産業保健・健康管理
健康管理室とは?設置の背景や役割、今後の課題などを詳しく解説
健康管理室とは、企業に在籍する従業員の健康管理を行う部門のことです。メンタルヘルスの重要性に注目が集まっていることから、健康管理室を設置する企業が増えています。
そこで本記事では、健康管理室が設置される背景や義務の有無、運営していく上での課題などを紹介します。
健康管理室を設置するにあたっての必要な準備も解説しているので、導入する際の参考にしてください。
目次
健康管理室とは?
まずは健康管理室とはどのようなものなのか、設置されるようになった背景や設置義務について解説します。
健康管理室の主な仕事内容や構成メンバー、行うべき研修内容も併せて参考にしてみてください。
健康管理室が設置されるようになった背景
健康管理室とは、企業における産業保健スタッフが在籍する健康管理のための部門です。従業員の身体的な健康やメンタルヘルスをサポートするのが役割です。新型コロナウイルスの影響により、従来以上にメンタルケアが必要となったことから健康管理室を設置する企業が増えています。
安全配慮義務の観点からも、健康管理室の設置は有用です。安全配慮義務とは、厚生労働省によって定められた義務のことで「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」とされています。
“引用:厚生労働省「労働契約法のあらまし」”
多くの大手企業には健康管理室が置かれており、近年では中小企業においても設置されるようになっています。その理由は、前述したようにメンタルケアの必要性が高まっていることや、従業員の健康管理が企業に経済的なメリットをもたらすからだと考えられています。
健康管理室に設置義務はない
健康管理室は、法的な設置義務が定められているわけではありません。義務がないにもかかわらず、健康管理室の設置が進む理由は、導入することによるメリットがあるからです。
まず、健康管理室は従業員の健康維持に役立ち、一人ひとりが生き生きと働ける環境を整えられます。また、福利厚生の一環としての側面も挙げられます。
新型コロナウイルスの影響によって、テレワークの普及といった労働環境の変化に伴う心身の不調解決にも健康管理室の設置は有効です。
健康管理室の主な仕事内容
健康管理室の主な仕事内容は、産業医と同様です。具体的な業務としては、高ストレス者へ面接指導や従業員の心身についての健康相談などが挙げられます。高ストレス者はストレスチェックによって判定され、そのままにしておくとメンタルヘルス不調に陥るリスクが高くなります。
その他、社内で怪我人や病人が出た場合の応急処置も健康管理室の仕事です。企業規模によっては安全委員会を開く必要があり、参加者には健康管理室も含まれます。
また、2カ月に一回は職場を巡視し、危険がないかチェックするなど快適な職場環境を整備することも役割の一つです。
産業医の仕事内容に関しての詳細はこちらの記事も参考にしてください。
健康管理室で構成される主なメンバー
健康管理室は産業医や産業保健師といった医療の専門家の他、企画職や事務職によって構成されます。健康管理室に医療職しか在籍していない場合、他の部署とのやりとりが難しいため渉外担当として企画職が置かれています。
復職のアドバイスも担当する健康管理室では、他の部署、特に人事部との協力が必要となる場面も少なくありません。
また、他部署とのつながりがないと部内の風通りが悪くなり、業務がブラックボックス化してしまう可能性もあります。企画職を置くことで他部署との連携が容易になり、こうした問題を解消できるでしょう。
健康管理室が行うべき研修内容
健康管理室で取り組むべき研修は、主に以下の3つです。
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- ・セルフケア研修
- ・ラインケア研修
- ・ハラスメント研修
セルフケア研修とは、職場の中にあるストレス要因に気付き、自らメンタル不調を起こさないように予防するための対処法を学ぶ研修のことです。ラインケア研修では、管理職が部下のメンタルケア方法を学びます。ハラスメント研修とは、職場のハラスメントを予防するための研修です。
これらの研修を行う際は、健康管理室の産業医や保健師が講師を務めるのがおすすめです。普段から企業と関わりのある人が講師となることで、実際に事案が発生した際に相談しやすくなります。
健康管理室が取り組むべき問題
健康管理室が積極的に取り組むべき問題は、主に以下の2つです。
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- ・休職中の従業員に対するケア
- ・健康診断後のフォロー体制構築
それぞれの問題について詳しく解説します。
休職中の従業員に対するケア
健康管理室は、休職中の従業員に対するケアが欠かせません。
メンタル不調などで休職することになった従業員には、安心して療養に専念できるようにさまざまな情報提供を行います。例えば、傷病手当をはじめとする経済的な保障について説明したり、不安や悩みを相談できる窓口を紹介したりするのも有効でしょう。
そして、従業員の復職に対して合理的な判断ができる仕組みを構築して、適切に運用を行っていくのも健康管理室の役割です。
一般的に、主治医は日常生活の様子から職場復帰の可能性を考慮します。しかし、職場で求められている業務遂行能力まで回復できたかどうかの判断は、健康管理室が行うのが重要です。主治医と情報を共有しながら判断していくといいでしょう。
“参照:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」”
健康診断後のフォロー体制構築
近年、健康診断を行っていない企業はほとんどありません。特に、健康経営に力を入れている企業は従業員に対する安全配慮義務の意識が高く、受診率も高水準をキープしています。
しかし、そのような企業であっても、健康診断後のフォロー体制が構築されていないケースも珍しくありません。例えば、健康診断のデータ管理を行っていなかったり、要精密検査と診断された従業員に対して受診を促していなかったりする企業も多いでしょう。
そこで、健康管理室は率先して従業員の健康状態を把握しておき、健康診断後に適切なフォローができる仕組みを構築しておくことが大切です。
健康管理室に必要な準備とは?
