健康経営・職場改善

衛生委員会とは?目的や構成メンバーの役割、安全委員会との違いをわかりやすく解説

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更新日:2023.07.03

衛生委員会とは、従業員が安全に働ける環境作りを目的に活動する組織です。一定の基準を満たす企業では、衛生委員会を設置することが法律で義務付けられています。

もしも、衛生委員会を設置することになった場合、どのように立ち上げや運営を進めていけばよいのでしょうか。

本記事では、衛生委員会の設置基準や目的、役割を解説します。あわせて衛生委員会の具体的な運営方法や、メンバー選任の注意点なども紹介するので、疑問をお持ちの企業はぜひ参考にしてみてください。

衛生委員会とは

退職者を出さないための対策

衛生委員会はどのような目的で設置され、どのような企業で設置義務が発生するのでしょうか。

まずは、衛生委員会の基本的な概要を解説します。

衛生委員会をわかりやすくいうと

衛生委員会とは、労働災害や健康障害を防ぎ、従業員が安全かつ健康に労働できる職場環境を目指すために設置される組織です。

労働安全衛生法 第18条では、「従業員50人以上の事業所は、業種に関わらず衛生委員会を設置すること」を義務付けています。

少しわかりにくいですが、「衛生」は“健康を守り病気の予防を図ること”で、いわゆる健康管理を意味すると考えて問題ありません。衛生委員会では、安全と健康に関するさまざまな事項を協議し、企業として取り組むべき問題とその方法について決定します。

出典:e-GOV法令検索労働安全衛生法

衛生委員会の目的

衛生委員会の具体的な目的は、以下のとおりです。

    • 労働者の健康を守ること
    • 企業と労働者が協力して、労働災害を防ぐ取り組みを行うこと
    • 職場環境の向上、労働者の健康維持や改善のために話し合うこと
    • ストレスチェック実施などの審議をすること

過去には、企業側の一方的な判断によって現場の実情にそぐわない安全措置が実施され、結果として事故や健康被害が発生する例がありました。

このような労働災害を防ぐために労使一体となって職場の安全を考えるのが、衛生員会の役割なのです。

衛生委員会の設置義務が生じる基準

業種を問わず、常時従業員が50人以上の事業場では、衛生委員会を月に1回開かなくてはいけません。従業員の人数には、正社員だけではなく派遣社員やパート、アルバイトも含めます。

衛生委員会の設置義務は「従業員が50人以上になった時点」で生じるため、要件を満たす前に準備を済ませなければなりません。あとから慌てることがないよう、余裕を持って委員会メンバーを選任して運営に備えましょう。

衛生委員会の開催頻度と周知方法

衛生委員会の実施頻度は毎月1回以上が必須であり、業務時間内に行うことが原則です。

委員会で話し合われた内容は、全労働者に共有することになっています。周知方法に決まりはありませんが、従業員にとって利便性が高い方法を選ぶことが大切です。

一般的な周知方法としては、次のようなものが挙げられます。

    • 社内掲示板への貼り出し
    • 社内報への記載
    • イントラネットでの公開
    • 書面による交付
    • 社内メールでの配信

なお衛生委員会で話し合われた内容は、議事録に残しておかなくてはなりません。議事録は産業医による署名・捺印のうえ、3年間保存することが義務付けられています。

議事録が作成・保管されているかは、労働基準監督署の検査で確認されます。紛失等がないよう、しっかりと管理しておくことが大切です。

衛生委員会と安全委員会の違い

衛生委員会と似た言葉として「安全委員会」というものがあります。なかには、衛生委員会と安全員会の違いを理解できていない方や、どちらが自社に必要なのか迷っている方がいるかもしれません。

ここでは、衛生委員会と安全員会の違いを解説します。

安全委員会とは

安全委員会とは、労働者の危険を防止するための対策や、労働災害の原因および発生防止対策などを調査・審議し、事業者に対して意見を述べる委員会を指します。

業種によっては、衛生委員会だけでなく安全委員会の設置も必要になる場合があります。この場合、両委員会を合併させて安全衛生委員会として開催することが一般的です。

安全委員会の設置基準

一定の業種および規模の事業場では、安全委員会を設置しなければいけません。安全委員会の設置が義務付けられている業種は、林業や建設業、製造業などです。

安全委員会の詳しい設置基準は、以下の表をご覧ください。

業種 常時使用する労働者の数 安全委員会 衛生委員会
林業、鉱業、建設業、製造業の一部(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業 50人以上 必要 必要
製造業(1以外)運送業(1以外)電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業 100人以上 必要 必要
50人以上100人未満 義務なし 必要
1と2以外の業種 50人以上 義務なし 必要

