クラッシャー上司の特徴とは?企業や従業員にもたらす問題点と対処方法を解説!

日付2022.02.14
更新日:2022.02.14

クラッシャー上司を放置し続ければ、従業員を潰してしまう恐れがあります。企業は、クラッシャー上司に対して適切に対処するための具体的な問題点や対策を理解しておかなければなりません。

この記事では、クラッシャー上司の主な特徴や、クラッシャー上司が企業と従業員に与える影響、具体的な対処方法などを解説します。記事を読み終える頃には、企業がクラッシャー上司を放置するリスクや適切な対処法を把握できるでしょう。

クラッシャー上司の特徴

クラッシャー上司への対処方法を知る前に、クラッシャー上司の特徴を把握しておきましょう。クラッシャー上司の特徴を確認しておけば、後述する問題点や対処方法も理解しやすくなります。

クラッシャー上司とは?

クラッシャーの意味は、休職や退職に追い込んで部下のキャリアを潰してしまうことです。クラッシャー上司とは部下を精神的に追い込み、成果はすべて自分のおかげだと振る舞う上司を指します。部下は休職や退職を選択せざるを得ない一方で、クラッシャー上司は社内での実績や評価を高めていきます。

例えば、同僚がいる前で部下を叱る、必要以上に厳しい姿勢で部下に接するなどです。本人は、自分がクラッシャー上司だと自覚していないため、適切に対処するには本人に自覚させることから始めなければなりません。

実績があることで仕事のやり方をおしつける

上述したように、クラッシャー上司は部下の頑張りで得た成果もすべて自分のおかげだと考える傾向があります。しかし、クラッシャー上司は仕事ができない訳ではありません。

仕事ができる自負があるからこそ、自分の仕事のやり方や価値観に強い自信を持っています。さらに、自分を基準に指導を行ったり、部下に自分の価値観をおしつけたりする特徴があります。

部下は上司の指導方法に納得できなくても従うしかありません。その結果、精神的に追い込まれ、休職や退職につながってしまいます。

自信があり自分こそが正しいと思っている

クラッシャー上司は、基本的に自分が正しいと思い込んでいる節があります。中には、マネジメント能力に強い自信を持っている人もいるでしょう。

クラッシャー上司は、仕事の能力が高く実績もあり社内で高く評価されていることが強い自信につながっています。自分のやり方で成果を上げてきたからこそ、部下にも同じやり方をおしつける傾向があります。

本来なら、上司は裁量権を部下に委ね、部下の成長を見守る立場でいるのが理想的です。しかし、クラッシャー上司は部下に仕事を任せた後にも口を挟み、自分のやり方に合わないと叱責するため、部下は強いストレスを受けることになります。

仕事量や質など常に自分を基準としている

クラッシャー上司は、自分と同じレベルの基準を部下にも求める傾向があります。例えば、自分と同じ仕事量を部下に与えたり、部下の能力や得意・不得意なども考慮せずに自分と同じ質を求めたりするケースも少なくありません。

同じ仕事量や質をクリアできない部下に対し、「この程度のことができないのか」などと厳しい口調で叱責します。能力の高い部下であれば上司のやり方に合わせられる人もいるでしょう。

しかし、上司の基準に達していない部下は能力以上の仕事や働きぶりを求められるため、精神的に追い込まれる可能性が高いです。

承認欲求や自己防衛が強い

クラッシャー上司に共通する性格の一つが、承認欲求や自己防衛の強さです。承認欲求には、他者から認められたいと感じる他者承認と、自分自身を認めたい自己承認の2種類があり、クラッシャー上司の性格に該当するのは自己承認欲求です。

自己防衛とは、強い不安などから自分を守るための生理的反応です。自己防衛心が強い上司は、自分の威厳を守ることに必死なので部下の失敗に対しても過剰に反応するため、自分のやり方に合わない部下に対し強い不安を感じ、不安を解消するために自分のやり方を押し通そうとします。

思いやりに欠け自己中心的

他人を思いやることができない人は、クラッシャー上司になる可能性があります。クラッシャー上司は、常に自分を中心に考えて行動するため、他人を思いやる感情を持ち合わせていません。

