産業保健・健康管理

衛生管理者試験を徹底解説!試験内容、難易度、合格率は?【過去問あり】

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更新日:2023.09.29

労働現場の衛生管理を任される衛生管理者。
衛生管理者の資格を取得するためには、衛生管理者試験に合格する必要があります。

この記事では試験の難易度、試験内容や合格率について解説します。
衛生管理者試験の過去問も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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衛生管理者試験の基礎知識

衛生管理者試験を受けることになったら、まずは試験の基本的な情報を把握しておきましょう。ここでは、受験資格と日程、会場について解説します。

衛生管理者試験の受験資格

衛生管理者試験は、誰でも受けられる試験ではありません。安全労働衛生技術試験協会の受験資格によると、以下の受験資格のうち1つ以上を満たしている必要があります。

  • ・大学または高等専門学校卒で、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者または専門職大学前期課程を終了した者で、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・省庁大学校卒で、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・専修学校の専門課程の修了者などで、その後大学等で学士の学位を授与されるのに必要な所定の単位を取得し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・指定の専修学校の専門課程(4年以上)を一定日以後に終了し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・高等学校または中等教育学校を卒業後、3年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・10年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・船員法による衛生管理者適任証書を交付され、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・高等学校卒業程度認定試験に合格した者、外国において楽興教育における12年の課程を終了した者で、3年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・専門課程または高度職業訓練のうち能開則別表第6により行われるものを修了し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・応用課程の高度職業訓練のうち能開則別表第7により行われるものを修了し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・普通課程の普通職業訓練のうち能開則別表第2により行われるものを修了し、3年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・旧専修訓練課程の普通職業訓練を修了し、4年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・外国において学校教育における14年以上の課程を修了し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・特別支援学校の高等部を卒業したものなど、12年の学校教育を修了し、3年以上労働衛生の実務に従事した者
  • ・朝鮮学校を140単位以上取得して卒業し、1年以上労働衛生の実務に従事した者

衛生管理者試験の日程・会場

衛生管理者試験は会場によって受験できる日程が異なり、1か月に2〜6日実施されます。試験会場は、以下の7か所です。

  • ・北海道センター:北海道恵庭市黄金北3-13
  • ・東北センター: 宮城県岩沼市里の杜1-1-15
  • ・関東センター:千葉県市原市能満2089
  • ・中部センター:愛知県東海市加木屋町丑寅海戸51-5
  • ・近畿センター:兵庫県加古川市神野町西之山字迎野
  • ・中国四国センター:広島県福山市新涯町2-29-36
  • ・九州センター:福岡県久留米市東合川5-9-3

上記の安全衛生技術センターのほかに、出張特別試験が実施されることもあります。

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衛生管理者試験の内容

衛生管理者試験の試験科目と配点、試験時間は以下のとおりです。

試験の種類 試験科目 配点 試験時間
第一種衛生管理者 労働衛生 17問150点  3時間  
関係法令 17問150点 
労働生理 10問100点 
特例第一種衛生管理者
労働衛生 10問80点  2時間
関係法令 10問80点
第二種衛生管理者
労働衛生 10問100点 3時間
関係法令 10問100点
労働生理 10問100点

“参考:安全衛生技術試験協会「受験資格」”

基本的に、試験科目は「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3科目で、試験時間は3時間です。第一種衛生管理者試験では、とくに「労働衛生」「関係法令」の比重が高くなっています。

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第一種・第二種衛生管理者の違い

衛生管理者試験には第一種と第二種、そして特例第一種衛生管理者があります。ここでは、それぞれの資格の違いを解説します。

第一種衛生管理者

第一種衛生管理者とは、すべての業種において衛生管理者として働ける資格です。第二種衛生管理者で対応できない業種にも対応できるため、業種によっては第一種衛生管理者試験を受ける必要があります。

ただし、業務内容は第一種と第二種でほとんど変わりありません。有害業務まで対応できるのが第一種、対応できないのが第二種と覚えておきましょう。

第二種衛生管理者

第二種衛生管理者は、以下の業種以外で衛生管理者として働ける資格です。そのため、以下の業種に当てはまる場合は、第一種衛生管理者試験を受ける必要があります。

第二種衛生管理者の免許では対応できない業種

  • ・農林畜水産業
  • ・鉱業
  • ・建設業
  • ・製造業(加工業を含む)
  • ・電気業
  • ・ガス業
  • ・水道業
  • ・熱供給業
  • ・運送業
  • ・自動車整備業
  • ・機械修理業
  • ・医療業
  • ・清掃業