出典:厚生労働省安全委員会、衛生委員会について教えてください。

安全委員会の設置が必要な場合(50人以上かつ特定業種)は、必ず衛生委員会の設置条件も満たすことになります。そのため、通常は「安全衛生委員会」として開催することになり、安全委員会のみの設置というのは原則ありません。

衛生委員会を立ち上げる流れ

衛生委員会を立ち上げる流れと必要な書類を説明します。衛生委員会を立ち上げる際は、ここで紹介する規定や書類を作成・保存しておきましょう。

Dr.健康経営では、各書類のフォーマットを無料で提供しています。ご活用いただくことでスムーズに必要書類を作成可能なので、ぜひお気軽にダウンロードしてみてください。

産業医の選任、衛生管理者の選任、労基署へ選任届の提出

労働者50名以上の事業所では、産業医と衛生管理者を選任し、労働基準監督署へ選任届を提出する必要があります。労働基準監督署への提出は、産業医と衛生管理者を選任したらすみやか(原則3カ月以内)に行いましょう。

衛生管理者がいない場合は、衛生管理者の資格保有者を採用するか、従業員の中から担当者を決めて資格を取得してもらいましょう。衛生管理者がいない状態が続くと、労働基準監督署から指摘を受ける可能性があります。

選任届は、以下のテンプレートに必要事項を記入すれば簡単に作成が可能です。

<テンプレートのダウンロードはこちら

また、厚生労働省のホームページより書式をダウンロードできます。こちらの書式は産業医だけでなく、衛生管理者の選任届としても併用できます。ぜひご活用ください。

参考:厚生労働省総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告

各種規定の作成

労働者50名以上の事業所では、「衛生委員会規定」「衛生管理規定」「健康情報取扱規定」の3つの規定を作成・保存する必要があります。衛生委員会を設立したあとは、これらの規定をすみやかに(原則3カ月以内)作成しましょう。

「衛生委員会規程」「衛生管理規程」に記載する情報に決まりはありませんが、一般的に以下のような内容を記載します。

「衛生委員会規程」に記載する内容

衛生委員会規程とは、衛生委員会に関するルールを定めた規定のことです。衛生委員会規程には、次のような内容を記載しましょう。

    • 目的、調査審議事項:委員会設置の目的や議論する内容
    • 構成員、任務、任期:構成員と役職ごとの任務、委員の任期
    • 開催、成立:開催頻度や委員会の成立条件
    • 専門委員、専門委員の出席:専門委員会の開催
    • 事務局:事務局の役割や具体的な仕事 など

「衛生委員会規程」のテンプレートはこちら

会社の業種や人数規模に応じて、「安全衛生委員会規程」か「衛生委員会規程」かのどちらかを選択してご活用ください。

衛生委員会規定

「衛生管理規程」に記載する内容

衛生管理規程とは、事業者が労働者の健康と安全を確保するために作成しておく規定のことです。衛生管理規程には、次のような内容を記載しましょう。

    • 目的、規則の遵守:就業規則に基づいた規程であることを明示
    • 管理者の専任:人数規模に応じた各役職者の選任
    • 衛生管理者の職務:職場巡視(法定要件)について明示
    • 産業医の職務:職場巡視(法定要件)について明示
    • 衛生委員会:運営に関しては「委員会規程による」と記載
    • 健康診断と事後措置:各種健診の実施と事後措置(面談含む)、守秘義務
    • 長時間労働者面談:長時間労働者に対する面談
    • ストレスチェック:実施や高ストレス者に対する対応 など

