健康経営・職場改善

健康経営銘柄とは?ホワイト500との違いや2023年事例を解説

日付
更新日:2023.07.19

「国民の健康寿命の延伸」のため、国が企業に促進している「健康経営」。健康管理を経営的な視点で考えて実践することで、従業員の活力や生産性アップに繋がり、企業の業績向上につながると言われています。

そんな健康経営促進のため、上場会社の中で、健康経営が優れた企業が選定される「健康経営銘柄」とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

この記事では、ホワイト500、健康経営優良法人との違いなどの基礎知識から、取得方法、メリット・デメリット、2023年度の認定事例についても解説します。

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選ぶ優れた企業に贈られる称号のことです。

上場している企業の中から、健康経営に特に力を入れている企業を選び、長期的な企業価値の向上が期待される企業として投資家に紹介します。これによって、健康寿命を伸ばすため、日本中の企業の健康経営を促しています。

2大顕彰「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の違い

ここでは、「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」の違いを以下の表にまとめました。

健康経営銘柄 健康経営優良法人
目的

健康長寿社会の実現に向けて、健康の保持・増進を経営的な視点で実践する「健康経営」の推進

開始

2014年度

2016年度

概要

健康経営優良法人に認定された大規模法人部門の「上場企業」のうち、特に優れた企業が選定される

大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれる

※大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」/中小規模法人部門の上位500法人は「ブライト500」

申請できる企業

東京証券取引所の上場企業のみ

制限なし
(非上場企業や団体も応募可能)

認定・選定機関

経済産業省と東京証券取引所が共同で選定

日本健康会議が認定

2023年実績

49社

大規模法人部門2,676法人/
中小規模法人部門14,012法人

上記の通り、目的は同じ「健康経営」の推進です。超高齢化社会と言われているこの時代に、健康的で活気に満ちた職場環境を提供できる企業は、投資家や人材採用の側からも魅力的な存在となります。また位置付けについては、「健康経営銘柄は、健康経営優良法人の中の一部」です。

健康経営優良法人は、大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれ、直近では大規模法人部門2,676法人、中小規模法人部門14,012法人が表彰されています。

健康経営銘柄は、その大規模法人部門の中でも、東京証券取引所で上場をしている、「特に優れた企業」が選定されるものです。そのため、申請できる企業としては、「健康経営銘柄は東京証券取引所の上場企業のみ」、「健康経営優良法人は制限なし」となっております。

また、経済産業省の資料内の図もわかりやすいため、こちらで紹介します。詳しくは引用元をご参照ください。

“引用:経済産業省ヘルスケア産業課「健康経営の推進について」

「健康経営銘柄」と「ホワイト500」「ブライト500」の違い

では、「健康経営銘柄」と「ホワイト500」、「ブライト500」の違いはなんでしょうか?

健康経営優良法人の中の、大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」と呼ばれ、中小規模法人部門の上位500法人は「ブライト500」と呼ばれています。

「健康経営銘柄」とは、大規模法人部門の特に優れた「上場企業」が選定されるものです。そのため、位置付けとしては、ホワイト500と健康経営銘柄のW受賞もありえるということです。

実際、花王株式会社は7年連続で「健康経営銘柄」に選定、5年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」にも認定されています。

ちなみに「ブライト500」は2020年度から開始されたもので、「健康経営優良法人の中でも優れた中小規模法人」かつ「地域において健康経営の発信を行っている企業」を認定しています。