例えば、部下の努力によって成果につながった場合でも、クラッシャー上司は「よく頑張ってくれたね」「君のおかげだよ」などの労う言葉を部下にかけることはありません。また、クラッシャー上司の評価基準はすべて自分になるため、部下の能力に応じて評価するなどの客観的な評価が苦手です。

結果的に、努力しても適正な評価を得られない部下は、思いやりに欠け自己中心的な上司の下では成長できないと感じ、離職を決意してしまいます。

部下を執拗に叱責する

クラッシャー上司は、その時の気分で部下への態度を変えることがあります。例えば、むしゃくしゃしているときは、些細なミスでも部下を執拗に叱責するケースも珍しくありません。
自分が執拗に叱責したことが原因で、部下を精神的に追いやってしまっても、反省せずに部下のメンタルの弱さを指摘します。自分は間違っていないと思い込んでいるため、問題があれば相手のせいにします。

クラッシャー上司は自分を基準に発言や行動をするため、自覚させづらいことが大きな問題点です。

クラッシャー上司が生まれた背景と問題点


クラッシャー上司は、欧米の企業よりも日本企業に多いといわれています。日本でクラッシャー上司がなぜ生まれてしまうのか、その背景と問題点を以下で詳しく解説します。

日本企業の雇用制度も背景の一つ

クラッシャー上司に適切に対処するためには、会社全体がコンプライアンス意識を高く持つ必要があります。なぜなら、クラッシャー上司が生まれたのは、日本で多く採用されている雇用制度が要因の一つと考えられているためです。

日本企業の多くが採用している雇用制度は、メンバーシップ型と呼ばれています。メンバーシップ型は、職務範囲の境界があいまいなため、クラッシャー上司から能力以上の仕事を任されても断れません。

一方で、欧米企業で多いのはジョブ型です。ジョブ型は、職務範囲が明確化されており、自分の仕事でないものは断れます。メンバーシップ型には、終身雇用の保障や幅広い職務経験を持てるメリットもあるため、必ずしも悪いことばかりではありません。

日本企業の年功序列制度との関係

これまで日本企業の多くは新卒を一括で採用し、年功序列で出世の道が約束されているのが一般的でした。年功序列制度とは、勤続年数や年齢で昇格や給与アップを決める制度です。勤続年数などが増えるごとに経験値や能力、会社への貢献度が上がることを前提に考えられています。

年功序列制度を採用する企業では、能力が高くても年齢が若く勤続年数が短いだけで適切な評価を受けられません。

会社は上司の命令のとおりに動く扱いやすい人材を採用したがり、上司の命令を聞く部下だけが採用されるため、クラッシャー上司を生みやすい体質になってしまいます。

クラッシャー上司が企業にもたらす問題点

クラッシャー上司の存在を放置し続ければ、企業の経営にも支障をきたす恐れがあります。クラッシャー上司の存在が企業にどのような問題を引き起こすのか、以下で解説します。

職場の雰囲気が悪くなる

クラッシャー上司が職場にいると、雰囲気が悪くなる傾向にあります。クラッシャー上司は基本的に部下を褒めない上に思いやりがないため、職場の雰囲気は明るくなりません。

部下がミスをしたり自分と同じレベルで仕事ができなかったりすると、同僚のいる前でも構わずに部下を叱責します。職場内の空気は一気に緊迫し、周囲にいる部下たちも緊張感に襲われます。
部下たちは「次は自分が叱責されるかもしれない」と強い不安や恐怖感を常に感じながら仕事をするため、職場内の雰囲気が良くなることはありません。

従業員の成長を妨げる

従業員の潜在的な能力やスキルを引き出すのが上司の仕事の一つですが、クラッシャー上司は従業員の成長を妨げ、結果的に潰してしまいます。

クラッシャー上司の下で働く従業員の多くは、能力やスキルを発揮できないまま精神的に追い込まれ、休職や退職を選択せざるを得なくなります。企業が失うのは、優秀な人材だけではありません。