「衛生委員会規程」のテンプレートはこちら

会社の業種や人数規模に応じて、「安全衛生管理規程」か「衛生管理規程」かのどちらかを選択してご活用ください。

衛生管理規定

「健康情報取扱規定」に記載する内容

健康情報取扱規定とは、従業員の健康情報をどのように取り扱うのかについて定めた規定のことです。健康情報取扱規定には、次のような内容を記載しましょう。

    • 健康情報取り扱いの目的
    • 健康情報の取り扱い方法
    • 健康情報を取り扱う担当者
    • 健康情報を取り扱う範囲 など

健康情報取扱規定は労働者の個人情報に直結するルールであるため、労使間で協議のうえ策定し、しっかりと周知することが大切です。従業員が安心して自分の健康状況を企業へ提供できるよう、配慮しながら作成してください。

年間計画の作成

労働者50名以上の事業所では、毎年1回、安全衛生に関する年間計画を作成・保存する必要があります。年間計画には、基本方針や目標、健康対策の概要、スケジュールなどを記載しておきましょう。

労働基準監督署などから年間計画の提出を求められることは原則ありませんが、適切な委員会運用のためにしっかりと作成しておくことを推奨します。

年間計画」のテンプレートはこちら

安全衛生年間計画

衛生委員会の構成メンバーと人数

衛生委員会を設置する際は、委員会を構成するメンバーを選任しなければいけません。

メンバー選任の際は、いくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは、衛生委員会の構成メンバーとそれぞれの役割を詳しく解説します。

衛生委員会の構成メンバー一覧

衛生委員会の構成メンバーは、以下の通りです。

    • 1.総括安全衛生管理者又はそれ以外の者で、当該事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者(議長=委員長):1名
    • 2.安全管理者及び衛生管理者:1名以上
    • 3.産業医:1名以上
    • 4.労働者のうち、安全・衛生に関し経験を有するもの
    • 5.労働者のうち、(労働者の過半数で組織される)労働組合を代表する者、もしくは労働者の過半数を代表する者、もしくはそれらに推薦された者

なお、1〜4については参加が必須です。

1以外の委員の半数以上は、次の者からの推薦で指名しなければいけません。

    • 従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合
    • 従業員の過半数で組織する労働組合がないときは、従業員の過半数を代表する者

最少構成人数は明確に定められていませんが、図のような7人体制が理想的です。5人体制、3人体制(衛生管理者を労働者側かつ4を満たすとする)も可能ですが、公平な運営のためにも、可能な限り7人以上の構成を心がけましょう。

衛生委員会メンバーの役割と資格

ここからは、衛生委員会を構成するメンバーの役割と必要な資格を紹介します。

衛生管理者

50人以上の従業員が働く企業では、従業員の健康管理に関する代表者である「衛生管理者」を決定し、労働基準監督署に選任報告をしなければいけません。衛生管理者は、衛生委員会に参加するほか、週に1回以上の職場巡視を実施することが義務付けられています。

さらに、衛生管理者として選任される者は、資格を保有している必要があります。求められる資格は、事業場の業種に応じて次のとおりです。

    • 衛生工学衛生管理者
    • 第一種衛生管理者
    • 第二種衛生管理者

衛生管理者は産業医や外部専門家とのやりとりを行う窓口ともなるため、職場の実情に詳しい従業員が適しています。そのうえで、専門知識も持った人物を選任することが大切です。

また、衛生管理者は企業の規模に合わせて必要人数が多くなります。選任が必要な人数は次の表で確認しておきましょう。

事業場の労働者数 名称 選任が必要な衛生管理者数
10人〜50 人未満 安全衛生推進者
50~200人 衛生管理者 1人以上
201~500人 衛生管理者 2人以上
501~1000人 衛生管理者 3人以上
1001~2000人 衛生管理者 4人以上
2001人〜3000人 衛生管理者 5人以上
3001人〜 衛生管理者 6人以上

衛生管理者については、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

衛生管理者とは?役割や業務内容・資格取得のメリットをわかりやすく解説

安全管理者

特定の業種では、安全に係る技術的事項を管理する「安全管理者」を選任し、安全委員会を月に1回開かなくてはいけません。安全管理者を選任する必要のある業種と企業規模の関係は、下記の表のとおりです。

【安全管理者を選任する必要のある業種と企業規模】

業種 事業場の規模
(常時使用する労働者数)
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具、建具、じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 50人以上

