衛生委員会を設置する目的は?設置基準や各メンバーの役割・安全委員会との違いを解説

日付2021.11.20
更新日:2022.02.18

衛生委員会とは、従業員が安全に働ける環境作りを目指す組織です。一定の基準を満たす企業では設置が義務付けられています。衛生委員会を設置することになった場合、どのように運営すればいいのでしょうか。

この記事では、衛生委員会の設置基準や目的、役割などを解説しています。あわせて衛生委員会の具体的な運営方法やメンバー選任の注意点なども紹介しています。

衛生委員会が適切に運営されることで、現場の実態が把握でき、働きやすい職場環境を保つことができるでしょう。衛生委員会の設置や運営について疑問がある場合はぜひ参考にしてください。

衛生委員会とは?

衛生委員会とはどのようなものなのでしょうか。安全委員会の目的や設置基準、安全委員会との違いを解説します。

衛生委員会を設置する目的

衛生委員会を設置する目的は、企業側と労働者が協力して労働災害の防止に取り組むことです。労働安全衛生法18条によって、従業員50人以上の事業所は業種に関わらず衛生委員会を設置することが義務付けられています。

衛生委員会の主な目的として以下のようなことが挙げられます。
・労働者の健康を守る
・企業と労働者が協力して、労働災害を防ぐ取り組みを行う
・職場環境の向上、労働者の健康維持や改善のための話し合い
・ストレスチェック実施などの審議をする

過去には、企業側の一方的な判断によって現場の実情にそぐわない安全措置が実施され、結果として事故や健康被害が発生する例がありました。

このような労働災害の再発を防ぐため、労使一体となって職場の安全を考えるのが衛生員会の役割です。

また、衛生委員会での審議の結果は全労働者に共有されることになっています。

衛生委員会の設置基準

衛生委員会に似たものとして安全委員会が挙げられますが、これら2つは異なるものであり設置基準も違っています。

衛生員会の設置基準は、業種を問わず常時50人以上の労働者が働いている事業所が該当します。労働者とは正社員だけではなく、派遣社員、パートやアルバイトも含んだ人数です。労働者が50人を超えた時点で設置義務が生じるため、速やかに委員会メンバーを選任し委員会の運営にとりかかる必要があります。

安全委員会の概要や設置基準については次で詳しく解説します。

安全委員会との違いは?

安全委員会と衛生員会の大きな違いは設置義務が生じる基準です。

前述の通り衛生委員会は50人以上の労働者が在籍している場合、業種に関わらず設置する義務が生じます。一方、安全委員会の設置基準は業種によって異なります。

50人以上の労働者が在籍しており、安全委員会を設置する必要がある業種は以下のとおりです。
・林業
・鉱業
・建設業
・一部の製造業
(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)
・一部の運送業
(道路貨物運送業、港湾運送業)
・自動車整備業
・機械修理業
・清掃業

100人以上の労働者が在籍しており、安全委員会を設置する必要がある業種は以下のとおりです。
・上記を除く製造業
・上記を除く運送業
・電気業
・ガス業
・熱供給業
・水道業
・通信業
・各種商品卸売業/小売業
・家具/建具/じゅう器等卸売業/小売業
・燃料小売業
・旅館業
・ゴルフ場業

100人以上の従業員が在籍していることで設置義務が生じる業種では、衛生委員会と安全委員会の両方の開催が必要となります。多くの場合、これらは別々にではなく安全衛生委員会としてまとめて開催されます。

衛生委員会の開催と周知方法

衛生委員会は毎月1回以上の開催が必須となっており、原則的に業務時間内に行う必要があります。

委員会で話し合われた内容は全労働者に共有することになっています。そのため、周知方法に決まりはありませんが、従業員にとってアクセスが容易な方法をとることが大切です。

一般的な周知方法としては以下のようなことが挙げられます。
・社内掲示板への貼り出し
・社内報への記載
・イントラネットでの公開
・書面による交付
・社内メールでの配信