健康管理室をうまく機能させて、効率的に運営するためには以下のような準備が必要です。
-
- ・ストレスチェックシステムを整える
- ・内部相談窓口を設置する
- ・外部相談窓口が活用できるようにする
- ・従業員に向けて研修を行うための準備をする
ここでは、設置にあたってどのような準備をすればいいのか具体的に解説します。
ストレスチェックシステムを整える
ストレスチェックの実施は、健康管理室の役割の一つです。
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べるための質問回答式の検査です。2015年12月より労働安全衛生法によって、50人以上の労働者がいる企業では年に1回のストレスチェック実施が義務付けられています。
ストレスチェックを提供している企業もあります。例えば、株式会社Dr.健康経営が提供する産業医監修のストレスチェック「ストレポ」を活用すれば手間なく便利に実施でき、手厚いサポートも受けられます。
ストレスチェックに関しての詳細は、こちらの記事も参考にしてください。
内部相談窓口を設置する
健康管理室は従業員の健康状態や職場環境作りを効果的にサポートするには、社内における相談窓口の設置が必要となります。
また、パワハラ防止法の施行によって、企業にはハラスメント相談窓口を置くことが義務となっています。労働環境問題に迅速に対応するには、内部相談窓口の設置が有効です。
内部相談窓口には産業医や産業保健師、心理カウンセラーといった専門スタッフが必要になります。セクハラやパワハラといったセンシティブな相談が持ち込まれることもあるため、対面だけではなく電話やメール、チャットなどで気軽に相談できる体制を作ることが望ましいでしょう。
外部相談窓口が活用できるようにする
前述した内部相談窓口は健康サポートやハラスメント防止に有用ですが、相談内容や本人の性格から相談しづらいと感じる従業員も少なくありません。そのような場合のために、従業員が外部相談窓口を活用できる体制を作っておくのも一つの方法です。
外部相談窓口は、基本的に有料で利用できます。厚生労働省の「ハラスメント悩み相談室」や、労働局の労働相談コーナーであれば無料で相談を受け付けています。
これらは公的な窓口として設置されているため、相談窓口の外部委託ができるわけではないものの、利用方法を社内で周知しておけば社内トラブルの改善に役立つでしょう。有料サービスなら相談窓口の委託ができ、従業員に対してより充実した相談体制を提供できます。
それぞれの特徴を理解しながら、自社に合ったものを選びましょう。
従業員に向けて研修を行うための準備をする
健康を維持するためには、従業員一人ひとりが知識を身につけることが大切です。
正しく実用的な知識の獲得には、研修の実践が効果的です。特にメンタルヘルスやストレスマネジメントについては医療分野の知識も関わってくるため、健康管理室が主導することでより実情に沿った有用な研修が実施できます。
先ほど紹介したセルフケア研修やラインケア研修などを取り入れることで、専門的な知識を身につけられるでしょう。
健康管理室を運営する上での課題
企業が健康管理室を運営する上での課題は、以下のとおりです。
-
- ・産業医・看護師・産業保健師の確保
- ・業務内容の明確化
ここでは現状、体制の安定や健康管理室の業務においてどのような課題があるのかを解説します。
産業医・看護師・産業保健師の確保
企業が健康管理室を置く場合、担当者として常勤の産業医や産業保健師、看護師が在籍するのが一般的です。しかし、これらの職業の平均年収は比較的高く、企業としては健康管理にかける人件費を上げられないという事情から担当者が離職してしまうケースも少なくありません。
産業医は臨床医などと同等の年収を求める場合も多く、経験を積んでも年収が上がらない場合、離職する可能性が高くなります。産業保健師に関しても、看護師と比較して年収が抑えられる場合が多く、同じく離職することも珍しくありません。
年収への不満などによって担当者が転職しやすく、長期雇用が難しいことが安定した健康管理室運営の妨げになっています。
業務内容の明確化
健康管理室の業務は多岐に渡り、仕事量も少なくありません。その上、業務内容には労働法が関わってくるため、変化が大きく仕事の管轄が曖昧になりやすいという特徴があります。
担当業務を明確化しておかないと、本来なら健康管理室が担うはずの業務がしっかりと遂行されないことも考えられます。
また、産業医や産業保健師がメンタルヘルスケアの研修を行わないといったケースもあるため、あらかじめ健康管理室の業務内容をリストアップするなどして明確にしておくことが大切です。
産業医や産業保健師は産業保健のスペシャリストではありますが、ITやソフトウェア業務に関しては慣れていないことがあります。健康管理室を効率的に運営するためには、業務プロセスの最適化やITの活用が必要となります。
まとめ
健康管理室とは、従業員の健康を守り長く生き生きと働いてもらうための部署です。近年、健康管理室を設置する企業が増えています。メンタルヘルスケアの必要性が高まる現代では、健康管理室の設置をはじめとした健康維持への取り組みが肝要といえます。
健康管理室はその業務内容から、産業医や産業保健師といった専門家を置くのが一般的です。
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