衛生管理者の選任義務とは?役割や業務内容・配置することのメリットを解説

日付2021.11.20
更新日:2022.02.28

衛生管理者という言葉は知っていても、企業においてどのような役割を担うのかよくわかっていない方もいるでしょう。この記事では、衛生管理者について知りたい方に向けて、衛生管理者とは何なのか、衛生管理者の選任義務や役割、業務内容などを詳しく解説します。

併せて、衛生管理者になる方法も紹介するので、衛生管理者を配置しようと思っている担当者や衛生管理者試験を受験しようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

衛生管理者とは?

そもそも衛生管理者とは何なのでしょうか。衛生管理者は国家資格の1つで、社員の健康・労働災害を防止するという目的があります。衛生管理者とは、企業が社員の健康に配慮し、健康を守りながら経営するために必要な存在だといえるでしょう。

衛生管理者の役割

衛生管理者には、職場の安全衛生業務従事者という役目があります。労働安全衛生法に基づき、職場全体の衛生管理を行います。具体的には、業務に携わることで起こりえる疾病を防止するための作業環境管理や社員の健康管理、衛生的な職場環境の構築などが挙げられます。

また、労働衛生教育の実施なども衛生管理者の役割です。衛生管理者は、労働安全衛生法で規定されている、労働環境の衛生的な改善や疾病の予防・処置、労働条件の改善などを担当する、労働衛生の専門家といえるでしょう。

職場の衛生全般を管理する管理者として作業場などを巡視し、問題がある場合には速やかに必要な措置を講じます。また、衛生委員会が設置される場合には、委員会の構成メンバーとして衛生管理者が選出されます。

衛生管理者を選任する義務

衛生管理者はすべての企業で選任しなければいけないわけではありません。衛生管理者を選任する義務がある企業は、常時50人以上の労働者を雇用している事業者となっています。職種や雇用形態を問わないため、正社員以外が多数を占めている、労働者の多くが社外に派遣されているといった場合でも、事業場専属の衛生管理者を選任する義務が生じます。

事業場の規模によって選任しなければいけない衛生管理者の人数は変わってくるため、自社の規模に応じた人数を選任しましょう。また、2人以上の衛生管理者を選任する際、衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいる場合には、労働衛生コンサルタントのうち1人は専属でなくても問題ないと定められています。

事業規模ごとの衛生管理者の選任数は以下の表のとおりです。

事業場規模(労働者数) 衛生管理者選定数
50人以上~200人以下 1人以上
200人超~500人以下 2人以上
500人超~1,000人以下 3人以上
1,000人超~2,000人以下 4人以上
2,000人超~3,000人以下 5人以上
3,000人超 6人以上

衛生管理者の業務とは?

衛生管理者は実際にどのような業務を行うのでしょうか。衛生管理者の主な業務は3つあります。健康診断の実施や結果の管理・職場環境の整備・定期的な衛生教育の3つです。以下ではそれぞれの業務内容を詳しく解説します。

健康診断の実施や結果の管理

衛生管理者の大きな役割として、労働者の健康と命を守ることが挙げられます。具体的な業務内容としては、健康診断を実施してその結果を管理することです。健康診断の結果、労働者に共通の疾病などが見つかった場合には、職場環境が悪化していると考えられるため、早急に対策を打ち改善することが求められます。

最近では、職場環境悪化による疾病は減少傾向にありますが、ストレスによる問題が増加しています。長時間労働によりストレスが過度にかかってしまい、体調を壊すケースが多いようです。

そのため、ストレスにさらされている労働者からの相談を受けたり、企業に配置されている産業医とのパイプ役になったりすることも、衛生管理者の重要な業務になります。

労働者が健康的に労働できるように職場環境を整える

衛生管理者は、労働者が健康的な状態で働けるように職場の環境を整えることが重要です。そのため、職場の状況をチェックする業務は欠かせません。少なくとも週に1回は作業場などの労働者が働いている環境を巡視する必要があります。

その際に、設備に問題はないか、作業方法や衛生状態に問題はないかを確認します。たとえば、作業場の明るさや騒音、温度などにより、作業場の衛生環境は大きく変化します。有害なことがあれば速やかに労働者の健康を守るために必要な措置を講じなければいけません。

