産業保健・健康管理
休職には診断書が必要?休職の手続きや期間・休職者への対応の注意点を解説
近年、メンタルヘルス不調に陥る労働者は増加傾向にあり、うつ病などで休職に至ってしまうケースもあります。
そのなかで、「休職させるには診断書を提出させる必要はある?」「従業員が休職したいと言ってきたが、いつから何ヶ月間休ませればいい?」という疑問を抱く人事労務ご担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事は、従業員が休職を希望する場合や、実際に休職に入る場合に、「診断書を提出させる必要はあるか」「休職はいつから、どれくらいの期間になるのか」「休職に必要な手続きや注意点」など、休職の概要から流れまで詳しく解説していきます。
今すでに休職対応をしている、もしくは今後休職が発生しそうな企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
そもそも休職とは?
労働者(従業員)が個人の都合によって会社を長期的に休むことを休職といいます。休職は法律で定められているものではなく、あくまで会社が就業規則等において制度として定めるものです。
したがって、労働者から休職の申し出があったとしても、必ずしも会社がそれを認めなければいけないというわけではありません。申し出があった場合には、会社は休職の理由を就業規則等に照らし合わせ、休職の可否を判断することになります。
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休職には休職診断書が必要?
休職診断書は、休職の妥当性を医師が診断していることを証明するものです。
休職する際には休職診断書が必要だと思われていますが、必ずしも必要なわけではありません。
ただし、最終的には会社が休職させるかどうかを判断することになるため、その際の判断材料として、医師による休職診断書の提出を就業規則で定めているケースが多くなっています。
つまり、休職診断書が必要かどうかは会社ごとに異なる、ということになります。
労働者が休職の申し出をしてきた際には、まずは就業規則を確認し、自社の休職制度がどのようになっているかを確認してみましょう。
休職診断書は、労働者本人が症状に合った医療機関に行き、休職診断書を発行してもらいます。例えば、うつ病などメンタルヘルスに不調がある場合は精神科や心療内科、脳血管疾患なら神経内科となります。
休職診断書の発行手数料は医療機関により異なりますが、一般的な費用は数千円〜1万円程です。申請から発行までの期間については、即日発行される場合もあれば、2週間程度かかるケースもあります。
なお、休職は基本的に個人都合なので、発行に伴う費用は労働者が負担するのが一般的です。
休職期間はどれくらい?
労働者の休職決定後の休職期間の決め方や休職期間が延長となるケースについて、また休職期間が満了となった場合の対応を解説します。
休職期間は就業規則で定められた期間
労働者が休職できる期間の上限は、原則として企業の就業規則に定められています。
休職制度は、法律で定められた制度ではないため、職場によって取り決めは様々です。就業年数によって休職期間に違いを設けている企業や、勤続1年未満の労働者は休職制度の対象外としている企業、そもそも休職制度がない企業もあります。
また、労働者の症状の度合いによって療養期間が異なるため、休職期間はケースバイケースです。
症状が軽度の場合は1ヶ月、重度の場合は3ヶ月〜半年の休職期間を設けることが一般的です。休職を申し出る労働者は、一人ひとり事情が違うため、診断書や面談による判断が必要となります。
なお、いつから休職開始となるかは労働者の申し出以降、労働者と会社とが相談して決めることになりますが、健康上の理由で就業が困難と判断される場合はその日から休職扱いになることもあります。
関連記事:休職や復職に対応した就業規則とは?記載するべき項目やポイントを詳しく解説
状況に応じて休職期間の延長も可能
休職期間は原則として、休職申請時の診断書に基づき必要とされた期間になります。しかし、その後の継続的な診断によって、休職の延長が必要と医師が判断した場合には、就業規則に定められた期間の上限に達していない限り、休職期間の延長ができます。
また、休職期間が満了になっても労働者が復職できない場合は、退職または解雇となることが一般的です。
退職扱いになるのか、解雇となるのかは、企業の就業規則によります。労働者とのトラブル防止のため、就業規則で休職規定をしっかり定め、明記することが大切です。
復職を促すためのリワークプログラムの内容や費用について以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:リワーク費用はどれくらい?施設ごとの制度の違いや注意点を解説
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休職手続きの一般的な流れと注意点
休職手続きは、原則として就業規則に基づいて進められます。ここでは、企業の労働者が休職を申し出た場合の一般的な手続きの流れとその注意点を解説します。
1.診断書の提出
労働者が休職を申し出た際は、当該労働者が就業規則による休職制度の対象となるのか判断する必要があります。休職の可否判断は、診断書や労働者との面談の実施によって確認します。