【安全管理者のうち、少なくとも1人を専任とする必要のある業種と企業規模】

業種 事業場の規模
(常時使用する労働者数)
建設業、有機化学鉱業製品製造業、石油製品製造業 300人
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 500人
紙、パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 1000人
上記以外の業種 2000人

安全管理者になるには研修が必要なうえ、次のような資格要件があります。もし該当者が資格を持っていない場合は、早めに取得するよう促しましょう。

1:厚生労働大臣の定める研修(※) を修了した者で、次のいずれかに該当するもの。

    • 大学、高等専門学校の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
    • 高等学校、中等教育学校(旧制中学)の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
    • その他厚生労働大臣が定める者
    • 理科系統以外の大学を卒業後4年以上産業安全の実務を経験した者
    • 理科系統以外の高等学校等を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者
    • 7年以上産業安全の実務を経験した者 など

2:総括安全衛生管理者

下記の表の条件に当てはまる場合は、「総括安全衛生管理者」を選任し、14日以内に労基署へ選任報告をする必要があります。

総括安全衛生管理者は、安全衛生の方針を決め、危険性または有害性の調査に関することや、安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善に関する業務を統括する者です。

工場長や作業所長など、実質的に責任のある立場や統括管理する権限をもつ人物を選任する必要がありますが、必須の免許や研修はありません。

衛生委員会または安全衛生委員会においては、議長(委員長)を務めます。

3:産業医

産業医は、専門家の立場から労働災害の原因または再発防止についてアドバイスをする専門家です。ときには、健康や安全についての講義(衛生講話)を行い、企業の健康意識や安全意識を高めることもあります。

従業員が常時50人以上の企業では、産業医の選任も義務付けられています。また、衛生委員会には産業医も出席することが原則です。

産業医の出席が難しい場合は、事前にまとめたデータやテーマに関する意見を提出しておくことも、委員会に貢献するための手段となります。議論に直接参加できなくても、専門的な意見があることで残りの出席メンバーの議論も広がり、実りのあるものとなるでしょう。

産業医のほか、産業保健師や衛生コンサルタントにも同じような役割が期待されます。

【産業医の活動内容の周知について】

働き方改革法案(2019年4月1日)で規定された「産業医・産業保健機能の強化」において、従業員に対して「産業医の業務内容の周知」が義務付けられました。

義務付けられた周知内容は以下のとおりです。

    • 事業所における産業医の業務内容
    • 産業医に対する健康相談の申出の方法
    • 産業医による心身の状態に関する情報の取り扱い方法

また、周知する方法としては以下のいずれかが望まれます。

    • 常時各作業場所の見やすい箇所に掲示・備付などを行う
    • 書面を従業員に交付する
    • 磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、各作業場所において常時確認できる機器を設置する(イントラネットの電子掲示板への掲載を含む)

初めて安全衛生に取り組む企業においては、これらの周知内容をイチから作成することは難しいと思われます。以下のDr.健康経営が提供するテンプレートを使用することで、初めての企業でも、負担なく必要な内容を作成することができます。

<Dr.健康経営が提供するテンプレートはこちら

・社内掲示用 産業医の活動内容

4:労働者

衛生委員会に参加する労働者は、衛生に関しての経験を持つことが条件とされています。人数に決まりはありませんが、議決をとる際にスムーズな進行が行えるよう、奇数人数にすることが理想的でしょう。

労働者の代表として委員会に出席する従業員は、職場環境の実情や労働の現状を報告して課題や対策についての意見を提供します。また、委員会での決定事項を他の労働者と共有するための橋渡しも役割のひとつです。

労働者は、決定された改善施策を「実際に職場で機能するもの」にするための重要な役割を担っています。

5:労働安全コンサルタント

衛生委員会のテーマ・議事内容

衛生委員会を開催するときは、話し合いに適したテーマを決めなければいけません。なかには、「そもそも何をテーマにすればいいかわからない」「テーマのネタがなくなってきた」という悩みを抱えている方もいることでしょう。