その他にも、救急箱の中身が不足していないかなどの確認や衛生委員会の開催なども行います。2015年から50名以上の従業員を雇用する事業場では『ストレスチェック』が義務化されていますが、詳しくは後述するのでそちらを参考にしてください。

定期的に衛生教育を行う

衛生管理者は、従業員の健康悪化を防止する役目があります。そのために、定期的に衛生教育を行う必要があります。

衛生教育を行う目的としては、労働災害を起こさないことが挙げられます。労働災害を防止するためには、労働者自身が業務上どのようなことに注意すべきなのかしっかりと理解しておく必要があるため、安全への意識を高めるためにも衛生教育が必要です。

衛生教育は、業務を行う職場に入社した際に行う必要があります。衛生教育の対象者は正社員に限らず、派遣社員やパート、アルバイトなどの非正規労働者も含まれます。

衛生教育の内容は基本的には以下のとおりです。

・機械や原材料などの危険性・有害性、取り扱い方法
・安全措置、有害物抑制装置や保護具の性能、取り扱い方法
・作業手順
・作業開始時の点検
・当該業務で発生するおそれのある疾病の原因、予防方法
・整理整頓、清潔の保持
・事故などの際の応急措置、および退避

衛生管理者には2つの種類がある

衛生管理者には2つの種類があり、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者に分けられます。ここでは、それぞれの種類について詳しく解説します。

まず、第一種衛生管理者は国家資格の1つです。第一種衛生管理者の場合、有害業務を含む職種でも衛生管理者として働けるため、すべての職種で衛生管理を行えます。

第一種衛生管理者は、電気業や水道業、ガス業といったライフラインに関する衛生管理や、医療業や運送業、建設業などの有害業務も含まれているため、労働災害や労働者の命に関わるような事故が起こる可能性が高くなります。そのため、安全衛生に関する深い知識はもちろんのこと、担当する現場に対する知識や理解が必要です。

第二種衛生管理者も第一種衛生管理者と同様に国家資格ですが、すべての職種に対応できるわけではありません。第二種衛生管理者の対応範囲は、金融業や卸売業、情報通信業といった有害業務とは関連の少ない職種に限られます。

比較的労働災害が少なく、労働者の命に関わるような健康被害が起こりにくいでしょう。しかし、労働者のメンタルヘルスが問題になるケースも多いため、メンタルヘルスケアなどへの知識、理解が必要です。

衛生管理者を配置しなかった場合の罰則

上述したように、常時50人以上の労働者を雇用している場合には、衛生管理者を選任しなければいけない義務があります。この義務があるにもかかわらず、衛生管理者を配置しなかった場合どうなるのでしょうか。

衛生管理者を配置しなかった場合、事業場には罰則が科せられます。労働安全衛生法120条に基づき、50万円以上の罰金が科せられると定められています。

また、事業主は選任義務が発生した日から14日以内に、衛生管理者を選定して配置しなければいけません。その際、所轄の労働基準監督署長まで届け出る必要があるので、忘れずに届け出をします。突然衛生管理者が退職したなどの理由で、14日以内の配置が難しい場合は労働基準監督署長にその旨を伝えましょう。

衛生管理者になるには?

衛生管理者は国家試験の1つであるため、衛生管理者として働くためには試験を受験し合格する必要があります。衛生管理者の試験はどのような内容なのでしょうか。ここでは、衛生管理者の受験資格や試験内容、合格率などを詳しく解説するので、受験を考えている方は参考にしてください。

衛生管理者の受験資格

衛生管理者になるには、安全衛生技術試験協会が主催する試験を受ける必要があります。受験した上で合格することで資格が取得でき、衛生管理者として働けるようになります。

衛生管理者には受験資格があります。基本的には、学歴に応じた労働衛生の実務経験が求められるため、条件を満たしているかどうか確認しましょう。以下では、受験資格の一例を紹介します。

・学校教育法による大学(短期大学を含む)、もしくは高等専門学校を卒業し、1年以上労働衛生の実務経験がある
・高等学校、もしくは中高一貫学校を卒業し、3年以上労働衛生の実務経験がある
・10年以上労働衛生の実務経験がある

雇用形態は問わないため、パートやアルバイトで労働衛生に携わっていた場合でも受験資格が与えられます。

出典:公益財団法人安全衛生技術試験協会.「受験資格(第一種衛生管理者・第二種衛生管理者)」https://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku502.htm,(参照 2021-11-13)