話し合われた内容は議事録として残しておかなくてはなりません。議事録は産業医による署名・捺印の後、3年間保存することになっています。

議事録が作成・保管されているかは、労働基準監督署の検査で確認されるため紛失等のないよう管理しておくことが大切です。

構成の内訳と各メンバーの役割

衛生委員会のメンバー選任の際にはいくつかのポイントあります。ここでは、一般的なメンバー構成の内訳を紹介します。

構成人数の内訳

法律上、衛生委員会の構成は議長以外の人数における決まりはありません。一般的な人数は議長以外の労使同数の7名、衛生管理者(人事担当者の場合は5名)となります。

構成人数
・議長:1名
(総括安全衛生管理者または事業の実務を統括する者、もしくはこれに準ずる者)
・衛生管理者:1名以上
・産業医:1名以上
・労働衛生業の経験者:1名以上
(当該事業場の労働者で、衛生に関して経験を有する者)

委員長以外のメンバーの半数は労働組合(労働組合がない場合は、労働者の過半数に指名された人物)で構成する必要があります。

衛生委員会のテーマと進め方

衛生委員会で話し合うべきテーマや、進行の流れについて解説します。あわせて委員会メンバーの選任における注意点も紹介します。

衛生委員会の主なテーマ

衛生委員会が扱う主なテーマは、主に以下の内容です。

・定期健康診断について
健康診断や二次検査の受診率のデータを報告します。その上で、受診率を向上させるための施策が検討されます。

・ストレスチェックについて
ストレスチェックの受検率や、高ストレス者割合などのデータを報告します。また、ストレスチェックについて社内規定に取り入れる内容の審議が必要です。年度ごとに、前年度の結果のフィードバックや、社内規定の改善が行われます。

・長時間労働について
労働時間の状況や、面談実施状況を報告します。それらに基づき、残業削減のための施策の検討や、パソコンシャットダウン時間の検討、ノー残業デーの導入などについて話し合います。

・職場環境の改善について
適切な温湿度が保たれているか、禁煙・分煙対策における企業の方針の確認といった、快適な職場作りに関連した議題を話し合います。その他、VDT作業時間(Visual Display Terminals、パソコンといった情報端末を使用する作業時間)や休憩時間の設定について検討します。

・季節特有の健康問題について
食中毒、熱中症、花粉症、インフルエンザなど、季節性のトラブルに対する社内ルールの確認をします。

・メンタルヘルスについて
休職、復職規定や相談支援体制の確認、メンタルヘルス研修実施の検討などを話し合います。

衛生委員会の進め方

衛生委員会の開催に先立ってあらかじめ参加メンバーには議題テーマを告知しておくことが大切です。委員会に備えてデータを整理したり、報告内容をまとめたりします。

委員会で行われる事項は主に「定例報告」と「テーマに関する調査審議」の2つです。

定例報告
・労働時間に関する報告(長時間労働該当人数や面談実施状況について)
・労働災害報告
・職場環境についての報告

テーマに関する調査報告
前述のテーマに沿った調査結果の報告やそれに基づいた職場環境改善策の話し合いをします。産業医や衛生管理者からの短い講義が行われることもあります。

衛生委員会の各メンバーの役割と選任する際の注意点

衛生委員会を構成するメンバーは、議長、産業医、衛生管理者、労働者です。

各メンバーがどのような役割を持っているのか、そして選任する際の注意点としてはどのようなものがあるのかについて解説します。

議長

議長は、委員会の議論の進行役として重要な役割を担っており、総括安全衛生管理者または事業の実務を統括する者、もしくはこれに準ずる者の中から選ぶことになっています。業種や労働者の人数に応じて、総括安全衛生管理者を選任することが必要です。

総括安全衛生管理者がいない場合は実務の統括者、またはそれに準ずる立場の人物から選任されます。多くの場合選ばれるのは、工場長や支店長、総務部や人事部の部長などです。