ここでは、衛生委員会の主なテーマとテーマが見つからないときの対処法を解説します。

衛生委員会の主なテーマ・議事内容

衛生委員会で扱う主なテーマとして、次のようなものが挙げられます。

    • 定期健康診断について

健康診断や二次検査の受診率のデータを報告します。その上で、受診率を向上させるための施策が検討されます。

    • ストレスチェックについて

ストレスチェックの受検率や、高ストレス者割合などのデータを報告します。また、ストレスチェックについて社内規定に取り入れる内容の審議が必要です。年度ごとに、前年度の結果のフィードバックや、社内規定の改善が行われます。

    • 長時間労働について

労働時間の状況や、面談実施状況を報告します。それらに基づき、残業削減のための施策検討や、パソコンシャットダウン時間の検討、ノー残業デーの導入などについて話し合います。

    • 職場環境の改善について

適切な温湿度が保たれているかどうか、禁煙・分煙対策における企業の方針の確認といった、快適な職場作りに関連した議題を話し合います。その他、VDT作業時間(Visual Display Terminals、パソコンといった情報端末を使用する作業時間)や休憩時間の設定について検討します。

    • 季節特有の健康問題について

食中毒、熱中症、花粉症、インフルエンザなど、季節性のトラブルに対する社内ルールの確認をします。

    • メンタルヘルスについて

休職、復職規定や相談支援体制の確認、メンタルヘルス研修実施の検討などを話し合います。

衛生委員会や安全委員会のテーマについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて目を通しておきましょう。

安全衛生委員会のテーマの決め方は?話し合うべき内容や注意点を解説【月別年間プラン例あり】

衛生委員会のネタに困ったときの対処法

長く衛生委員会を開催していると、テーマに困ってしまうこともあるでしょう。そのようなときは、次の方法でテーマを探してみることがおすすめです。

    • 時事ネタをヒントにする
    • 社内で困りごとに関するアンケートを取る
    • 既存のテーマを深掘りしてみる
    • 自分自身が困っていることを取り上げる

また、テーマを考える人は当番制としましょう。同じ人がテーマを考え続けると議題が似通ったものになりやすく、新しい視点での議論が生まれないためです。

メンバー全員でテーマを決められれば、能動的な委員会への参加にもつながります。

衛生委員会の進め方

メンバーや必要書類をそろえて衛生委員会を立ち上げたら、実際に委員会を開催して職場の衛生や安全について調査・審議します。

衛生委員会を開催する際は、あらかじめ参加メンバーに議題テーマを告知しておきましょう。また、委員会に備えてデータを整理したり報告内容をまとめることも必要です。

委員会で行われるのは、主に「定例報告」と「テーマに関する調査審議」の2つです。ここからは、衛生委員会の具体的な進め方を解説します。

挨拶や告知

まずは、議長である統括安全衛生管理者の挨拶とイベントの告知を行います。健康診断やストレスチェックなどのイベントを控えている場合は、ここでしっかりと内容を再確認しておきましょう。

議長が挨拶することで緊張感が生まれ、より議論に集中できるようになります。

前回の振り返り・審議

次に、前回の振り返りと決定事項の進捗を報告しましょう。改善案などが上がっている場合は、全員で評価してPDCAサイクルを回します。万が一、進捗や結果に問題点が見つかったときは、再度審議して計画の見直しを行ってください。

とはいえ衛生委員会のテーマは、必ずしも1度の審議で解決策が出るものばかりではありません。場合によっては、同じテーマを数回持ち越すこともあります。

定例報告

定例報告では、職場や従業員の現状について報告します。具体的に、次の内容について報告しましょう。

    • 労働時間に関する報告(長時間労働該当人数や面談実施状況について)
    • 労働災害報告
    • 職場環境についての報告

たとえ労働災害や問題が発生しなくても、衛生委員会でしっかりと報告することを推奨します。事故や問題なく安全に労働できた事実は、メンバーのモチベーションアップにつながるでしょう。

今回のテーマ発表・審議

定められたテーマに沿って、調査結果の報告やそれに基づいた職場環境改善策の話し合います。あらかじめ定めたテーマのほか、急いで審議すべきことがあれば、そのテーマについても話し合いましょう。

この際、必要に応じて産業医から意見を聞くとよいでしょう。また、産業医や衛生管理者からの短い講義が行われることもあります。

次回の議題検討

最後に、次回の議題を検討します。衛生委員会のテーマは年間計画で定めておくことが基本ですが、社内の状況などに応じて緊急で取り上げるべきテーマがでてくるケースもあります。

