も解説

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更新日:2023.07.11

従業員が50人以上の企業には、衛生管理者を選任しなくてはいけません。しかし「衛生管理者が辞めてしまって、後任がいない」「衛生管理者を選任しないと罰則がある?」など、悩んでいる担当者の人も多いのではないでしょうか。

衛生管理者の免許を持つ従業員が退職や異動したことで、その役割を担う立場の人がいなくなってしまった場合、不在のままにしてしまうと罰則を受ける可能性があります。

この記事では、衛生管理者を選任する人数や、選任者を置く根拠となる法律衛生管理者の責務や役割不在による罰則を紹介します。

衛生管理者の選任方法

事業所は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、衛生管理者を選任しなくてはなりません。衛生管理者を選任する必要が生じてから、14日以内に選任して労働基準監督署へ届け出る必要があります。

また、選任する衛生管理者の人数は、事業場の規模に応じて異なります。まずは、衛生管理者を選任する人数や資格取得の要件についてみていきましょう。

選任する人数の規定

事業所が選任しなければならない衛生管理者の人数は、以下のとおりです。

事業場の労働者数 衛生管理者の選任数
50人以上〜200人以下 1人以上
200人超〜500人以下 2人以上
500人超〜1,000人以下 3人以上
1,000人超〜2,000人以下 4人以上
2,000人超〜3,000人以下 5人以上
3,000人超 6人以上

“参考:厚生労働省「衛生管理者について教えてください。」”

衛生管理者を2人以上選任する場合、衛生管理者のなかに労働衛生コンサルタントがいるときは、労働衛生コンサルタントのうち1人は専属でなくても問題ありません。

また、以下に当てはまるケースでは、衛生管理者のうち少なくとも1人を専属とする必要があります。

  • 常時1,000人を超える労働者を使用する事業場
  • 常時500人を超える労働者を使用し、かつ法定の有害業務に常時30人以上の労働者を従事させている事業場

資格取得の要件

衛生管理者の免許には、第一種と第二種の2種類があります。業種によって第一種衛生管理者免許を持つ衛生管理者が必要な場合がありますので、以下の表にまとめました。

業種 必要な免許の種類
農林水産業、鉱業、建設業、製造業(加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、整備業、機械業、医療業、清掃業 第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、厚生労働大臣の定める者
上記以外のすべての業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、厚生労働大臣の定める者

つまり、第二種衛生管理者免許を持つ者は、指定の業種で衛生管理者として選任することはできません。

衛生管理者選任の根拠となる法律

衛生管理者を選任する根拠となる法律は、労働安全衛生法第12条です。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

“引用:労働安全衛生法第12条

上記の法令により、企業は必要に応じた人数の衛生管理者を選任する必要があります。衛生管理者の選任は事業場ごとであり、企業規模に応じた人数ではない点に注意しましょう。

衛生管理者の責務

厚生労働省によると、衛生管理者は以下のうち、衛生に関する技術的事項の管理を行う責務があります。

  • 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
  • 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
  • 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
  • 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること

また、少なくとも毎週1回は作業場を巡視し、設備や作業方法、衛生状態に有害の恐れがあるときは、直ちに必要な措置をとる必要があります。衛生管理者は、労働者の健康障害を防止するための責務を負います。

衛生管理者の役割

衛生管理者の役割は、主に以下の6つの業務です。

  1. 健康に異常がある労働者の発見と処置
  2. 作業場の衛生状態の調査と環境改善
  3. 救急用具などの点検・整備
  4. 衛生日誌の記載など職務上の記録の整備
  5. 業務が原因の負傷や疾病、死亡、欠勤などに関する統計作成
  6. 労働者への衛生教育や健康相談

では、それぞれの業務を詳しくみていきましょう。

健康に異常がある労働者の発見と処置

前述のとおり、衛生管理者は労働者の健康障害に関する責務を担っています。

本来、健康障害が起きないようにするのが衛生管理者ですが、万一労働者の健康に異常が生じてしまった場合は、その発見と処置を行います。

たとえば、業務中に体調不良を訴える労働者がいた場合、早退させたり休憩を取らせたりするのが衛生管理者の役割です。緊急事態の場合は、迅速に救急車を呼んだり病院へ連れて行ったりする必要もあります。

作業場の衛生状態の調査と環境改善

労働者が作業を行う作業場の衛生環境がよくないと、労働者の健康は守れません。そのため、衛生管理者は作業場の衛生状態を調査し、必要があれば環境を改善する役割があります。

