産業保健・健康管理

ストレスによる睡眠障害とは?症状・治し方・予防法について解説

日付
更新日:2023.07.25

現代人の国民病とも呼ばれる睡眠障害。「布団に入っても眠れない」「夜中に何度も目覚めてしまう」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

睡眠障害にはいくつか種類が存在し、ストレスによって引き起こされる症状も少なくありません。

この記事では、睡眠障害とストレスの関係や主な症状、治し方について解説します。睡眠障害に悩む従業員を抱えている企業の担当者は、ぜひ参考にしてください

ストレスによる睡眠障害とは

睡眠障害とストレスの関係

睡眠障害につながる危険因子には、次のようなものがあります。

    • ・ストレス
    • ・ストレス対処能力の低さ
    • ・運動不足
    • ・睡眠に関する知識不足

睡眠障害で悩む人のなかには、ストレスが原因となっている人も少なくありません。

一般的に、人が眠りにつくときは身体をリラックスさせる働きのある副交感神経が優位になります。しかしストレスがたまっていると、身体を緊張状態にする交感神経が優位になります。身体が興奮状態になることで眠れなくなるというメカニズムです。

眠りについたとしても「ぐっすり眠れなかった」という感覚を覚えて、新たなストレス発生の原因になります。

睡眠に関する適切な知識の普及、かかりつけ医と専門医の連携強化などは、睡眠障害を改善するために有効な手段の1つです。睡眠障害は一般診療で訴えられる場合が多いため、一般診療における適切な対応が求められます。

睡眠障害の症状

睡眠障害は、症状によって3種類にわけられます。

    • ・入眠障害
    • ・中途覚醒
    • ・早朝覚醒

これらのうち1つだけ生じる場合もあれば、複数が重なるケースも珍しくありません。それぞれの特徴を簡単に紹介します。

寝つきが悪い

睡眠障害のなかでも、寝つきが悪い状態のものを入眠障害と呼びます。入眠障害では、布団に入ってから眠りにつくのに30分から1時間以上かかるのが主な症状です。

寝なければならないという焦りからストレスを感じて、眠りが浅くなってしまう人も多くいます。

夜中に何度も目覚める

夜中に何度も目覚めるのは、中途覚醒と呼ばれる睡眠障害です。真夜中に目が覚めてしまい、その後もしばらく寝つけない時間が続きます。

眠れないからといってテレビやスマホを見ると余計に目が覚めるため、睡眠不足に陥りやすいタイプといえるでしょう。

早朝に目覚めて二度寝できない

早朝に目覚めて二度寝できない睡眠障害を、早朝覚醒といいます。早朝覚醒では、目覚ましをかけた時間よりも早く目が覚めて、その後にもう一度眠ることができません。

午前中から眠くなる、午後の集中力が続かないといった症状にもつながりやすい睡眠障害タイプです。

ストレス以外の睡眠障害の原因

心の病気

心の病気になる人のほとんどが、睡眠障害に悩んでいます。ストレスによる睡眠障害と思っていたら、実はうつ病だったというケースも珍しくありません。

不眠・過眠(日中の眠気)といった睡眠障害の症状に加えて、気分の落ち込みや興味関心の低下など、うつ病患者でよくある症状があらわれていないか確認しましょう。

慢性的な不眠症に悩む人のなかには、精神的な疾患を抱えている人も一定数は存在します。

睡眠に関する症状以外に精神的な異変がある場合、睡眠を改善するだけでは完治しないケースも多いです。心当たりがある場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。

身体の病気

身体の病気が原因で不眠症に陥る場合もよくあります。

不眠症につながりやすい病気は、主に次のとおりです。

    • ・高血圧
    • ・心臓病
    • ・糖尿病
    • ・腎臓病
    • ・脳疾患
    • ・呼吸器疾患
    • ・前立腺肥大
    • ・関節リウマチ
    • ・アレルギー疾患

上記のような病気では、身体に生じた不調により睡眠が妨げられるケースも少なくありません。睡眠障害そのものを治そうとするのではなく、不眠の原因となっている病気を治療することで、眠りが改善される可能性があります。

薬や飲食物

病気の治療薬の副作用により睡眠障害になる可能性もあります。降圧剤・抗がん剤・甲状腺製剤といった薬は、不眠の原因になる場合があるため、使用する際は事前に副作用について理解しておくことが大切です。

喘息・蕁麻疹・花粉症などのアレルギー疾患で処方される抗ヒスタミン薬には、眠気を誘発する副作用が確認されています。夜にしっかりと睡眠をとっても日中に眠くなることがあるため、服用する際には注意しなければなりません。

お酒・たばこ・コーヒーなど、日常的に口にするものが原因で不眠症になる場合もあります。お酒に含まれるアルコール、たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があり、寝る前に摂取すると眠りが浅くなるため控えるのが無難です。

コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには、覚醒作用の他に利尿作用もあります。熟睡できないうえに、夜中にトイレ覚醒する可能性も高まって、安眠が妨げられる原因になります。

薬や飲食物に含まれる成分についての知識がないと、知らず知らずのうちに睡眠障害を引き起こす行為をしてしまうため気をつけましょう。

生活リズムの乱れ

夜勤や早朝勤務といった交代制勤務が続くと、生活リズムが乱れて不眠を招く恐れがあります。忙しい現代人のなかには、決まった時間に寝たり起きたりするのが難しく、慢性的な睡眠不足になっている人も珍しくありません。

受験勉強やネットサーフィン、飲み会など、夜更かしの原因になる行為にも注意が必要です。体内時計が徐々に後退していき、以前は夜10時に寝ていたのに、気づけば深夜0時をまわっても眠くならないという現象が起こりかねません。

