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離職防止のために企業ができる対策とは?3つの離職防止ツールも紹介

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更新日:2023.07.20

少子高齢化が進みつつある現代では、人手不足が企業の課題のひとつとなっています。

企業の人手不足を引き起こす原因のひとつが離職です。離職を防止するためには、面談やメンター制度により従業員とコミュニケーションをとる機会を増やすほか、研修の実施も有効です。

本記事では企業が離職防止に努めない場合のリスクや、従業員が離職する主な理由、具体的な離職防止対策を解説します。実績のある離職防止ツールも紹介するのでぜひ参考にしてください。

企業が離職防止対策に取り組む理由と新卒者の離職状況

まずは、企業が離職防止対策に取り組むべき理由や新卒者の離職状況を解説します。

安定した労働力確保のためにも企業は離職防止に努めることが大切です。

企業が離職防止対策に取り組む理由

少子高齢化によって労働人口が低下しています。企業が離職防止対策に取り組む理由は、人材確保を行う必要があるからです。

以前と比較して若い人の転職に対する抵抗感が下がりつつあることから、新卒者がすぐに退職してしまうことも問題とされています。

新卒者の離職率が高い現状では長く働き続ける若い従業員の獲得が難しく、企業にとって安定した労働力確保は難題です。有効な離職防止策を講じることが企業には求められています。

なお、新卒者の離職率についての具体的な数字などの詳細は次項で取り上げます。

【2020年度】新卒者の離職率

厚生労働省の調査によると、2020年度の新規大卒者の3年以内離職率は、31.2%と3割を超える結果になりました。3人に1人は就職後3年以内に離職しているということです。

近年に限った話ではありません。1990年後半以降、大卒者の3割が3年以内に離職するような状況が続いています。

日本では幹部候補を新卒者から採用する企業が多く、採用活動の中でも特に新卒採用には力が入れられることが多いため、新卒者の離職率が高いことは企業にとって損失です。

“出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」”(参照:2022-06-15)

従業員の離職防止対策をしない場合に考えられるリスク

従業員の離職防止対策をしない場合、企業にはコストや現場の負担増加、優秀な人材の流出、イメージ低下といったさまざまなリスクが生じます。

それぞれについて解説します。

人材採用のための費用や時間などのコストがかかる

企業が人材を採用するためには、多額の費用や時間といったコストがかかります。離職者が多ければその分、さらに人材を補填する必要が生じるため企業にとっては大きな負担です。

採用コストは内部コストと外部コストの2つに分けられます。主な内部コストは、採用担当者の人件費、面接にかかった交通や宿泊費、内定者の懇親会や研修の費用などです。自社の従業員から企業に人材を紹介するリファラル採用では、従業員へのインセンティブも発生します。

外部コストには、求人メディアへの企業掲載費、採用管理システム費用、人材採用サービス代、会社案内製作費、会社説明会などの会場費、採用サイト製作費などがあります。外部コストはそれぞれの金額が内部コストよりも高額になりやすい傾向です。

既存従業員の業務負担が増える

従業員が離職すれば、それまで離職者が担当していた業務の引き継ぎが必要です。

既存従業員全体の業務負担は必然的に増加します。業務のしわ寄せに不満を感じた従業員がさらに離職してしまう恐れもあり、離職の連鎖を防ぐためには早急な対処が必要です。

また、従業員1人当たりの負担が増えると生産性が低下しやすくなり、従業員にとってはやりがいを感じにくくなります。離職が生じることによって残った従業員のモチベーションが下がり、負のスパイラルに陥ることもあるでしょう。

それらを防ぐためには最初の離職者を出さないことが大切です。

優秀な人材の流出

離職者が多いことは優秀な人材を失いやすい状況といえます。

仕事ができる従業員は他社でも活躍できることが多く、選択肢が豊富なため、離職へのハードルは低いです。人材の流出はそれまでに培ったノウハウを失うことにもつながります。

企業にとって優秀な人材は次世代のリーダー候補です。リーダーシップや専門性を備えた人材は、企業の組織を支えるコア人材となり得ます。コア人材を離職によって失えば企業の競争力低下につながるでしょう。

離職を防ぐには、能力ある人材が余すことなく実力を発揮でき、活き活きと働ける環境を整えることが大切です。

企業イメージの低下を招く

離職率が高いことは、企業イメージの低下にもつながる可能性があります。

インターネットが発達した現代、企業の離職率や評判などは検索によって分かるようになりました。人材が定着しない企業はブラック企業といったマイナスのイメージと結びつきやすく、業績や採用活動にも影響を及ぼしかねません。

採用活動では学生や求職者からのイメージが重要です。評判が良くない企業にはなかなか人材が集まりません。労働人口が減りつつある中で企業イメージを良好に保つことが大切です。

また、社会からの企業イメージが悪いと、既に自社で働いている従業員のセルフイメージが悪くなります。モチベーションが低下した結果、生産効率が落ちる恐れもあるでしょう。