「ホワイト500」について、詳しくは以下の記事でも解説していますので、参照ください。

健康経営銘柄のメリット

健康経営銘柄に選ばれると、企業にとってどのようなメリットがあるのか解説します。

優秀な人材を獲得できる

健康経営に取り組んでいることが広く知られると、企業のイメージが向上し、信頼性や魅力が高まるため、優秀な人材を獲得する機会が増えます。

特に最近は、働き方改革の影響で、ワークライフバランスや福利厚生に関する情報に敏感な求職者が増加しているのが特徴です。

投資家から高く評価される

現代では社会的責任や情報開示への取り組みが重要視されています。そのため、社会的な信頼を得るためには、健康経営に取り組むことが必要となります。

離職率の低下

社員の健康を重視する会社であるということは、従業員のワークライフバランスも充実し、改善されることにつながります。

結果として、従業員の満足度やモチベーションが上がって、会社へのエンゲージメント・愛着が醸成され、離職率の低下にも寄与すると考えられます。

生産性の向上

もし従業員が健康状態が悪い場合、頻繁に欠勤や休暇が発生し、職場の生産性が低下する可能性があります。

ただ、食生活の改善や運動習慣の促進などの施策を通じて、従業員の健康状態を改善することで、従業員それぞれの集中力が向上し、生産性も向上するでしょう。

職場環境の改善

健康経営には「残業時間の削減」や、「ストレスフルな仕事への対応」なども含まれるため、従業員にとって働きやすい職場環境の実現も期待できます。

また、経営陣が「健康経営に取り組む」とメッセージを発信することで、現場のマネージャー層の意識にもいい影響を与えることができます。

医療費を抑えられる

従業員の社会保険料に関しては、企業が折半して払う仕組みになっています。もし従業員が心身の健康の調子を崩して、入院や通院をした場合は企業にもコスト負担がかかってきます。

ただ、健康経営を進めて、従業員が心身ともに生き生きしている状態であれば、医療費などの出費は払うことなくおさまります

健康経営銘柄のデメリット

結果が出るのに時間・コストがかかる

健康経営銘柄に申請しようとして、健康経営の取り組みを開始しても、結果が現れるまでには時間と人材コストがかかる場合が多くあります。

実際には、「時間と人材コストを投じて健康経営施策に取り組んだけれど、従業員にうまく浸透せず、途中で断念せざるを得なかった」というケースも少なくありません。

効果が分かりにくい

健康経営についての数値化が難しいことが多く、効果が見えにくい点もデメリットといえます。

全体の傾向を割り出そうとしても、各部署によって、業務都合や従業員の事情が異なってきます。辛抱強く、年単位など長期間にわたって効果を測定するのがおすすめです。

従業員の不満につながる場合も

健康経営の一環で、オフィスを禁煙にする会社は多いですが、喫煙者が不満の声をあげるなどのケースが考えられます。施策を行うことによって、「どういうメリットがあるのか」をしっかり説明できるようにしておきましょう。

また、一部でやっている施策を紹介してしまうと、「うちの部署ではそんな健康施策はない」というような部署間の違いに注目されてしまいます。全社的にアナウンスする場合は、誰もが参加できる形で企画するようにしましょう。

また、こちらも参考にしてください。

2023年健康経営銘柄について

2023年健康経営銘柄49社一覧

直近、第9回となる「健康経営銘柄2023」では、31業種から49社が「健康経営銘柄」として表彰されました。

具体的な企業名はこちらです。

“参考:経済産業省「「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!」

2023年健康経営銘柄の選定基準

健康経営銘柄となるために必要な条件は、以下の通りです。

  • ・東京証券取引所に上場していること
  • ・「健康経営度調査」の総合評価の順位が上位20%以内であること
  • ・ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上、または直近3年連続で下降していないこと
  • ・重大な法令違反などがないこと

このように、健康経営度合いのみではなく、ROEや前年度のアンケート回答状況、社外への情報開示状況などについても基準となっています。

「健康経営度調査」では以下のような点から総合的に評価されます。

  • ・健康経営が経営理念・方針に位置付けられているか
  • ・健康経営に取り組むための制度があり、施策が実施されているか
  • ・健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか
  • ・健康経営の取り組みを評価し、改善に取り組んでいるか

また、以下の必須項目をすべてクリアする必要があります。

  1. 1.経営宣言の社内外の発信
  2. 2.健康経営に関して役員が責任者になり、保険者と連携していること
  3. 3.健康経営に基づいた具体的目標の設定
  4. 4.受動喫煙対策に関する取り組み
  5. 5.産業医や保健師の健康保持・増進施策への関与
  6. 6.健康保持・増進を目的とした導入施策の効果検証
  7. 7.定期健診や特定健康診査、特定保健指導の実施
  8. 8.その他健康管理に関する法令に違反していないこと

最新の健康経営銘柄の選定プロセスの図をご紹介します。

“引用:ACTION!健康経営「2023健康経営銘柄 選定企業紹介レポート」

あなたの企業はどうでしょうか?ぜひ今の組織の状態や、過去の実績なども調べてみることをおすすめします。

2023年健康経営銘柄の選定スケジュール

健康経営銘柄に選定されるには、毎年実施される健康経営度調査への回答が必須となります。詳細な日程は毎年異なってきますが、例年同じようなタイミングで進みます。

  • ・健康経営度調査への回答:8月〜10月
  • ・フィードバック:翌年2月内定
  • ・健康経営銘柄・健康経営優良法人の発表:翌年3月ごろ

また、毎年調査のポイントが変わってきており、直近の2023年度調査の主な変更ポイントは、(1)情報開示の促進、(2)業務パフォーマンスの評価・分析、(3)データ利活用の促進でした。