診断書では、労務が不可能となる理由や休職を必要とする期間を確認します。面談での確認事項は、復職の意思があるのか、また休職を回避するための手立てはないのかといった事柄です。
例えば、職場・部署異動や職種転換などによって、休職しなくても労働者が働き続けられる場合があるかもしれません。
診断書や面談によって休職しても復帰が見込めないことが明らかな場合は、休職を認めない判断を行うケースもあります。
2.休職の可否と期間の決定
診断書や面談の内容を検討し、労働者の休職の可否を判断します。休職を認める場合は、休職辞令を文書として交付した方がいいでしょう。休職辞令には、起算日や終了日(休職期間)、休職命令発令日などを記載することが一般的です。
休職期間満了までに労働者が復職できない場合は、退職扱いとなるため、休職期間をはっきりと示すことが大切です。
伝え方も大事ですが、休職における事由や期間、手続きといったルールを、就業規則で明確に定めることで、退職や解雇となった場合の、労働者とのトラブルを回避しやすくなります。
3.休職に関する確認書の取り交わし
休職する労働者に対しては、休職に関する確認書の取り交わし、そして必要事項の周知をしましょう。
- ・休職中の連絡先
休職期間中は、労働者と企業との間で経過報告や書類のやりとりが生じるため、企業側の電話番号などの連絡先や、書類の送付先住所、担当者を知らせておく必要があります。 - ・病状などの経過報告に関する事項
休職期間中の労働者からの診断書の提出について、その頻度や提出方法を決めておく必要があります。 - ・社会保険料の取り扱いについて
休職中も雇用契約は持続しているため、社会保険料の支払い義務は企業および当該労働者共に変わりません。休職中は基本的に給与が発生しないため、社会保険料の徴収方法を決めておく必要があります。
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休職期間中の賃金について
労働者の休職期間中、企業に給料を支払う義務があるのか、また労働者が申請できる傷病手当金制度とはどのようなものかを解説します。
給与の支給は就業規則の定めによる
休職制度に法的な制約はなく、企業に休職期間中に給与を支給する義務はありません。
給与は労働の対価とされているため、「ノーワーク・ノーペイの原則」に従い、休職中の労働者には給与が発生しないことが一般的です。
「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働者が労務を提供していない場合、企業はその時間についての給与を支払う義務がないという考え方のことです。
ただし、休職期間中でも給与を支払う企業もあります。給与が支払われるケースでは、通常の給与全額ではなく、一部が支給されることになります。
休職中の給与の有無や、支給される場合の金額・期間などについては、就業規則に定めておきましょう。また、給与と同様、賞与(ボーナス)の支給の有無についても同様です。
休職中は「傷病手当金」を申請できる
休職期間中の労働者は、傷病手当金を受給できる場合があります。傷病手当金とは休職中の労働者に、給与の約3分の2が最長1年6カ月の間支給されるものです。
労働者が経済的な心配をすることなく安心して療養できるよう、この傷病手当金制度について知らせることが大切です。
傷病手当金の受給には、一定の条件を満たす必要があります。
- ・健康保険に加入していること
傷病手当金を受給するためには、勤務先企業の健康保険に加入している必要があります。 - ・業務外のケガや病気により働けないこと
傷病手当金の受給では、休職の理由が仕事や通勤によるものではないことが必要です。業務内のケガや病気で働けない場合は、労災保険の対象となります。 - ・連続した3日間仕事を休んでいること
待機期間となっている3日間を過ぎないと、傷病手当金を受給することはできません。3日間連続で仕事を休むと待機期間が経過したとみなされ、その後の休職期間に対して傷病手当金が支給されます。 - ・給与の支払いがないこと
傷病手当金の受給では、給与の支払いがないことが必要です。
傷病手当金に似たものとして障害年金制度があります。同じ病気やケガを対象とした場合、傷病手当金と障害年金の両方の全額は受け取れないため注意が必要です。
休職期間中の社会保険資格の手続き
労働者の休職期間中でも雇用関係は持続しています。したがって社会保険資格の喪失に関する手続きは不要です。また、企業と労働者共に、社会保険料の支払いの義務があり、負担額も変わりません。
通常、社会保険料は労働者の給与から天引きされますが、無給の休職期間中ではそれができません。
休職中の労働者に対しては社会保険料の徴収方法を取り決めておく必要があります。労働者が定期的に保険料を企業に振り込む、企業が未払いの給与から徴収する、企業が立て替えておくといった方法が一般的です。
一方、労災保険や雇用保険にかかる労働保険料は、給与が発生しない場合は支払う必要がありません。労働保険は賃金に応じて保険料が算出されるためです。
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休職中の従業員へ必要な対応とは?
