メンタルヘルス・ストレスチェック

メンタルヘルスマネジメントの効果や具体事例、検定資格を解説!

日付
更新日:2023.07.27

昨今、メンタルヘルスの重要性がますます意識され、従業員のメンタルヘルスの適切な管理が求められています。

ストレスやうつ病などの精神的な問題は、個人の日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすだけでなく、組織や社会全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、メンタルヘルスマネジメントの重要性と具体的な実践方法、資格についても詳しくご紹介します。

メンタルヘルスマネジメントとは

そもそもメンタルヘルスをマネジメントするとは、一体どういう意味なのでしょうか?

メンタルヘルスの概要や注目されるようになった背景からお伝えします。

メンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは、身体ではなく、心の健康のことを指します。具体的には、日常的に感じる精神的な負担やストレスを減らし、うつ病などの予防や早期治療により、心が健康な状態を保つことを意味しています。

近年、心の不調からくる精神疾患は増加していて、一生のうち5人に1人が心の病気にかかるとも言われています。ストレスが積み重なることで、誰でもかかる可能性があるものなので、社会全体でのサポートが重視されています。

“参考:厚生労働省「メンタルヘルスとは」

メンタルヘルスマネジメントが注目される背景

厚生労働省の調査によると、仕事に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、令和3(2021)年は 53.3%で、長年にわたり依然として半数を上回っています

ストレスを感じている労働者の多さからも、メンタルヘルスマネジメントが重視され、企業でも積極的に導入されています。メンタルヘルスの問題を放置していると、従業員の健康問題の他、企業の業績低下など大きな問題になってきます。

令和2年労働安全衛生調査の結果によると、メンタルヘルス対策を実施している事業所の割合は全体の61.4%で、前年度の平成30年の59.2%を上回っています。

このような背景から、メンタルヘルスマネジメントへの注目が高まっています。

“出典:厚生労働省「令和2年労働安全衛生調査の結果」

メンタルマネジメントとメンタルヘルスマネジメントの違い

メンタルヘルスマネジメントと似た言葉で、「メンタルマネジメント」があります。ここでは、メンタルマネジメントとメンタルヘルスマネジメントの違いについてご説明します。

メンタルマネジメントは、ビジネスマンやアスリートなどが自分のパフォーマンスを最大化するためのものです。例えば、「あがり症の解消」や「目的を達成するためのメンタル作り」など、より高みを目指してメンタルをコントロールすることを指します。

一方、メンタルヘルスマネジメントは、労働者がメンタル不調になることなく、自身の能力を発揮してもらえる職場環境にすることが目的で、経営層や人事総務部門主導で実施するものです。

次の章では人事担当者として知っておきたい、メンタルヘルスマネジメントの知識をご紹介します。

メンタルヘルスマネジメントがもたらす効果

メンタルヘルスマネジメントを社内で実施すると、どんな良いことがあるのでしょうか。

以下でメリット4選をお伝えします。

    • ・従業員の離職・休職を防げる
    • ・優秀な人材が集まる
    • ・個人の仕事の生産性が上がる
    • ・人材育成に活かせる

従業員の離職・休職を防げる

職場に適切なメンタルヘルスサポートがあることで、従業員のストレスや精神的疲労を軽減できます。従業員の職場でのメンタル環境が良くなると、精神疾患にかかる方も減っていきます。

また「この職場で働き続けたい」と感じる従業員が多くなり、離職者や休職者を減らすことができます。

優秀な人材が集まる

メンタルヘルスを重視して、従業員の心の健康をサポートする姿勢を持つ企業は、人材採用の際にも魅力的に映ります

さらに離職率減少などの具体的なデータがあると、従業員が「心身ともに健康に働き続けられそう」と感じやすく、優秀な人材を引き寄せる要因となります。

個人の仕事の生産性が上がる

メンタルヘルスマネジメントによって、従業員のストレスが軽減され、一人一人の心が健康的な状態に保たれます。その結果、従業員のモチベーションや集中力が高まり、仕事の生産性が向上するでしょう。

人材育成に活かせる

メンタルヘルスマネジメントは、従業員の成長をサポートする上でも重要な要素となります。

上司や部下を指導する際、個別の課題に合わせたカウンセリングやトレーニングの情報提供により、上司としては育成能力の向上、部下としてはキャリアパスの構築などに役立てることができます。

メンタルヘルスマネジメントのステップ

メンタルヘルスマネジメントとは、具体的にどのような進め方をするのでしょうか?