海外旅行や出張にともなう時差ボケも、不眠症の原因になります。時間の流れやライフスタイルが大きく変わると、眠ろうとする機能が低下して「夜になっても目が冴えている」といった状況に陥るケースがあります。行き先によっては昼夜逆転生活を強いられる場合もあるため、体内時計を調整するための工夫が必要です。

不適切な寝室環境

寝室環境の良し悪しも、睡眠障害と深く関わる重要なポイントです。

質の良い睡眠にするためには、寝室の温度や湿度に気を配る必要があります。寝室が暑すぎたり寒すぎたりすると、寝つきが悪くなって睡眠時間が削られます。湿度が低すぎると喉が乾燥して体調を崩しやすくなるでしょう。

光や音が原因で熟睡できないケースもよくあります。寝室が明るいと睡眠ホルモンの一種であるメラトニンが分泌されず、眠りの質が低下します。また、睡眠中の騒音は中途覚醒の原因になるため、寝室は無音状態にするのが理想です。

睡眠障害の治し方とストレスケア

睡眠導入剤の服用

睡眠導入剤は、正しい方法で服用すれば睡眠障害の改善に効果的です。実際の医療現場でも、不眠症患者の治療として、睡眠薬を用いた薬物療法がおこなわれています。

「睡眠薬の依存性が心配だ」「使用量が増えるのが怖い」とネガティブな印象を感じる人も多くいますが、医師の指示に従って用法・用量を守れば過度に心配する必要がありません

ドラッグストアで購入できる市販の睡眠導入剤は、アレルギー疾患の薬が持つ副作用を応用して作られたものが大半です。本来とは異なる目的で利用される薬なので、短期間の服用にとどめることが推奨されています。

朝に太陽光を浴びる

太陽光のような強い光には、体内時計を調節する働きがあります。毎朝同じ時間に太陽光を浴びて体内時計を整えておくと、毎晩決まった時間に眠気が生じてくるでしょう。早起きすることで早寝につながるという順番です。

一方、夜に強い光を浴びると体内時計のリズムが乱れて、眠気が消えてしまいます。体内時計が遅れることで、いつもの起床時間になっても目覚めが悪く、早起きするのが難しくなるでしょう。

適度な運動でストレス解消

日中に適度な運動をすることで、睡眠障害の改善が期待できます。午後に軽く汗ばむ程度の運動をすると、適度な肉体的疲労が得られて、夜の熟睡につながります。

ただし激しい運動は交感神経を刺激するため、寝つきが悪くなることも。負担にならない程度のウォーキングや階段の上り下りなど、運動の強度を軽めにして継続することが大切です。

寝る前にリラックスタイムを設ける

自律神経を整えることは、睡眠の質を改善するうえで重要なポイントです。就寝前に副交感神経が優位になるような行動を心がけると、朝までぐっすりと眠れるでしょう。

ぬるめのお風呂にゆっくり浸かると、心身の緊張をほぐすことができます。半身浴は副交感神経を優位にさせて、睡眠の質を高めることがわかっています。

お風呂あがりに好きな音楽を聴いたり、心が落ち着く小説を読んだりするのもおすすめです。就寝前にリラックスする時間を設けると、寝つきが良くなるという効果も期待できます。

快適でストレスのない寝室づくり

寝室の環境を整えるのも、実践したい方法の1つです。睡眠障害で悩む人のなかには、寝室に睡眠を妨げる要因が存在しているケースも少なくありません。

一般的に快適な寝室環境とは、室温20度・湿度40〜60%・寝具内温度30度といわれています。エアコン・ベッド・布団・枕でうまく調整しながら、適切な温度と湿度を保ちましょう。

また、光や音にも注意すると、睡眠の質をより高めることができます。寝るときはなるべく真っ暗で無音にすると、入眠障害や中途覚醒を防げるでしょう。

ストレスチェックで睡眠障害を予防しよう

睡眠障害が気になるときは、ストレスチェックの実施をおすすめします。過剰なストレスが原因で不眠症に悩む人は多く、ストレスの解消により睡眠障害が改善される可能性があるためです。

ストレスチェックとは、いくつかの質問に労働者が回答し、それを集計・分析することで、どのようなストレス状態にあるのかを判断する方法です。仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートといった3領域を網羅した57項目から構成されています。

ストレスチェックを実施すると、自分自身のストレスレベルを客観的に分析して、適切な対処をおこなえます。睡眠障害の他にも、さまざまなメンタルヘルス予防に効果を発揮する方法です。企業の担当者の皆さんは、ぜひ以下の記事も合わせてご覧ください。

まとめ

睡眠障害とストレスの間には、密接な関係があります。日常生活におけるストレスをうまく解消できないと、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒といった睡眠障害につながる恐れがあります。

ストレス以外にも、心身の病気や飲食物、生活リズムの乱れなどが不眠症を誘発するケースも珍しくありません。睡眠の妨げとなる行為を控えることが、睡眠障害を改善するための第一歩です。

夜に眠れなくて悩んでいる人は、睡眠導入剤の服用や適度な運動、寝る前のリラックスタイムなど、手軽に始められる治し方から取り組んでみると良いでしょう。ストレスチェックにより自分自身のストレス状態を把握するのも、良質な睡眠を実現するために有効な手段の1つです。

Dr.健康経営では、ストレスチェックサービスを提供しています。メンタルヘルスに関する豊富な知識を持つ医師が、ストレスチェックの実施をサポートします。「ストレスが少ない職場にしたい」「社員の生産性を高めたい」という人は、お気軽にご相談ください。

そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?

「従業員数が初めて50名を超えるが、なにをしたらいいかわからない…」
「ストレスチェックを初めて実施するので不安…」

そんなお悩みを抱える労務担当者の方はいませんか?
Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

関連記事