従業員が産業医面談を拒否する場合はどうするべき?強制力の有無や対策を徹底解説!

日付2022.04.25
更新日:2022.05.10
従業員が産業医面談を拒否する場合はどうするべき?強制力の有無や対策を徹底解説!

従業員の体調不良は企業の生産性を下げてしまいます。意欲的に働き続けるためには、健康管理がとても重要です。産業医面談では医師が中立の立場から、従業員・企業の双方にアドバイスを行い、不調の早期改善の手助けをします。

健康維持のために有用な産業医面談ですが、中には面談を拒否する従業員もいます。産業医が活用されないのでは企業にとっても従業員にとっても損失です。

本記事では、産業医面談とはどのようなものなのか、何故従業員が面談を拒否する場合があるのか、そしてその対処法を解説します。

産業医面談の必要性

産業医面談の必要性

まずは、産業医面談の目的や、強制力があるのかを解説します。より詳しい内容や流れについては『産業医面談の内容と流れのポイント、具体例とともに徹底解説!』を参考にしてください。

産業医面談の目的

産業医とは従業員が健康に働き続けるために、専門的・中立的立場から指導や助言を行う医師のことです。産業医面談では医師が直接、従業員と面談をして身体や心に不調がないかを確認します。問題がある場合には、改善のためのアドバイスがなされます。

企業には労働契約法によって、従業員が健康に働ける環境を用意する義務があります。産業医面談を行うことによって、企業は従業員の健康を守れるのです。産業医面談の活用について詳しくは『産業医面談を上手く活用するには?義務や目的・企業側が配慮すべきことを解説』を参考にしてください。

産業医面談の強制力は?

産業医面談の実施に法的拘束力はありません。従業員に面談を受けさせる義務が企業にあるわけではないのです。また、従業員本人の希望なしに、企業が面談を強制することもできません。面談が推奨される状況でも、さまざまな理由から従業員が拒否することがあります。

注意しなくてはならない点は、従業員の不調により労災が発生した場合、事前に産業医面談を実施していなければ企業が措置を怠ったとみなされやすくなることです。また、産業医面談を行わなかったことで従業員の健康状態を把握できず、生産性が下がってしまうことも考えられます。

産業医面談を行う主なケース

どのような場合に産業医面談が行われるのか、主なケースを3つ解説します。

健康診断の結果

健康診断によって従業員の心身の不調が見つかった場合、企業は就業上の措置について、3カ月以内に医師の意見を仰ぐ必要があります。企業は医師の意見を参考に、業務での作業内容や労働時間について必要に応じた改善が求められます。産業医は健康診断の結果を確認した上で該当従業員との面談を行い、身体・精神の状況の聞き取りを行うとともに改善策のアドバイスなどを提供します。

従業員の体調不良を放置しておくと状況が悪化し休職や退職につながることもあります。健康上の問題を早期発見し、深刻化する前に改善することが健康診断の目的です。健康診断をただ実施するだけでなく、得られたデータを健康管理に活かすことが大切です。

ストレスチェックの結果

ストレスチェックでは複数の質問項目への回答から、回答者のストレス状態を測定します。従業員が常時50人以上いる企業では、ストレスチェックの実施が義務付けられています。厚生労働省の調査によると、仕事・就業に関するストレスを感じている人の割合は54.2%にものぼります。

高ストレス状態の従業員に対しては、産業医が結果を通知した上で産業医面談を希望するか聞き取りを行います。産業医の役割は高ストレス状態の従業員にストレス緩和のアドバイスを行うとともに、企業に対して適切な措置を助言することです。面談の結果によって緊急性が認められる場合は従業員本人の同意がなくとも、産業医は企業と情報を共有します。

出典:厚生労働省「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」|結果の概要|個人調査

長時間労働

2020年の厚生労働省の調査によると、仕事上のストレスの原因として「仕事の量」と回答した労働者が42.5%と、最も多い結果になりました。仕事量が多く長時間労働が発生すると従業員の健康が害されることもあります。健康管理のために、労働時間が一定の基準以上の従業員は産業医面談が実施されます。

面接の対象となるのは1カ月あたりの時間外・休日労働時間が80時間を超えている場合です。従来の基準は100時間以上でしたが、2019年の働き方改革関連法によって80時間以上と対象が拡大されています。また、基準に達していなくても、疲労の蓄積が認められるなどの状況によっては産業医面接が必要となります。

出典:厚生労働省「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」|結果の概要|個人調査

従業員が産業医面談を拒否する主な理由

従業員が産業医面談を拒否する主な理由

健康維持に役立つ産業医面談ですが、対象の従業員が面談を拒否する場合があります。拒否の主な理由はさまざまです。業務が多忙で面談を受ける時間が捻出できないこともあります。従業員が自身の健康上のリスクについて、企業に把握されたくないと考えているのかもしれません。医師に対して苦手意識があり、一対一の面談にプレッシャーを感じている可能性もあります。