ここでは厚生労働省から公表されているステップや、包括的にメンタル不調を予防するための方法などをお伝えします。

段階的な予防策

メンタル不調の予防策は、以下の3つの段階に分類されます。

一次予防

一次予防は、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐための初期段階の対策です。職場環境の改善や健康増進の取り組みを通じて、ストレスや負担を軽減し、従業員の心の健康を促進することを目指します。

二次予防

二次予防は、早期の段階でメンタルヘルスの不調を察知し、適切なサポートやケアを提供する対策です。従業員のストレスや精神的な疲労を早めに発見し、うつ病などの精神疾患の予防や早期治療に取り組みます。

三次予防

三次予防は、既にメンタルヘルスの問題が発生している従業員に対して、より深刻な状態を回避し、回復を促すための対策です。治療やリハビリテーションを含む、個別のサポートやフォローアップが重要な要素となります。

会社としては、3つ全てのステップを網羅したサポートができると良いでしょう。

厚生労働省が公表した「4つのケア」

従業員の状態によって段階的にケアをすることも重要ですが、それぞれの立場から包括的にケアをすることも大切です。

ここでは、厚生労働省が公表している、職場において従業員のメンタルヘルスをサポートするための方法「4つのケア」をご紹介します。

セルフケア

セルフケアとは「従業員が自分のストレスに気づき、心の健康のために自発的に対処すること」を指します。

セルフケア例としては、以下が挙げられます。

    • ・深呼吸をする
    • ・適度な運動(散歩・ストレッチ)をする
    • ・笑う、口角を上げる
    • ・マインドフルネス
    • ・十分な睡眠をとる
    • ・周りに話す、相談する

ラインによるケア

ラインによるケアとは、直属の上司が従業員とコミュニケーションを取り、精神的不調を早めに察知し、必要なサポートを提供することを指します。

事業場内の産業保健スタッフ等によるケア

事業場内に専門の産業保健スタッフやカウンセラーを配置し、従業員のメンタルヘルスケアを実施します。

事業場外資源によるケア

必要な場合には、外部の専門機関やサポート組織を活用し、従業員のメンタルヘルスを支援することもできます。

継続的に4つのケアに取り組むことで、結果的に職場におけるメンタルヘルスマネジメントの効果も高められるでしょう。

メンタルヘルスマネジメントの取り組み具体例

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は、具体的にどんなことを実施しているのでしょうか?5つ紹介します。

ストレスチェック制度を導入する

ストレスチェックとは、従業員のストレス状況についての質問のことで、回答を集計・分析することで職場環境の改善を図る方法です。

2015年労働安全衛生法の改正によって、50人以上いる事業所で実施が義務付けられており、メンタルヘルスマネジメントの具体例としては最も多い取り組みがストレスチェックです。

令和2年の厚生労働省のデータを見ると、「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」が 62.7%と最も多く、次いで「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック後の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が 55.5%となっています。

ストレスチェックについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

従業員支援プログラム(EAP)を活用する

従業員支援プログラム(EAP)とは、Employee Assistance Programを略した用語で、うつ病などの精神疾患がある休職者に対して行う復職支援を指します。

EAPは、厚生労働省が公表した「4つのケア」のうち、4つ目の「事業場外資源によるケア」に位置しており、社外の機関によって実施されます。従業員は自分の悩みを社内の人に知られることなく、専門家に相談ができます。

詳しくは以下の記事を参照してください。

ストレスマネジメント研修を開催する

メンタルヘルスマネジメントの一環として、ストレスマネジメント研修を導入する企業もあります。

効果的なストレス解消法、リラクゼーション法などについての知識を提供することで、従業員は心身の健康を守るためのスキルを身に付けることができます。

産業医と連携して相談窓口を設置する

産業医と連携し、メンタルヘルスに関する相談窓口を設置することもおすすめです。

従業員がストレスや心の不調を抱えている場合に、すぐ専門家の助言やカウンセリングを受けられる環境を整えることで、従業員のメンタルヘルスに効果があるでしょう。

メンタルヘルスマネジメント検定を取得する

人事担当者として、「メンタルヘルス・マネジメント検定」を取得するのも具体的な取り組みの一つです。

組織全体でメンタルヘルスに対する理解を高めるため、従業員に対して上記の検定取得を促す企業もあります。

メンタルヘルス・マネジメント検定について

この章では、メンタルヘルス・マネジメント検定について詳しく解説します。

メンタルヘルスマネジメント検定については、こちらの記事でより詳しく解説しています。

メンタルヘルス・マネジメント検定とは

メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、大阪商工会議所・施行商工会議所が主催する民間の検定試験です。

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づいて設けられたもので、職場での役割に応じたメンタルヘルスケアを学ぶための試験です。

メンタルヘルス・マネジメント検定の種類

メンタルヘルス・マネジメント検定には、Ⅰ種(マスターコース)、Ⅱ種(ラインケアコース)、Ⅲ種(セルフケアコース)の3種類があります。

Ⅰ種(マスターコース)