従業員の離職は、入社時からの教育コストもすべて無駄になり、結果的に大きな損失を被ることになります。また、クラッシャー上司は部下の能力を活かせないため、新商品の開発や新事業につながる創造的なイノベーションを生み出しにくくします。

人材が定着しない

クラッシャー上司は、人材が定着しづらい職場も生み出してしまいます。部下は一方的に上司から叱責を受けるだけでなく、能力以上の膨大な仕事量をおしつけられ、精神的に追い詰められるケースも少なくありません。

強いストレスや膨大な仕事量による負荷が、部下の心身に影響を及ぼし体調不良を引き起こしてしまいます。結果的に、クラッシャー上司のいる職場には戻れないため、休職や退職の2択を迫られます。

人材が定着しないと、将来有望な人材が他社へ流出するリスクが高まり、人材不足などの会社全体の問題に発展しかねません。

クラッシャー上司とパワハラ上司との違い

部下を精神的に追い込むことから、クラッシャー上司とパワハラ上司を同義語で扱う人もいるかもしれません。しかし、クラッシャー上司とパワハラ上司には明確な違いがあります。

クラッシャー上司は仕事の能力が高く、自分のやり方や価値観に強い自信を持っており、部下にも同レベルの仕事を求めようとします。一方で、その日の気分や憂さ晴らしのためだけに部下を精神的・身体的に攻撃するのがパワハラ上司です。

クラッシャー上司は仕事関連で部下を叱責しますが、パワハラ上司はストレス発散や嫌がらせ目的で部下を叱責する点が両者の違いです。クラッシャー上司の過剰な叱責はパワハラ目的ではないため、部下が訴えてもパワハラで処分しづらい傾向にあります。

 

【企業側】クラッシャー上司の対処方法

企業はクラッシャー上司に対して、どう対処すればいいのでしょうか。

企業がクラッシャー上司に対して行うべき対処法を紹介します。

勉強会や研修を開催する

企業側ができるクラッシャー上司の対処方法の一つは、管理職を対象にした部下とのコミュニケーションをテーマにした勉強会や研修の実施です。

クラッシャー上司は部下への適切な指導方法を理解していないため、厳しすぎる指導をしてしまっているケースがあります。

執拗に叱責せず、部下の能力に合った指導をする方法についての勉強会や研修の場を設けて上司の再教育を行いましょう。

クラッシャー上司の悩みなどをヒアリングする

クラッシャー上司と個人面談の機会を設け、悩みなどの話を聞くことも大切です。クラッシャー上司は自分が正しいと思い込んでいるため、悩みなどないように思うかもしれません。

しかし、部下とのコミュニケーションに悩んでいるクラッシャー上司もいるため、パワハラとして処分されるとプライドが傷ついて、うつ状態に陥る可能性があります。クラッシャー上司のメンタルケアのためにも個人面談を行い、部下とのコミュニケーションで抱えている悩みをじっくり聞く機会を作るようにしましょう。

さらに、指導方法に関する話の中で、会社の方針や上司に求めている役割を伝えることも重要です。

相談窓口を設置する

クラッシャー上司による部下への叱責は、たいていの場合仕事を円滑に進めることが目的のため、パワハラとは切り離して考えなければなりません。

とはいえ、クラッシャー上司の執拗な叱責に悩む従業員のメンタルケアも重要なため、パワハラとは別の相談窓口を設置するようにしましょう。

従業員から相談があれば、会社側はクラッシャー上司の存在を把握でき、対処しやすくなります。相談窓口を設置する場合は、上司に気付かれないように配慮する必要があります。産業医を相談窓口にするのも有効な手段です。

【従業員側】クラッシャー上司の対処方法


従業員にもクラッシャー上司への対処方法を理解してもらう必要があります。また、実際にクラッシャー上司の下で働いている従業員が適切な対処方法を知っておくことで、必要以上にストレスを溜めないで済みます。

被害状況を記録しておく

クラッシャー上司から理不尽な叱責などを受けた従業員は、被害状況の詳細を記録しておくことが大切です。記録する内容は、被害を受けた日付けや状況、クラッシャー上司から言われた言葉やされた行動などです。