職場における責任者が議長になることで委員会で議論された課題の解決策が実施しやすくなり、具体的な職場改善が実現するでしょう。

産業医

産業医は医療の専門家として、労災の原因特定や再発防止などについてアドバイスする役割を持っています。

衛生委員会には、産業医の参加が必ずしも義務付けられているわけではありません。医師としての業務が重なり、議論への参加が難しいこともあるでしょう。

しかし、労働者の健康を守るためには、医療の専門家からの意見が重要です。そういった理由から、産業医はできる限り出席することが望ましいとされています。

出席が難しい場合には、事前にまとめたデータや、テーマに関する意見を提出しておくことも委員会に貢献するための手段となります。議論に直接参加はできなくても専門的な意見があることで残りの出席メンバーの議論も広がり、実りのあるものとなるでしょう。

産業医の他、産業保健師や衛生コンサルタントにも同じような役割が期待されます。

衛生管理者

衛生管理者の役割は、企業の衛生に関する事柄全般を管理することです。50人以上の労働者が在籍する事業場では選任の衛生管理者を置くことが義務付けられています。

衛生管理者となるには、「第一種衛生管理者」または「第二種衛生管理者」といった専門の資格が必要です。

第一種と第二種の大きな違いは、第二種は危険な業務や有害業務があまりない業務のみ衛生管理者になれるのに対し、第一種では業種や業務を問わず衛生管理者を任せることができることです。それぞれの具体的な役割については詳しく後述します。

衛生管理者は産業医や外部専門家とのやりとりを行う窓口ともなるため、職場の実情に詳しい従業員が適しています。その上で、専門知識も持った人物がふさわしいでしょう。

労働者

衛生委員会に参加する労働者は、衛生に関しての経験を持つことが条件とされています。人数に決まりはありませんが議決をとる際にスムーズな進行が行えるように委員会全体としては奇数人数になることが理想的でしょう。

労働者の代表として委員会に出席する従業員は、職場環境の実情や労働の現状を報告して課題や対策についての意見を提供します。また、委員会での決定事項を他の労働者と共有するための橋渡しも役割の一つです。

決定された改善施策が実際に職場で機能するためには労働者も大切な役割を担っています。

衛生委員会に必要な衛生管理者とは?

衛生委員会には、衛生管理者が必要です。ここでは、衛生管理者とはどのようなものなのかについて解説します。

衛生管理者に必要な資格

前述のとおり衛生管理者は資格の取得を必要とする専門家です。資格には2種類あり、それぞれ権限が異なります。第一種衛生管理者免許を所持している場合、危険業務や有害業務を含むすべての業種において衛生管理者となることができます。

また、高所作業や危険作業、有害物質を扱う業務、夜勤業務などを行う企業の衛生管理者も第一種衛生管理者免許が必要です。

その他、農林水産業、鉱業、建設業、製造業、電気、ガス、水道業、運送業や自動車整備業機械修理業、医療業、清掃業などで危険で有害業務とされる業務も、第一種衛生管理者の免許が必要です。

第二種衛生管理者免許を所持している人は、危険や有害業務を伴わない企業の衛生管理者となることができます。例えば、小売業や金融業、情報通信業などの業種です。

また、衛生管理者の資格に有効期限はないため、一度合格すれば、更新の必要がなく生涯使えるものとなります。

衛生管理者の役割

衛生管理者の役割は労働者の健康を守ることです。具体的な業務としてはいくつか挙げられます。

・衛生委員会への参加
・健康に異常のある労働者の発見、対応
・労働環境の調査、改善
・職場環境の改善プランの立案と実行
・衛生教育や健康相談
・保護具や救急用具の点検
・職場の有害性の調査、対応
・衛生計画の検討、実施
・業務環境の衛生の保持
・業務に起因する健康被害の統計作成