参加者全員に確認をとり、次回の議題を明確に定めておきましょう。

衛生委員会を設置・運営するときのポイント

衛生委員会と衛生管理者が適切に機能し効果を発揮するためには、いくつかおさえるべき点があります。

ここでは、衛生委員会の具体的なポイントを紹介します。

年間計画に沿って進める

衛生委員会を円滑に機能させるためには、年間計画を立てることが大切です。また、立てた計画は年度ごとに見直してください。

年間計画には、月ごとに発生しやすいトラブルやチェックすべき項目を盛り込んでおくと、より実情に沿った議論ができるでしょう。たとえば、「暑い時期は食中毒や熱中症予防について」「冷え込む時期はインフルエンザや腰痛について」のように、実施月に合った計画を立ててみてください。

年間計画で立てた目標が達成できなかったときは、振り返りを行って原因を洗い出しておきましょう。原因への対策を立てることが、職場環境の改善につながります。

他社の取り組みを参考にする

衛生委員会を初めて設立する企業では、運用や進行に関して戸惑ったり疑問が出たりすることが多々あります。そのようなときは他社の取り組みを参考にすることで、自社の衛生委員会の方向性を定められるでしょう。

厚生労働省のホームページには、安全衛生優良企業の取り組み事例が掲載されています。衛生委員会でわからないことがあるときは、こちらを参考にするとよいでしょう。

他社を参考にしているうちに衛生委員会運営の要領が掴め、次第に円滑に機能させられるようになります。

出典:厚生労働省安全衛生優良企業の取組事例

議事録の作成が義務付けられている

衛生委員会を開催する際は、審議した内容や開催日時、参加メンバーなどを議事録に残しておかなければいけません。さらに労働安全衛生規則 第23条4項では、作成した議事録を3年間保存しておくように定めています。

保存している議事録は、労働基準監督署の立入検査で確認されます。不備を指摘されることがないよう、必ず保存期間を守りましょう。

なお、電子データで議事録を保存しておくことも可能です。どのような方法で保存するにせよ、従業員が参照しやすいように配慮する必要があります。

出典:e-GOV法令検索労働安全衛生規則

衛生委員会の議事録については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてチェックしておきましょう。

衛生委員会を設立したら議事録の作成が義務?作成方法や記入例を紹介

産業医に相談する

衛生委員会の運営に悩んだときは、産業医に相談することもおすすめです。産業医は、衛生管理者の資格を取得していなくても衛生管理者の業務に従事することができます。

また産業医は、労働者の健康管理や作業環境の衛生保持などの高度な専門知識を持っていて実務経験もあるため、適切な助言が期待できます。

衛生委員会の設置や進め方について疑問がある場合も、労働衛生の専門家である産業医に相談することで、スムーズに運用を進められるでしょう。

出典:東京労働局労働基準部「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」の選任と職務のあらまし

50人未満の事業場には衛生委員会が不要?

従業員が50人未満の事業場では、衛生委員会の設置・開催は義務付けられていません。しかし、だからといって職場衛生や安全に関して必要な措置を講じないことは避けるべきです。

業種や事業場の規模にかかわらず、企業には従業員の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」が課されています。この義務を果たさずに従業員が健康を害したり労働災害が発生したりした場合、企業が責任を問われることは理解しておきましょう。

たとえ衛生委員会を設置しない場合であっても、職場懇親会などで安全衛生に関する労働者の意見を聞くなど、安全な職場づくりに努めることが大切です。

まとめ

衛生委員会を適切に機能させられれば、職場の労働環境を快適に保って生産性を上げる効果が期待できます。また、企業の身近な専門家である産業医を配置することで、衛生委員会の円滑な運営の大きなサポートとなるでしょう。

株式会社Dr.健康経営では、メンタルケアに強い産業医による衛生委員会の運用、従業員の健康管理サポートを提供しております。プロ産業医による充実したサポートが受けられるため、初めて従業員数が50人以上になる企業でも安心です。

これから衛生委員会の設置が必要になる企業、衛生委員会でお困りごとがある企業は、ぜひDr.健康経営までお気軽にご相談ください。 

 

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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