従業員が離職する主な原因

従業員が離職する主な原因は、会社への不満や労働条件への不満、人間関係の悩みの3つです。

それぞれの原因について解説します。

会社への不安や不満

会社への不安や不満が多いと従業員は離職しやすくなります。離職につながりやすい主な内容はキャリアプランに対する不満、やりがいに関する不満、そして会社の将来性に対する不安などです。

スキルアップが見込めない、出世のチャンスがない、やりたい仕事に関われないなど、仕事にやりがいが感じられないことは、離職の原因となる可能性があります。企業の業績が不安定で停滞し将来性に不安を感じる場合も同様です。

労働条件や待遇面での不満

入社後の成果や勤続年数などによって昇給する場合、モチベーションが持続するかもしれません。しかし、長年働き続けても年収が上がらず、生活が豊かにならない職場環境では離職を考える従業員も少なくありません。

また、長時間労働やサービス残業がある環境や休暇を取得しにくい状態、フレックスタイム制やリモートワークが導入されておらず働きにくさを感じるといった場合でも、離職しやすくなります。

快適に働けない環境では、従業員が健康に不安を感じることも珍しくありません。

人間関係による悩み

人間関係の悩みで離職する人は少なくありません。仕事での人間関係というと上司や部下など社内の人間関係を指すことが多いですが、それ以外に顧客とのトラブルでストレスを抱えるケースもあります。

パワハラやセクハラの増加が社会問題になっていますが、離職の原因は大きな問題だけでなく、些細な人間関係の不和の積み重ねの場合もあります。

従業員の離職防止につながる対策

従業員が離職する主な原因は会社への不満や労働条件への不満、人間関係の悩みの3つです。

それぞれに対応した離職防止策を解説します。

採用時のミスマッチを減らす

採用時のミスマッチを減らすことにより、会社への不安や不満への対策になります。

選考段階から応募者の適性を見極め、それぞれの人材に適した配置を考えることが大切です。将来性に不安を感じないよう企業の展望を分かりやすく公開したり、業績が上がった場合にはボーナスとして還元したりすることも必要です。

また、自社の情報はポジティブな情報だけを公開すれば良いわけではありません。ポジティブな情報だけを強調した場合、入社後にネガティブな面を知り、ギャップを感じるケースがあります。

業務の難しさや厳しさなどのネガティブな情報も公開することにより、応募者に正しい情報を伝えられます。ネガティブな面も理解したうえで入社した社員とは、ミスマッチが起こる可能性は低いでしょう。

スキルアップを支援する

スキルアップの支援も、会社への不安や不満への対策です。

スキルアップが図れない職場の場合、従業員は自分の将来に不安を感じます。研修やワークショップを開催し、スキルアップの機会を提供することにより、従業員は「自分が成長している」「会社が支援してくれている」と感じ、会社に残り続けようと思うはずです。

部門を横断するプロジェクトや、本人よりも少しレベルが高い業務を任せることもスキルアップに有効です。

キャリアプランを提示する

キャリアプランの提示も、会社への不安や不満への対策になります。

会社としてのキャリアパターンを作成すれば、従業員は自分のキャリアをイメージできます。ただし、従業員に適したキャリアパターンがなければ、従業員の不安はなくなりません。

そのためには、従業員との定期的な面談が必要です。1on1ミーティングやメンター制度を導入すれば、従業員の考え方や価値観を理解でき、従業員に適したキャリアを提示できるでしょう。

また、ロールモデルを提示するのも有効です。成果を上げている先輩社員をロールモデルとして提示すれば、より具体的なキャリアをイメージでき、不安解消につながるでしょう。

上司のマネジメントスキル向上に取り組む

上司のマネジメントスキル向上に取り組むことも、会社への不安や不満への対策になります。指導する立場の上司は、自分がこれまで受けてきた指導方法や成功体験に沿って指導する傾向があります。

しかし、その指導方法が誰にでも適した指導方法とは限りません。人によって考え方や価値観が異なります。そのため、適した指導方法も人によって異なります。従業員一人ひとりの考え方や価値観を理解し、寄り添った指導をすることにより、離職防止につながるでしょう。

また、部下に対するハラスメントをはじめとした不適切な言動が理由で、離職に至るケースもあります。これは、上司の知識不足によるケースも少なくありません。

無自覚なハラスメントを防止するためにも、上司となる従業員に対するマネジメント研修やコーチング研修を実施しましょう。

労働条件や評価制度を整備する

労働条件や評価制度を整備することにより、労働条件や待遇面での不満への対策になります。従業員の労働状況をチェックし、従業員が快適で健康的に働き続けられる環境が整っているかどうかを、定期的に見直す必要があります。

評価制度の見直しも大切です。評価基準が明確ではない場合、評価が上司の好みや直前の成果に左右されるケースがあります。その場合、従業員は「頑張っても認められない」と不満を持つ可能性があるでしょう。