(1)情報開示の促進

人的資本に関する情報をより透明化する目的で、健康経営度調査の項目に、経営層のコミットメントや健康施策のアウトプットに関する定量的な情報を書く必要があります。

(2)業務パフォーマンスの評価・分析

業務パフォーマンス指標を活用し、健康経営の効果の見える化を促進するため、アブセンティーイズム(傷病による欠勤)、プレゼンティーイズム(出勤はしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況)、ワークエンゲイジメント(仕事へのポジティブで充実した心理状態)の経年変化の開示について回答する必要があります。

(3)データ利活用の促進

健診情報やライフログデータ等のPHR(パーソナルヘルスレコード)の利用促進を踏まえ、従業員のヘルスリテラシーの向上を促すため、健診情報等を電子記録として閲覧するための環境整備が評価基準に追加されました。

健康経営銘柄取得を検討する場合は、早めに社内で「どういう情報が必要なのか」「どういう体制が必要なのか」「どういう取り組みを提出するのか」など、企画を通しておきましょう。

2023年健康経営銘柄の具体的な取り組み

では、健康経営銘柄には、具体的にどんな取り組みが表彰されるのでしょうか?

最新のノミネート事例の一部を紹介します。

富士フイルム株式会社

「富士フイルムグループ 7つの健康行動」として、以下の健康指針を実施しています。

  1. 1.週1回以上、体重をはかる
  2. 2.自分の健診結果を確認する
  3. 3.週1日以上、お酒を飲まない日をつくる
  4. 4.1日6時間以上の睡眠をとる
  5. 5.平均30分/日以上歩く
  6. 6.ウォーキングイベント「みんなで歩活」
  7. 7.たばこは吸わない

社員同士がこういった健康行動に沿って、お互いに健康に気を付けることができるのがいいですね。

“参考:富士フイルム ホールディングス株式会社「富士フイルムホールディングス「健康経営銘柄」に3年連続で選定」

SCSK株式会社

実は、1 回目から 9 年連続で選定された企業は、SCSK1 社のみでした。営業利益を伸ばしつつ、平均残業は20時間以下、有給取得消化率90.9%の達成などの実績があります。

健康経営に取り組んだ実績だけではなく、しっかりと利益を伸ばしている部分も出せると、素晴らしいですね。

“参考:SCSK株式会社「SCSK、「健康経営銘柄」に 9 年連続で選定」

TOTO株式会社

TOTOは健康管理・メンタルヘルス対策・健康増進(健康づくり)を三本柱とした健康配慮の取り組みをしています。

健康リスクを年代や性別、役職などで分けて、それぞれの環境の中で生き生きと過ごせるような、「健康リテラシー」を高めることをしています。
※健康リテラシーとは、健康に関する正しい情報を入手・理解して活用する力のこと。

“参考:TOTO株式会社「「健康経営銘柄」に8回目の選定 合わせて「健康経営優良法人」として7年連続で選定」

以上、具体的な3つの例を紹介しました。

あなたの会社で何気なく続いていることも、健康への取り組みとして紹介できるかもしれません。

その他の事例などについては、下記の記事を参照してください。

「健康経営銘柄」取得を進める上での注意点

「健康経営銘柄」取得を進める上での注意点は、「現場を巻き込むこと」です。

いくら経営陣が声をあげても、現場の温度感が伴っていなければ、「実態がない健康施策」になり、逆に従業員のモチベーションダウンに繋がりかねません。

日々の業務がある現場を巻き込むことは、とても大変なことと思いますが、長期的な視点を持って現場を巻き込み、会社全体が健康経営に取り組んでいる状態を実現するようにしましょう。

まとめ

昨今、健康経営について多くの実績をつくっている企業が増えてきています。あなたの企業も積極的に健康経営について考え、トレンドを逃さないようにして、自社に合った施策を実施することがおすすめです。

株式会社Dr.健康経営では、経験豊富なプロ産業医を紹介する「産業医コンシェルジュ」サービスを提供しています。従業員の健康管理・休職復職など幅広いサポートに対応可能です。産業医の導入を検討している方は、ぜひご相談ください。

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Dr.健康経営では、産業医紹介サービスを中心にご状況に合わせた健康経営サポートを行っております。
些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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