労働環境の改善は実行されれば目に見える結果として現れるため、やりがいがあるでしょう。ただし、労働者の健康や命を守る立場として責任が重く、大変な役割でもあります。

衛生管理者の届出と罰則

企業には衛生管理者を置くだけでなく、労働基準監督署への届出が義務付けられています。

衛生管理者の選任の届出は、衛生管理者が必要となった時点(50人以上の労働者が在籍する場合)から14日以内に行うことが必要です。厚生労働省のホームページで専用の届出用紙がダウンロードできるようになっています。

※参考:厚生労働省.「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/20.html
(参照 2021-11-13)

期限内に届出をしなかった場合には罰則が設けられており、50万円以下の罰金、または6カ月以下の懲役刑が科せられます。

届出に期限や罰則があり日々忙しい業務の中であわせて行わなければならないことから、衛生管理者の選任や届出は早めに準備しておくことが大切です。

衛生委員会と衛生管理者が機能していくためのポイント

衛生委員会と衛生管理者が適切に機能し効力を発揮するためには、いくつかおさえるべき点があります。そこで、具体的なポイントを紹介します。

年間計画に沿って進めて行く

衛生委員会と衛生管理者が円滑に機能するには年間計画を立てることが大切です。また、立てた計画は年度ごとに見直すことも欠かせません。

年間計画では月ごとに発生しやすいトラブルや、チェックすべき項目を盛り込んでおくと、より実情に沿った議論ができるでしょう。

例えば、夏の暑い時期には食中毒や熱中症予防について、冬の冷え込む時期にはインフルエンザや腰痛などについてといったようにそれぞれ衛生委員会の実施月に合った計画を立てることが大切です。

年間計画で目標を立て、それが達成できなかった場合には、次年度に原因を洗い出し、対策を立てることが、職場環境の改善に繋がります。

他社の取り組みを参考にする

衛生委員会を初めて設立する場合は、どのように進めて行けばいいのか分からないケースも少なくありません。そのような際は、他社の取り組みを参考にすることで、自社の衛生委員会の方向性が定まります。

厚生労働省のホームページには、安全衛生優良企業の取り組み事例が載っているのでこちらを参考にするといいでしょう。

※参考:厚生労働省.「安全衛生優良企業の取組事例」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075574.html
(2021-11-13参照)

他社を参考にしているうちに衛生委員会運営の要領が掴め、次第に円滑に機能するようになります。

産業医に相談する

衛生委員会の運営に悩んだ際は産業医に相談することもおすすめです。産業医は、衛生管理者の資格を取得していなくても衛生管理者の業務に従事することができます。

また、労働者の健康管理や作業環境の衛生保持といった事柄においての高度な専門知識があり、実務経験もあるため適切な助言が期待できます。

衛生委員会の設置や進め方について疑問がある場合も労働衛生の専門家である産業医に相談することでスムーズに進められるでしょう。

衛生委員会を活用し職場環境の改善を

衛生委員会を適切に機能すれば職場の労働環境を快適に保ち、企業の生産性を上げることが可能です。また、企業の身近な専門家である産業医を配置することで、衛生委員会の円滑な運営の大きなサポートとなるでしょう。

「株式会社Dr.健康経営」は、メンタルケアに強い「産業医」サービスです。従業員一人ひとりが生き生きと働けるように健康経営のサポートを行っています。

従業員の健康を考えた職場環境作りのためにDr.健康経営の活用をご検討ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太(すずき けんた)
代表取締役/医師・産業医

1989年、東京都国立市出身。2009年、筑波大学医学部へ入学。
在学中にKinesiology, Arizona State Universityへ留学し、医学・経済学・人文学等を学ぶ。
卒後は国立国際医療研究センターで勤務医として働く。
予防医療の重要性に気づき、帝京大学公衆衛生大学院で健康経営を研究しつつ、産業医として多くの企業を担当する。