特例第一種衛生管理者

特例第一種衛生管理者とは、第二種衛生管理者が、第一種衛生管理者試験を受けて合格したときに取得できる資格です。試験内容は、有害業務に係る労働衛生と関係法令のみになります。

第二種衛生管理者の資格を取得した後、あらためて第一種衛生管理者試験を受ける場合は、この特例での受験となります。

衛生管理者とは?役割や業務内容・資格取得のメリットをわかりやすく解説

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衛生管理者試験の流れ

衛生管理者試験の基礎知識を把握できたら、次は試験の流れを確認しましょう。衛生管理者試験は、以下の流れで進みます。

STEP1.受験申請書を準備

衛生管理者試験の受験が決まったら、まずは受験申請書を準備しましょう。

受験申請書は、安全衛生技術試験協会本部や前述の各センター、免許試験受験申請書取扱機関で無料配布されています。

郵送でも請求でき、必要部数と連絡先を書いたメモ、返信用封筒と返信用切手を同封して本部または各センターに送付します。請求する部数によって郵送料が以下のように異なりますので、まとめて請求する際は注意しましょう。

部数 1部 2部 3〜4部 5〜9部 10部以上
郵送料 210円 250円 330円 580円 問い合わせ

“参考:安全衛生技術試験協会「労働安全衛生法に基づく免許試験」”

STEP2.受験申請書を作成・提出

受験申請書を入手したら、書式に従って書類を作成していきます。

添付書類は、満たしている受験資格によって異なるため注意が必要です。たとえば、卒業証明書や単位取得証明書、事業者証明書などが必要になります。

また、受験申請書には2.4cm×3.0cmの証明写真、試験手数料も準備しましょう。第一種・第二種の試験手数料は、以下のとおりです。

試験の実施日 試験手数料
令和5年5月31日以前 6,800円
令和5年6月1日以降 8,800円

“参考:安全衛生技術試験協会「試験手数料」”

受験申請書の提出方法は、以下の2つの方法があります。

  • 簡易書留による郵送
  • センター窓口への持参

簡易書留による郵送の場合、受験希望日の2か月〜14日前まで(消印有効)に郵送が必要です。センター窓口に持参するときは、試験希望日の2日前までに提出します。

ただし、センター窓口には休業日がある点に注意が必要です。

STEP3.受験票の受け取り

受験申請が完了したら、受験票が届くのを待ちます。なお受験票が発行されると、試験手数料は返還できません。

STEP4.試験を受験

前述した試験内容において、科目ごとあるいは範囲ごとの得点が40%以上で、かつその合計が60%以上で合格となります。

たとえば、第一種衛生管理者試験は有害業務の有無ごとに範囲が別れているため、その単位ごとに40%以上の得点が求められます。

STEP5.試験結果の通知

衛生管理者試験に合格すると、免許試験合格通知書が送られてきます。また、各センターのホームページで、合格者の受験番号が提示されます。

電話やメールでの問い合わせによる合否確認には応じてもらえませんので、合格通知書の送付を待ちましょう。

STEP6.合格後の手続き

無事、免許試験合格通知書を受け取ったら、免許申請書の作成・提出が必要です。免許申請書は都道府県労働局または各労働基準監督署、各センターで入手できます。

作成した免許申請書は、必要書類を添付して東京労働局免許証発行センターへ郵送します。免許申請書の入手先に提出する者ではありません。

衛生管理者試験に合格しても、免許申請しないと資格を利用することはできないので、忘れず申請手続きを行いましょう。

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衛生管理者試験の難易度・合格率

ここまで、衛生管理者試験の内容や手続きについて解説してきました。これから衛生管理者試験を受ける方は、試験の難易度や合格率が気になるのではないでしょうか。

そこで、第一種・第二種衛生管理者試験に分けて、合格率を紹介します。

第一種の合格率

令和3年度の第一種衛生管理者の受験者は6万8,210人、合格者数は2万9,113人、合格率は42.7%です。合格率は約4割のため特別難しい試験ではないものの、半数は不合格になっている点から、しっかりと試験対策しておく必要のある試験と言えるでしょう。

第二種の合格率

令和3年度の第二種衛生管理者の受験者は3万6,057人、合格者数は1万7,922人、合格率は49.7%でした。第一種衛生管理者試験の合格率より高く、難易度は第一種より低いと考えられます。

衛生管理者試験の難易度は?合格率とおよその偏差値を解説

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衛生管理者試験に合格するコツ

前述のとおり、1年間で約7万人が受験する第一種衛生管理者試験の合格率は42.7%と、比較的合格しやすい資格です。しかし、言い換えると半分以上の人が不合格となる試験のため、きちんと対策する必要があるでしょう。