客観的で透明性の高い評価制度にすることにより、従業員は「自分が正当に評価されている」と感じ、モチベーションやエンゲージメントの向上につながります。評価基準を明確にし、評価の根拠を可視化できるような人事評価システムを導入すれば、客観的で透明性の高い評価になります。

適切な評価をしたうえで、給与アップや表彰をすれば、さらに従業員からの信頼度が高まるでしょう。

コミュニケーションをとる仕組みを整備する

コミュニケーションをとる仕組みを整備することにより、人間関係による悩みへの対策になります。人間関係の悩みによる離職を防ぐには、従業員同士が打ち解けられる環境作りや、問題が生じている場合に早期対応できる体制作りが大切です。

人事異動や配置転換によって離職を防げる場合もあります。また、気軽に打ち明けられる相談窓口を設置することにより、従業員が問題をひとりで抱え込まず、周囲に助けを求めやすくなるでしょう。

前述した1on1ミーティングやメンター制度のほか、社内SNSの導入や、お互いに感謝や賞賛を伝え合うことを制度化するといった施策も有効です。

従業員の健康やメンタルヘルス管理をする

従業員の健康やメンタルヘルス管理をすることも、人間関係による悩みへの対策になります。社内の人間関係や顧客とのトラブルなど、人間関係の悩みの原因はさまざまなものがあります。

若手社員の場合、経験の少なさにより仕事の不安や不満を抱え込むケースもあるでしょう。近年ではリモートワークが浸透し、気軽に相談できる人が近くにいない状況も増えてきました。

前述したような1on1ミーティングやメンター制度、社内SNSの導入によりコミュニケーションをとる機会を増やすほか、ストレスチェック制度の導入も有効です。2015年からは、労働者が50名以上の事業所では、ストレスチェックが義務化されています。

労働者が50名未満の事業所でも、従業員の健康やメンタルヘルス管理に不安を感じているのであれば、ストレスチェックを導入すると良いでしょう。

従業員の離職防止には離職防止ツールの利用も有効

現在では離職防止に役立つ専用のツールが開発されています。

離職を減らすためには、離職防止ツールを活用するのも一つの方法です。ここでは3つの離職防止ツールを紹介します。

Visual

『Visual』は従業員のエンゲージメントを可視化することで離職を防ぐツールです。エンゲージメントとは、従業員が仕事や企業に対してどのくらい自発的な貢献意欲を持っているのかを示す指標です。

エンゲージメントが高い従業員ほど仕事に対するモチベーションが高く、離職する確率が低いといえます。反対にエンゲージメントが低い場合、仕事にやりがいを感じられておらず離職の確率も高い状態といえるでしょう。

Visualは個々の従業員のエンゲージメントを数値やグラフとして可視化し、離職の可能性が高い従業員がいればアラートで知らせてくれるツールです。Visualの利用によって従業員の離職をあらかじめ察知できるため、事前の手立てをとりやすくなるでしょう。

また、離職を防止するためのアクションを状況に応じて提案してくれるため、適切な措置をとりやすくなります。

ミツカリ

『ミツカリ』は適性検査を活用し、採用配属のミスマッチをなくすことで離職を防ぐツールです。

早期離職の大きな原因は社風や人間関係とのミスマッチとされています。ミツカリでは待遇改善などを行っても、ミスマッチを解消しない限り解決には至らないという考えを重視しています。そのため、応募者と社風との相性診断を重視していることが特徴です。

ミツカリの活用によるメリットは自社の社風が可視化されることです。社風にあった人物像、会社や部署との相性が事前に分かるため、効率的な採用活動や配属決定ができます。

ミスマッチを回避することで内定辞退者の減少につながり、採用活動の負担も減らせるでしょう。適切な人材採用や人事配属は離職希望者を減らし、従業員の定着の実現が期待できます。

“出典:ミツカリ公式サイト”(参照:2022-06-15)

いっと

『いっと』は在職者や退職者の本音を集めることで離職理由を分析し、離職防止に役立てるツールです。従業員が人事や上司には言えない本音をインタビューによって引き出し、課題の本質を捉えることを可能にします。

いっとが行うのは定量分析による数から得た傾向や統計の視点からの現状把握、そして定性分析による数値化できない感情や理由からの原因把握です。これら2つの分析を組み合わせて相互補完することで本質的な離職理由が可視化されます。

いっとを利用すれば抜本的な離職対策による離職率の改善が期待できます。離職を検討している従業員に対しても未然の離職防止が可能です。そして、実行した離職防止対策の効果検証ができるため対策のブラッシュアップも見込めるでしょう。

“出典:いっと公式サイト

まとめ

従業員の離職は、生産性が下がるだけではなく、コストの負担も増加するため、企業にとって避けるべき問題のひとつです。

従業員が離職する主な原因は、会社や待遇面での不満や人間関係の悩みです。従業員は不安や不満からストレスを抱えて離職を決断しやすくなります。離職を防止するためには、従業員のメンタルヘルスケアを充実させることや専用のツールの活用がおすすめです。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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