衛生管理者の試験内容

衛生管理者の試験は第一種、第二種ともに、全部で3科目あります。関係法令と労働衛生、労働生理の3科目です。

関係法令とは、労働安全衛生法や労働基準法などに関する問題が出されます。第一種の場合には有害業務に関わるものとそれ以外、第二種の場合は有害業務に関わらないものが出題範囲です。

労働衛生では、衛生管理体制や作業管理、健康管理、職業性疾病や労働衛生教育、救急措置などに関する問題が出題されます。関係法令同様、第一種は有害業務に関わるものとそれ以外、第二種が有害業務に関わらないものが出題範囲です。

労働生理では、環境や労働により人体機能に起こる変化やその予防、職業適性などに関する問題が出題されます。

衛生管理者試験の費用と日程

第一種衛生管理者の試験は、毎月1~3回行われます。試験会場によっては月に5回以上行われているケースもあるため、予定を合わせやすいでしょう。試験会場は安全衛生技術センターで、全国7カ所(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・九州)にあるため居住地に近い会場を選んで受験します。

試験の詳しい日程については、各会場により異なるため受験会場にあらかじめ確認しておくことが重要です。また、安全衛生技術試験協会のホームページにも各会場の試験日が記載されています。

衛生管理者試験では、受験費用がかかります。2021年11月時点での受験費用は6,800円(非課税)です。

衛生管理者の合格率

衛生管理者試験に挑む際に、合格率がどの程度なのかは気になるポイントでしょう。令和2年度の第一種衛生管理者の受験者数は43,157人、合格者数は18,916人で、合格率は43.8%です。

第二種衛生管理者の受験者数は22,220人、合格者数が11,729人で、合格率が52.8%となっています。第一種衛生管理者試験の方が出題範囲や求められる知識が幅広いため、合格率は低くなる傾向があります。このように、第一種・第二種ともに合格率はあまり高くないことがわかります。

出典:公益財団法人安全衛生技術試験協会.「試験実施統計」https://www.exam.or.jp/exmn/H_gokakuritsu.htm,(参照 2021-11-13)

衛生管理者の勉強に必要な期間と勉強時間の目安

衛生管理者の試験を受けるために必要な期間は、1~3カ月程度を目安としておきましょう。衛生管理者の試験内容は出題範囲が幅広く、暗記しなければいけないことも多いため、短い期間では覚えきれない可能性が高いからです。

衛生管理に関する基礎的な知識がない、衛生管理者の講座などを受講せずに独学で勉強する場合には、トータルで100時間程度の勉強時間が必要になるといわれています。1日2時間勉強すると仮定すると、50日ぐらいはかかります。仕事などで勉強できない日があることも考慮し、余裕を持ってスケジュールを組み立てるといいでしょう。

前述したとおり衛生管理者の合格率はそれほど高くありません。資格取得までは時間がかかるので、前もって準備しておくことが重要です。

衛生管理者に合格したら

衛生管理者の試験に合格した後は、手続きが必要です。自分で手続きをしないと免許が発行されないため、合格したら速やかに手続きを行うとよいでしょう。

申請するには免許申請書が必要です。厚生労働省などのホームページからダウンロードする方法もありますが、試験会場でも配布されているので試験日に申請書と専用封筒をもらってきて保管しておくといいでしょう。

申請書類に必要事項を記入し写真を貼り付け、1,500円分の収入印紙、免許試験合格通知書、404円分の切手を貼り付けた免許証送付用封筒を同封します。申請書は簡易書留で送付しましょう。

衛生管理者は有効期限のない免許です。そのため、一度免許を取得すれば更新する必要はありません。

従業員の健康を守る衛生管理者や産業医を配置しよう

衛生管理者とは、労働者の健康や命を守る、労働災害を防止するなど、労働者の健康に配慮しながら企業経営を行うために必要な存在です。常時50人以上を雇用する事業者は1人以上の衛生管理者を配置する必要があり、事業場の規模によって配置すべき人数は異なります。

衛生管理者の選任義務があるにもかかわらず、衛生管理者を配置していないと罰則が科せられるため、必ず配置しましょう。

衛生管理者は資格取得まで時間がかかるため、従業員が50名を超えそうになったら早めに受験準備をすると安心です。また、50名を超えた場合、産業医の選任、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられます。企業の健康を守るために、産業医やストレスチェックの準備も忘れずに行いましょう。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。