そこで、ここでは衛生管理者試験に合格する3つのコツを紹介します。

独学でもセミナーや講習会を活用

衛生管理者試験は独学でも合格できると考えられていますが、セミナーや講習会を活用することで、より合格する可能性が高まります。というのも、独学では試験のポイントを理解しにくかったり、モチベーションを保ちにくかったりするためです。

セミナーや講習会は1〜2日間で開催されるものが多く、仕事をしながらでも受講しやすくなっています。費用は1万5,000円〜3万円が相場です。

会社から衛生管理者試験を受験するよう言われている場合は、セミナーや講習会の費用を経費にできないか確認してみるのもよいでしょう。

独学に自信がないなら通信講座を選択

衛生管理者の試験対策として、民間の通信講座を受けることもできます。専用のテキストを使いながら、分からない部分は質問できるコースも用意されているため、独学での合格に自信がない場合は通信講座での学習を選択するとよいでしょう。

通信講座のなかには、e-ラーニングやDVDで講義を受けられるものもあります。第一種衛生管理者の通信講座の費用は、おおむね3万円前後です。

毎日コツコツ勉強することが大切

前述のとおり、衛生管理者試験では各科目で40%以上、全体で60%以上の得点が必要です。この基準は決して難しいものではありませんが、試験直前に対策するのでは間に合いません。

また、資格取得後に資格を使った業務を遂行するためには、学んだ知識を実践できるまで定着させる必要があります。

そのためには、毎日30分でもコツコツ勉強することが大切です。

衛生管理者試験に必要な勉強時間は?第一種・第二種別に解説

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第一種衛生管理者試験の過去問

安全衛生技術試験協会では、第一種衛生管理者試験の過去問は公開されていません。しかし、インターネット上では過去問を掲載しているサイトも複数あります。

サイトやテキストを参考に、どのような過去問がよく出題されているのかを分析しながら、勉強すると効率的です。

ここでは、第一種衛生管理者試験の過去問をいくつか紹介します。

労働衛生の過去問例

労働衛生の科目では、法令により定められている労働衛生に関する知識について問われます。

過去問
労働安全衛生規則に基づく次の定期健康診断項目のうち、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる項目に該当しないものはどれか。

  1. 1.自覚症状の有無の検査
  2. 2.腹囲の検査
  3. 3.胸部エックス線検査
  4. 4.心電図検査
  5. 5.血中脂質検査

・正解:1(自覚症状の有無の検査)

関係法令の過去問例

関係法令の科目では、厚生労働省が公表しているガイドラインや指針に関する知識が問われます。

過去問
週所定労働時間が25時間、週所定労働日数が4日である労働者であって、雇入れの日から起算して3年6か月継続勤務したものに対して、その後1年間に新たに与えなければならない年次有給休暇日数として、法令上、正しいものは次のうちどれか。ただし、その労働者はその直前の1年間に全労働日の8割以上出勤したものとする。

  1. 1.8日
  2. 2.10日
  3. 3.12日
  4. 4.14日
  5. 5.16日

・正解:2(10日)

労働生理の過去問例

労働生理の科目では、人間の体に関する知識が問われます。

過去問

ヒトのホルモン、その内分泌器官及びそのはたらきの組み合わせとして、誤っているものは次のうちどれか。

答え ホルモン 内分泌器官 はたらき
1 ガストリン 胃酸分泌刺激
2 アルドステロン 副腎皮質 体液中の塩類バランスの調節
3 パラソルモン 副甲状腺 血中カルシウム量の調節
4 コルチゾール 膵臓 血糖量の増加
5 副腎皮質刺激ホルモン 下垂体 副腎皮質の活性化

・正解:4(コルチゾール、膵臓、血糖量の増加)

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まとめ

労働基準監督署の臨検の種類とタイミング

衛生管理者試験は、主に第一種と第二種に分けられています。第一種衛生管理者は、すべての業種に対応する資格です。

第一種衛生管理者試験の試験科目は労働衛生・関係法令・衛生生理で、労働衛生と関係法令は有害業務に係るものとそれ以外の2つの範囲が設定されています。衛生管理者試験に合格するには、各科目または各範囲で40%以上、全体で60%以上の得点が必要です。

難易度は高くないものの、細かい知識を問われる問題も出されるため、毎日コツコツ勉強しましょう。また、独学が不安な場合は、セミナーや講座を受講するのもおすすめです。

なお、従業員が50人以上の事業所では、衛生管理者の選任のほかにも、産業医の選任ストレスチェックの実施などの義務が生じます。

Dr.健康経営では、産業医の紹介やストレスチェックの提供をしています。
もし選任がまだでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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