記録方法は、メモや日記、録音などがあります。紙に記録する際は追記したと思われないためにも、文字が消えにくい油性のボールペンなどを使用し、なるべく行間を入れずに日付ごとに記載しましょう。

また、同僚に相談しておくことで、会社が事実確認をする際に被害状況を証言してもらえます。同僚が仕事をする中で強い味方になってくれるでしょう。

会社に報告する

企業は従業員に対し、安全配慮義務を守らなければなりません。安全配慮義務とは、労働契約法第5条で義務付けられている法令のことです。企業は従業員の生命や身体などの安全を確保し、働きやすい環境を整備する必要があります。

クラッシャー上司の存在を知りながら会社が放置しておくのは、安全配慮義務に違反するため、会社側が適切な対応をしない場合、従業員は安全配慮義務違反を指摘できます。
また、パワハラ防止法の改正で、事業主はハラスメント相談窓口の設置を義務付けられました。相談窓口の設置が義務化されたことによって、事業主はクラッシャー上司から被害を受けた従業員へ適切な対応を行うことが求められています。

公的機関に相談する

会社へ報告する以外に、公的機関に被害を訴える方法もあります。各自治体の労働局や労働基準監督署には総合労働相談コーナーが設置されており、クラッシャー上司から受けた被害を相談できます。

総合労働相談コーナーでも解決しない場合は、紛争調整委員会に相談しましょう。紛争調整委員会は弁護士などの労働問題に詳しい専門家が従業員と会社の間に入り、話し合いで円満な解決を行うための機関です。無料で申請できるため、会社に相談しても対応してくれない場合におすすめの対処方法です。

出典:福岡労働局.「総合労働相談コーナーのご案内」(参照2021-12-09)

https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/roudoukyoku/gyoumu_naiyou/soumu/sodan/sodan01.html

人事異動の希望を出す

クラッシャー上司の下で働きたくない場合は、人事異動届を申請するのも一つの方法です。クラッシャー上司から精神的に追い込まれると、心身が疲弊して働けない状態に陥る可能性もあります。

精神面の健康を害する前に、クラッシャー上司から離れた場所で安心して働ける環境を確保するのも大切なことです。人事異動の希望を出す場合は、クラッシャー上司の状況や今抱えている悩みなどの客観的な事実を伝えるようにしましょう。異動の希望が通らなかった場合は、転職や退職を視野に入れるのもいいでしょう。

レジリエンスを高める

クラッシャー上司に対して適切に対処するには、レジリエンスを高めることも重要です。レジリエンスとは自己免疫力や自己治癒力のことで、ストレスを撥ね返す力を指します。レジリエンスは、訓練で身に付けられます。

例えば、「上司はきっと幼少期に辛いことがあったのかもしれない。私には関係ないけど」など、状況を受け入れた上で上司と自分を切り離して考えることが大切です。

また、クラッシャー上司から被害を受けている同僚と感情を共有したり、どうやって対処するのかマニュアルなどを作ったりするのもおすすめです。レジリエンスを高めることで、クラッシャー上司の言動をやりすごせるようになります。

産業医に相談してみる

産業医に相談すれば、医学的な観点からアドバイスをもらえます。産業医とは、事業場で働く従業員が安心・安全に仕事ができるように、医学的な立場から指導やアドバイスを行う医師のことです。

産業医は、従業員の健康診断の管理や作業環境の安全・維持管理などの役割を担っています。クラッシャー上司からの被害で精神的に辛いときは、産業医に相談してみてください。
産業医へ相談する際は、窓口になっている部署へ産業医に相談したい旨を伝えましょう。

まとめ

クラッシャー上司の存在を放置し続ければ、従業員の離職や人材不足などの企業の損失につながります。クラッシャー上司への対策は、被害を受けている従業員が精神的に追い込まれる前に相談できるように、産業医に相談できる体制を整備しておくことが大切です。

自社に産業医を配置できない場合や、産業医がいても気軽な相談が難しい場合は、メンタルケアに特化した産業医を選任する産業医コンシェルジュの導入を検討してみましょう。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。