マネジメント職やリーダーを対象としたコースです。組織全体のメンタルヘルスマネジメントを戦略的に実施し、職場のストレスマネジメントや心のケアの指導・サポートを行う能力を評価します。

Ⅱ種(ラインケアコース)

管理者、現場のリーダーなど、従業員を指導・管理する立場の人を対象としたコースです。従業員のメンタルヘルスに関するサポート、ストレスへの適切な対応などが評価対象となります。

Ⅲ種(セルフケアコース)

一般の従業員を対象としたコースです。自己管理能力を向上させ、心の健康を保持するためのスキルを身に付けることが目的です。セルフケアの重要性やメンタルヘルスに関する基本的な知識が評価されます。

メンタルヘルス・マネジメント検定を取得するメリット

メンタルヘルス・マネジメント検定を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

ここでは個人にフォーカスしたメリットを4つご紹介します。

信頼関係構築に役立つ

メンタルヘルスマネジメントの知識は、家族や友人とのコミュニケーションやサポートにおいても、とても役に立ちます。迅速に信頼関係を構築して、相手の心の健康を大切にできるでしょう。

部下のサポートができる

管理者としてメンタルヘルスマネジメントの知識を持つことで、部下のストレスや心の不調に対して適切なサポートを提供できるようになります。これにより、チーム全体のメンタルヘルスが向上し、生産性が向上することもあるでしょう。

今後のキャリアで活かせる

もし、今後も人事労務で働き続けたい、カウンセラー業務にチャレンジしたいなどの場合は、資格を実務に役立てられる可能性が高いです。また、ストレス社会の現代では、精神疾患が年々増加しているため、需要は高まっていくでしょう。

セルフケアに役立つ

メンタルヘルスマネジメントの知識を持つことで、自己管理やセルフケアに役立つスキルを身に付けることができます。ストレスを軽減し、心の健康を保持するための方法を学ぶことで、より健康的な生活を送ることが可能です。

メンタルヘルス・マネジメント検定の詳細

メンタルヘルス・マネジメント検定の概要

メンタルヘルス・マネジメント検定、受験資格は特になく誰でも受けることができます。

以下はメンタルヘルス・マネジメント検定についての概要を表にまとめました。

コース Ⅰ種(マスターコース) Ⅱ種(ラインケアコース) Ⅲ種(セルフケアコース)
対象 人事労務管理スタッフ、経営幹部 管理監督者(管理職) 一般社員
目的 社内のメンタルヘルス対策の推進 部門内、上司としての部下のメンタルヘルス対策の推進 組織における従業員自らのメンタルヘルス対策の推進
所要時間等 選択問題:2時間
論述問題:1時間
選択問題:2時間 選択問題:2時間
費用(税込) 11,550円 7,480円 5,280円
配点 ①選択問題 100点
②論述問題 50点
100点 100点
合格ライン ①②の得点の合計が105点以上。
但し、論述問題の得点が25点以上。
70点以上 70点以上
難易度 合格率15〜20% 合格率40〜60% 合格率75〜85%
実施月 11月 3月と11月 3月と11月

ちなみに、Ⅰ種と Ⅱ種、Ⅱ種とⅢ種を同日に受験することも可能です。

また、Ⅱ種とⅢ種は比較的合格率が高いため、独学での合格も十分可能です。

メンタルヘルス・マネジメント検定の日程

2023年度のメンタルヘルス・マネジメント検定の日程は以下の通りです。

第35回 第36回
試験日 2023年11月5日(日) 2024年3月17日(日)
実施コース Ⅰ種(マスターコース)
Ⅱ種(ラインケアコース)
Ⅲ種(セルフケアコース)
Ⅱ種(ラインケアコース)
Ⅲ種(セルフケアコース)
申し込み期間 2023年9月頃 2024年1月頃
受験地 札幌、仙台、さいたま、千葉、東京、横浜、新潟、浜松、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、高松、福岡

詳しくは、公式サイトで申し込み期間などの詳細を確認できます。

まとめ

メンタルヘルスマネジメントは、従業員の幸福と成長だけでなく、会社・組織全体の発展にも密接に結びついた重要な要素です。

人事担当者として、適切な知識を身につけて、従業員の心身の健康に気遣い、より充実した職場環境の構築を進めていきましょう。

メンタルヘルスマネジメントを実施して従業員の健康維持・促進を目指す際は、産業医のサポートが欠かせません。ぜひ、メンタルヘルスマネジメントの専門知識をもつ産業医と連携して、健康でいきいきと働ける職場づくりを目指してみてください。

産業医への相談をご検討の企業は、ぜひDr.健康経営までご相談ください。メンタルヘルスに強いプロの産業医が、一社一社にあったサポートを提供いたします。

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些細なことでもぜひお気軽にご相談ください。

鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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