産業医の役割・選任
「産業医の賠償責任保険について徹底解説!特徴や要件、具体的なケースとは」
産業医に関する保険には、業務中に不測の事故が発生した場合に、医師個人の賠償責任を保証する保険があります。一般的には「産業医等活動保険」「産業医損害保険」「産業医向け賠償責任保険」「産業医等活動賠償責任保険」といった名称のことが多いようです。保険を提供している会社によって名称は異なりますが補償内容はほとんど変わりません。
なおこの記事では便宜上、「産業医等活動賠償責任保険」という名称を使用します。この保険の特徴や要件を解説するので、産業医の導入を検討、または既に導入している企業の方は参考にしてください。
目次
産業医等活動賠償責任保険とは
産業医等活動賠償責任保険には保険金が支払われないケースがあります。まずは、保険の概要や特徴、保険金が支払われないケースに該当する項目などについて解説します。
産業医等活動賠償責任保険の概要
産業医等活動賠償責任保険とは、医療行為を行わない産業医などが職務上の判断や対応によって不測の事故になり、損害賠償の責任を負った場合に備えて加入できる保険です。保険の対象者は産業医だけでなく学校医や保育所の嘱託医などが挙げられます。
不測の事故としてはさまざまなことが考えられますが、例えばストレスチェックや健康診断などで所見ありの労働者に対して「勤務に支障がない」などの誤った判断によって労働者の健康状態が悪化したケースなどです。
本来発生しなかった治療費や入院費などの負担が増えたり、仕事に復帰する時期が遅れたりすることで給与が減ったなどの経済損失を理由に産業医または企業と労働者の間で損害賠償が発生する可能性があります。
産業医等活動賠償責任保険に加入しておくことで、不測の事故で損害賠償を請求された場合に備えられるため安心です。
産業医等活動賠償責任保険の特徴
産業医等活動賠償責任保険は、医療行為以外の活動で損害賠償責任を負った場合に保険金を受け取れる保険です。したがって、医療行為によって不測の事故を引き起こし損害賠償が発生した際に保険金が支払われる医師賠償責任保険とは補償対象が異なります。なお、産業医は労働者に対する医療行為が認められていないため医師賠償責任保険には加入できません。
産業医と主治医の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
主治医と産業医の違いとは?それぞれの役割や仕事内容・意見に違いがある場合に企業がするべき対応
産業医等活動賠償責任保険が支払われないケース
産業医等活動賠償責任保険に加入しても保険金が支払われないケースがあります。日本医師会の資料によると、以下のケースに該当する場合は補償を受けられません。(※)
産業医が医療行為を行った場合
故意または重過失によって履行が不能・遅滞となった場合
産業医をはじめとする嘱託医業務の履行の追完や再履行、業務結果の改善や修補、業務に対する報酬の返還を行った場合など
なお、追完とは必要な要件を満たしていなかったが後に要件を備えたことを指し、再履行とは後から要件を満たすことを指します。
※参考:日本医師会|日本医師会医師賠償責任保険制度 産業医・学校医等の医師活動賠償責任保険【解説】
産業医等活動賠償責任保険の要件
産業医等活動賠償責任保険では加入するための要件が定められています。以下では、一般的な保険の加入対象者や、保険金が支払われるケース、保険金の種類について解説します。
加入できる対象者
産業医等活動賠償責任保険の加入対象は、大きく分けて個人契約と診療所契約に分けられる傾向があります。個人契約は産業医をはじめとする嘱託医個人が対象であり、診療所契約は診療所を開設した人が対象です。
保険の対象になる主な活動は、労働者の健康管理に関する活動を行う産業医や生徒・児童などの健康をサポートする学校医や保育所等児童福祉法に定められている嘱託医が行う業務です。(※)
※出典:産業医等活動賠償責任保険|MRM
保険金が支払われるケース
産業医等活動賠償責任保険は産業医の活動中に不測の事故が発生し、法律上の賠償責任を負った場合の損害に対して保険金が支払われます。
契約上の保険期間が定められているため、前述した保険金が支払われるケースに該当していても保険期間内でなければ保険金は支払われません。保険金が支払われないことを防ぐためには、保険の期限が切れていないかの確認が必要です。
保険金の種類
産業医等活動賠償責任保険で支払われる保険金は、以下の4種類に分けられます。
- ・損害賠償金
- 損害を与えた人に支払う治療費や慰謝料などの賠償金全般を指します。
- ・争訟費用
- 弁護士に支払う費用のことです。申請には保険会社から書面同意を得ておく必要があります。
- ・賠償責任がないと判断された際の費用
- 応急手当や緊急護送などにかかった費用のことで、法律上賠償責任がないと認められた場合に保険金が支払われます。
- ・他人から損害賠償を受けられる場合に支出した費用
- 発生した不測の事故による被害が拡大するのを防止するためにかかった費用を意味します。
産業医等活動賠償責任保険の補償拡充
日本医師会は会員からの熱望に応える形で、2016年7月から産業医・学校医等の医師活動賠償責任補償を拡充しました。2014年に労働安全衛生法の改正によってストレスチェック制度が導入されたことで、産業医の必要性はこれまで以上に増しています。産業医は労働者の健康と安全な職場環境づくりのため、健康診断結果の確認や高ストレス者への面接指導、職場巡視などの重要な役割を担っています。(※)
※出典:日本医師会医師賠償責任保険制度 産業医・学校医等の医師活動賠償責任補償を拡充|日本医師会ポータルサイト
ストレスチェック制度の詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
ストレスチェック制度とは?義務化の背景や労働者への対応・手順や費用など詳しく解説
まとめ
産業医に関する保険には、産業医が活動中に起きた不測の事故に対する損害賠償が発生した際に保険金が支払われる保険があり、提供元によって保険の名称は異なります。
一般的には「産業医等活動保険」「産業医損害保険」「産業医向け賠償責任保険」「産業医等活動賠償責任保険」といった名称のことが多いです。
これらの保険は医師賠償責任保険では補償されていない医療行為以外の補償をカバーできます。
産業医を導入する際は、いざという時のために本記事で説明した内容を保障するような、産業医に関する保険に加入しておくと安心です。また、不測の事故リスクを減らすためには優秀な産業医の選任が重要です。
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