たとえば、作業場の気温や湿度、照明の明るさが適切か、必要に応じてヘルメットや手袋を装着しているかを調査します。

トイレや休憩室が清潔に保たれ、労働者が使いやすい状態になっているかなど、作業をする場所以外の環境調査も大切です。

救急用具などの点検・整備

先に紹介した衛生管理者の役割で、健康に異常がある労働者の発見と処置を実行すると説明しました。処置の実行には、救急用具が準備されている必要があります。

救急箱やAEDが必要なときにすぐ使える状態にあるか災害時の避難経路は確保されているかといった点検も衛生管理者が行います。

衛生日誌の記載など職務上の記録の整備

衛生日誌とは、労働者の健康や安全状態に関わる出来事を記録するものです。作業中の急病人や事故の有無、健康診断の受診状況などを記載します。

上記を記録することで、作業場の課題や問題点を洗い出すことができ、環境改善へとつながります。

業務が原因の負傷や疾病、死亡、欠勤などに関する統計作成

衛生管理者は、業務が原因の負傷や疾病、死亡、欠勤に関する統計作成も行います。統計を作成することで、いつどのような事故や疾病が発生したのかを客観的に把握できるようになります。

万一、重大な問題が発生した場合も、あとから統計を見直すことで原因を突き止められるかもしれません。

労働者への衛生教育や健康相談

労働者への衛生教育や健康相談も、衛生管理者の大切な役割です。健康維持の大切さを労働者に知ってもらうことで、重大な疾病の発生や症状の悪化を防げるでしょう。

健康診断の受診を勧めたり、産業医との面談をセッティングしたりと専門家へつなぐ役割も果たします。業務中だけでなく、休職中のサポートを行うのも衛生管理者です。

衛生管理者とは?役割や業務内容・資格取得のメリットをわかりやすく解説

衛生管理者を選任しなかった場合の罰則

労働安全法第12条により、衛生管理者の未選任には50万円以下の罰金が科せられることがあります。

万一、後任の衛生管理者が見つからず選任できない場合は、以下の手順で代理人を立てることで対応できます。

  1. 1:所轄の都道府県労働局長へ申請する
  2. 2:代理人を定める

次の衛生管理者の選任まで時間がかかると予想されるときは、所轄の都道府県労働局長に所定の申請を行うことで、一定期間の選任が免除されます。ただし、やむを得ない事情があり代理人を立てられる場合に限られます。

衛生管理者の代理人は、必ずしも免許を持っている人である必要はありません。衛生管理者の業務を補佐していた人、あるいは衛生委員会のメンバーなど保健衛生業務に従事している人が免除期間中の代理人になれます。

ただし、派遣社員などその事業場の専属者でない人は、原則的に衛生管理者の代理人になれません。「原則的」というのは、危険業務がない業種では、派遣社員でも代理人として認められる可能性があります。

衛生管理者不在による罰則例

最後に、衛生管理者不在や衛生委員会の未設置による罰則例を紹介します。

前任の衛生管理者が退職後に未選任だった場合

前任の衛生管理者が退職したにもかかわらず、その後新しく衛生管理者を選任しなかったケースでは、労働基準監督署による是正勧告を受けます。

是正勧告を受けたにもかかわらず、それを無視した場合は労働安全法第12条違反により、50万円以下の罰金が科せられます。悪質だと認められると、経営者が逮捕・起訴される可能性もあることに注意しましょう。

繰り返しになりますが、新しい衛生管理者が見つからない場合は労働安全局長への申請により、一定期間は選任が免除されます。後任が見つからないときは、直ちに所轄の都道府県労働安全局長へ申請しましょう。

衛生委員会自体を設置しない場合

衛生委員会自体を設置しなかった場合も、50万円以下の罰金が科せられます。衛生委員会とは、常時50人以上の労働者が在籍する事業者に義務付けられている委員会です。労働安全衛生法第18条に、その根拠が記載されています。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

“引用:労働安全衛生法第18条

衛生委員会の設置条件は、衛生管理者の選任条件と似ています。スタートアップの企業が成長して条件が適用されるようになった場合は、衛生管理者だけでなく衛生委員会の設置が必要だと認識しておきましょう。

まとめ

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者の選任が必要です。前任者が退職や死亡により離職した場合は、原則14日以内に新しい衛生管理者を選任しなくてはなりません。

万一、後任者が見つからない場合は、所轄の都道府県労働局長へ申請することで、一定期間の選任免除を受けられます。衛生管理者を未選任のままにしておくと、労働基準監督署に是正勧告を受ける可能性が高まります。

労働安全法第12条違反により50万円以下の罰金に科せられるだけでなく、経営者が起訴されてしまう可能性もあることに注意が必要です。50人以上の労働者を使用する場合、事業場の規模に応じた人数の衛生管理者を選任しましょう。

また、従業員が50名を超えた場合に必要な手続きは衛生管理者の選任以外にも複数あり、それぞれに罰則があります。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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