休職中の労働者にはどのような対応が適切なのでしょうか。ここでは、定期的な連絡の必要性、解雇や退職の判断について解説します。
定期的に連絡すること
休職中の労働者に対しては定期的に連絡をとり、症状の経過を把握することが大切です。同時に、労働者の精神的不安を和らげ、復職に向けた意欲を高めることも重要となります。連絡頻度は1カ月に1回程度が一般的です。連絡手段としては、メールや電話、面談が挙げられます。
休職開始直後では、労働者の精神的負担が少ないといわれるメールで連絡をとることがおすすめです。症状が回復すれば、電話や面談などを取り入れることも有効です。連絡の窓口は一本化することで行き違いを防ぎ、休職中の労働者のストレスを軽減できます。
企業側の連絡の担当者としては、直接の上司の他、人事部や総務部の人員が務める場合もあります。特に、業務で生じたメンタルヘルスの不調による休職のケースでは、日頃の業務から離れた立場にある担当者が適しているといえます。
復職に向けた相談を受けること
労働者からの定期報告や医師の診断書を受け、症状に回復が見られる場合は、復職に向けた相談をしていきます。ヒアリングが必要な事項は、体力や集中力が回復したか、復職意思の有無、復職希望時期などについてです。
特にメンタルヘルスの不調によって休職した労働者の場合は、細心の注意を払う必要があります。たとえ本人に復職希望があったとしても、安易に休職期間を終了してしまうと、症状が再発するリスクが高まります。
復職の相談は、主治医のみで判断するのは難しく産業医との連携が非常に重要になります。以下では主治医と産業医の役割の違いについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:主治医と産業医の違いとは?それぞれの役割や仕事内容・意見に違いがある場合に企業がするべき対応
解雇や退職の判断をすることも
休職していても労働者がなかなか回復せず、復職の目処が立たない場合があります。休職期間が満了となっても復職できない場合には、退職や解雇扱いとなります。解雇の場合には労働基準法により、労働者に対して30日前に告知すること、または30日分の予告手当を支給する必要があります。
不当解雇として労働者との間でトラブルになるのを避けるためには、あらかじめ就業規則で、休職期間満了時までに復職できない際の取り決めを明示しておくことが大切です。
復職できない場合は自然退職とすることを定めておけば、企業としても負担が少なく、円滑に退職の対応を進められるでしょう。
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まとめ|労働者の休職に備えて就業規則の整備と産業医の活用を!
一時的に働けなくなった労働者の雇用を守る休職制度。企業の就業制度によって休職制度は異なり、期間の上限や手続きといった取り決めも違います。
また、休職は労働者、企業双方にとって痛手となります。労働者が休職してしまった場合の対応も大切ですが、できれば不調を早期発見し、休職を予防したいところです。
休職者を減らすためには、常日頃から従業員の健康管理に気を付けることが大切ですし、仮に休職となった場合は、復職に向けて主治医だけに任せるのではなく、産業医との連携が非常に重要となってきます。
産業医は、労働者の健康をサポートする医療の専門家です。産業医をうまく活用して、快適な労働環境を整えましょう。Dr健康経営では「産業医コンシェルジュサービス」をおこなっています。まずはお気軽にお問い合わせください。
そのお悩み、Dr.健康経営に相談してみませんか?
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