安心して産業医面談を受けられる環境づくりには、従業員の立場に寄り添った措置が求められます。従業員が面談を拒否する原因を知り、適切な対処を行うことで面談の実施を促しましょう。大切なのは従業員が感じている面談のデメリットを解消し、その上でメリットを伝えることです。具体的な対処法は後述します。

【対処法】従業員が産業医面談を拒否した場合

従業員が産業医面談を拒否した場合、どのような対処法があるのでしょうか。拒否の理由別に企業ができる4つの方法について具体的に紹介します。

日程の選択肢を用意する

時間がとれないことを理由に、産業医面談を拒否する従業員は少なくありません。多忙な従業員のためには、無理せず面談を受けられるよう面談日時の選択肢を柔軟に設定しましょう。できるだけ忙しくない時間帯に設定しておくことも大切です。

また、業務で緊急の案件が入った場合、面談の日程変更ができる旨を伝えておくことで従業員もプレッシャーを感じることなく予約が入れられます。負担を減らすことで、面談について前向きに検討できるようにしましょう。

時間に関係なく仕事が忙しいようであれば、面談対象の従業員が抜ける間のサポートについて、上司や同僚に事情を説明することも良いでしょう。ただし、産業医面談の対象であることを周囲に知られたくない人もいるため、慎重に行う必要があります。

産業医面談は法律によって義務付けられていることを伝える

産業医面談を勧める際は、面談が法律によって義務付けられていることも同時に伝えましょう。法律が関わるとわかれば面談について、より真剣に取り合ってもらいやすくなります。

前述したように、従業員には産業医面談を受ける義務はありませんが、企業には面談を実施する義務があります。面談の実施がないまま、従業員が健康上の問題から働けなくなれば企業が責任を問われる恐れもあります。企業として安全配慮義務を果たしていると証明するためには産業医面談の実施が必須です。

同時に従業員には自らの健康を管理する義務があります。健康上の懸念がある場合は専門家のサポートを受けることが大切です。産業医面談は企業にとっても従業員個人にとっても必要であることの理解を得られるようにしましょう。

産業医面談における守秘義務を伝える

産業医面談における守秘義務について伝えることで従業員の面談への不安を緩和することができます。健康上のリスクについて企業や上司に知られたくないと考える従業員も少なくありません。産業医面談の実情を周知し、デメリットがないことを知ってもらえれば面談を受けてもらいやすくなります。

産業医についてよく知らない場合、産業医は企業側の立場にあり、全ての情報を共有していると考える従業員もいるかもしれません。しかし、実際には産業医は中立の立場を取っています。また産業医には守秘義務があり、面談で知り得た情報を口外してはならないことになっています。面談は医師との一対一で行われ、上司などが同席することもないため、安心して受けられます。

産業医面談を受けるメリットを説明する

従業員にとって産業医面談のメリットが感じられない場合、面談を積極的に受けてもらえません。面談の目的や、面談を受けることによる効果を説明し、面談について前向きに検討してもらいましょう。

従業員が産業医面談を受けるメリットは、健康を維持しながら長く働き続けられることです。ちょっとした不調だと思っていたことが、実は深刻な病気であることも考えられます。産業医面談では仕事の話のみならず、プライベートでの不調や持病についても相談できます。

産業医面談は医療の専門家からのアドバイスを受けられるチャンスであり、不調の早期発見・早期治療にもつながります。特にメンタルヘルスの不調については自分で気付きにくいこともあるため、医師からの助言を受けることが大切です。

【対応】従業員が産業医面談を受けてくれない場合

日程を従業員に合わせて調整し、守秘義務があることを伝えてメリットを説明した場合でも、従業員が面談を拒否することがあります。手を尽くしても従業員が拒否すれば、企業から面談を強制することはできません。しかし、面談を実施しないまま放置しておくと安全配慮義務違反とみなされる危険性があります。

従業員への産業医面談の勧奨については、後から外部機関にも証明できるように客観的な記録を残しておく必要があります。面談の通知を行った回数や日時、従業員が面談を拒否した旨や理由、面談の代替措置など、企業として努力を行った記録をつけておきましょう。できる限り細かく具体的に記録しておくことで、安全配慮義務を果たしたと認められやすくなります。

まとめ

産業医面談は従業員が健康に長く働き続け、企業にとっても生産性を維持するために欠かせないものです。しかしさまざまな理由や懸念から面談を勧めても従業員が拒否してしまうことがあります。拒否の理由を知り、適切に対処することで面談を受けてもらいやすくなるでしょう。

また、従業員が必要な産業医面談を受けない場合、企業は安全配慮義務を怠っているとみなされる恐れがあります。どうしても面談を受けてもらえない場合には、面談実施の努力過程を記録しておきましょう。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。